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ー 私は、映画は何でも観るが、今作の様な作品を観ると矢張り一番好きな映画のジャンルは、心に沁みるヒューマン・ドラマかなと思う。
映画館の闇の中や、夜の自室で密かに涙を流す事は、会社で仕事をする中で抱える問題を一時ではあれ、忘れさせてくれるし、何よりも心が清浄になる気がするからである。ー
■父はおらず、酒浸りの母と暮らす、問題行動ばかり起こしていたスコットは、母が交通事故死し独りになった時に、彼の声の美しさを知っていた学校のスティール先生が裕福な実の父親ジェラルド(ジョシュ・ルーカス)を説得し、デブラ・ウィンガー名門少年合唱団に入学する。
そこでベテラン教師・カーヴェル(ダスティン・ホフマン)の厳しい指導を受け、やがて歌うことに魅了されていく。
そんな中、スコットに学校創設以来の大舞台のコンサートでソロを歌うチャンスが巡ってくる。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・スコットは、デブラ・ウィンガー名門少年合唱団でも、窓を割ったり、同室の少年の大切なモノを壊したりするが、それは彼の事を色眼鏡で見る一部の教師への反発かな、と思いながら鑑賞する。
・ダスティン・ホフマン演じるカーヴェルが、且つてピアノで身を立てようと学んでいた時に、教授から”才能が無い”と言われ、その教授を一発殴ってから退学したという話を聞くと、スコットとカーヴェルは、似た者同士ではないかなと思う。
そして、カーヴェルはスコットに人間として幸せな道を歩んで欲しいと思ったのではないかな、とも思う。
・デブラ・ウィンガー名門少年合唱団のソリスト、デヴォン君がナカナカ嫌な奴で、自分が風邪を引いてソリストの座をスコットに譲った時に彼の楽譜を隠したり、スコットの母親が逮捕された時の写真を学校の個人ファイルから盗み、コピーして食堂に貼る所などは、”歌は上手くても、心は汚れている”事を示している。
怒ったスコットがデヴォン君を殴りつけた事で(そりゃ、そーだ。)学校側は彼を退学させようとするが、カーヴェルはスコットとデヴォン君の二人の退学及び自分も責任を取って辞めると言い、学校側の意見を翻意させるのである。
・スコットは学校創設以来の大舞台のコンサートで、デヴォン君の一歩前に出て見事なるソロを披露し、カーヴェルが送っていた招待状により娘達にせがまれ”嫌々”来ていた実の父親ジェラルドは、妻サリーに”話したい事が有る”と言うのである。
<スコットに、変声期が来て(ご存じの通り、ボーイ・ソプラノは7歳から18歳位迄の男子にしか出せない声である。故に、天使の歌声と言われる。)彼は、学校側のアルトで残らないか、と言う申し出を断り、他の学校の寄宿舎に行こうとする。
そこに、現れた実の父親ジェラルドと、にこやかに微笑む優し気な妻サリー。そして、二人は”一緒に暮らさないか。”とスコットに告げるのである。
今作は、自らの出自から予想される未来を、天から与えられた”天使の歌声”により新たに切り拓いた少年の物語なのである。>