ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのレビュー・感想・評価
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お金を払ってカウンセラーをやらされた気分
とても重要なテーマを取り上げていて、優等生の映画だと思いました。
ただ、全体的に主人公の悩みや憤りが、一方的に観客にぶつけられているようで、
どうしたもんかと、複雑な気分になりました。
その割りに見終わった後の感動は、それほど大きくなかったように感じます。
311を経験してしまうと、やはり物語でしかないなぁ、と感じました。
いつの間にか、涙が一筋。
事前情報なしで見たので、こんな話だったのか~、私はやっぱりアクション物が好きだな~と言うのが、正直な感想。
10歳と言えば、小学4年生くらい。
小学低学年でもないけれど、高学年でもない、中途半端な年頃。
9.11で亡くした大好きなパパとの絆を再確認したいオスカーは、鍵を見つけ、鍵穴探しを始める。
オスカーが求めていた物は、自分の心を開ける鍵。
彼があの時した行動は、そうせざるを得なかったことなんでしょう。
いつまでも引きずってしまうよね。
わかる。わかる。
沢山のブラックさんとの交流や、しゃべれない老人との関わり。
なぜか、母には辛くあたるオスカー。
その謎も、最後には解明。
時間を得て、やっと言えることもある。
でも、オスカーは、確実に父と母から愛されて育っている。
母だって辛かったはず。
でも、それを乗り越えられたのは、やはり、オスカーがいたから。
そう思うと、いつの間にやら涙が一筋でていた。
途中、少し中だるみ有りと感じた。
独りじゃなかった
少年オスカーのトーマス・ホーンが素晴らしい。長台詞もこなし、この作品の実質的な主演にあたる。これはエンドロールで、トム・ハンクスとサンドラ・ブロックが一緒なのに対し、直後にトーマス・ホーンの名が単独で出ることからも分かる。
オスカーは、父の死に於いて大きな十字架を背負っている。
母親はもちろん、誰にも話したことのない重い十字架だ。
母親をはじめ、周りの大人達は、オスカーの心が不安定なのは、父親のことを忘れられず、父親の死を受け入れられないからだと思っている。
もちろん、そうなのだが、根はもっと深いところにある。
オスカーにとって、偶然見つけた鍵は、父親の遺品であり、父親との絆を繋ぎ止めてくれるたったひとつの拠りどころだ。
何がなんでも、鍵の秘密を解き明かしたい、そのエネルギーは十字架の重さにもがき苦しむ反動によるものだ。
だが、オスカーは独りではなかったのだ。いつだって母親が見守っていた。オスカーが気がつかなかっただけだ。
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い存在。
母親とはそういうものかも知れない。
そしてまた、オスカーも母を辛さから守り通したのだ。
だからこそオスカーが歩きまわった軌跡を、母親と共有できたシーンには、喉に塊ができてなかなか落ちない。
「何かが分からないよりは何かが判っただけでもよかった」。オスカーの負の心が解き放たれ、思考が前向きになった証しだ。
前向きな人の前にはサプライズも待っているものだ。
そして、祖母と間借り人が楽しい。
素晴らしい作品
ほんと素晴らしい映画でした。詳しく書くと観ようって思ってる人の感動を薄めると思うので控えます。ただヒルズの大映画館の満員の観衆からは多くのすすり泣く音が。
人はかけがえのない人を突然に失った時、現実にどう向き合って受け止め乗り越え、またその人の死から学び成長していくんだろうとの一つのメッセージが込められた作品。
アメリカ全土いや、世界を悲しみのどん底に追いやった10年前の9.11、たくさんのアメリカ人がもがいて苦しみながら2本足でしっかり歩みだせる力を模索してきた。
東北、いや東日本の人たちなら誰もに多かれ少なかれの大きな心の傷を残した3.11から間もなく1年、偶然にも今立ち上がりつつある日本人への強いメッセージを含み、この時期に公開を迎えたこの作品、日本へのメッセージも込めて是非とも2月26日最優秀作品賞を期待したい。お子さんがいる方々は必見です。
映画だからこそ、より自由に、もっと豊かに
あの ダルドリー監督ということで、期待して観に行きました。
海外ベストセラー原作の佳作に出会うと、映像による「翻訳」は、言語による「翻訳」以上に、オリジナルをより自由に・豊かに描きうるのだなあと感じます。例えば、同監督の「愛を読むひと」がそうでした。原作未読ですが「めぐり会う時間たち」も、時空を融通無碍に越え、豊かな物語を紡いでいたと思います。
本作は原作(の訳書)を読んでから臨みました。三層の物語が絡み合い、読むのは少々大変でした。個人的には(認識不足もあって)911よりドレスデンのパートが印象的深かったです。「ドレスデン運命の日」を観返したくなりました。
さて、映画。こちらは911にあくまで焦点を置き、語るべき物語をくっきりと打ち出していたと思います。その分、祖父の物語であるドレスデンともう一つの物語は、背景としてぐっと後退していました。やや盛り込みすぎの感がある原作から枝葉を適度に刈り取る等「自由な翻訳」が成功しています。けれども、同監督ならば、映画による「豊かな翻訳」も本作以上に十分可能だったかと思われ、少々惜しまれます。マックス・フォン・シドーが素晴らしいだけに、もっと観たかったという気持ちがひとしおでした。
それから。幕切れの「up」を「引く」と訳した字幕は、どうにも違和感があります。「up」以外の何ものでもなく、むしろ和訳は不要かと。物語の肝ですから。
ちなみに、予告でガンガン流れていたU2は登場しません。というか、U2の余地がない、まったく似合わない映画でした。(私はU2好きです。本作については、です。)U2を期待した人も少なくないと思いますし、予告は本編と乖離していたのでは、という思いが残りました。
アメリカ合衆国の回復
9.11が米国民に与えた影響をより生々しく描いた作品。そしてこの事件を機に様々なものを失い、下を向きつづける人々の背中をポンと押してくれる。元々小説だったものを映画化しても平気であるくらいに精神的に回復したアメリカ合衆国を思うととても喜ばしい。やはり、ビルが人を波の如く飲み込み倒壊する様は何度見ても心が痛い。この映画は絶望の淵に立たされた国民が、平穏で普段の暮らしに戻れるまでの軌跡を、少年オスカーの生き様に投影して描いたものである。忘れてしまいたい現実を真っ正面から受け止めた時に人々の心に訪れる恐怖や悲しさ、苦しみ。心に抑圧された、もやもやした感情をオスカー少年は具象化し、見る人の心に宿す。悲しくも安堵の感を抱かせるドラマにたまげた。
“最悪の日”に、さよならを
この映画のタイトルが意味するもの。
それは、主人公・オスカーの五感に飛び込んでくる映像や音ではないかと思いました。
感性がとても特殊なオスカーには、様々な物事が何でもストレートに吸収されていく。それが、不器用だけど豊かな発想があるという個性を築いています。
でも、その個性によって“最悪の日”から、彼自身は内なる攻撃を受けます。
2001.9.11 朝━━
それ以降、雑踏や喧騒が目を、耳を、肌を容赦なく突き刺し、情緒を掻き乱す。オスカーはそれらを怖がるようになり、“うるさくて、近い”と感じるようになったのではないでしょうか。
自分のことを誰よりも理解してくれたパパ。怖いものに押し潰されそうになっても、パパは支えてくれた。
でも、そんなパパは“最悪の日”以降、もういない……。
父親の死から心を閉ざしていたオスカーは、父親の部屋で何かの鍵を見つけます。
この鍵穴の向こうに、パパからの最後のメッセージがある…!
そう信じて、手掛かりであろう“ブラック”をもとに、NY中のブラックさんを訪ね歩き、交流します。
途中から、祖母宅の間借り人のおじいさんも協力します。一切喋れず、すべて筆談で関わりますが、その表情は言葉以上の力を感じました。
涙が溢れてくるシーンは、いくつかあります。
9.11以降、生ける屍のように放心する母親に、父親の死の悲しみをぶつけ、冷たく当たるオスカー。
鍵穴探しに難航し、堰を切ったような早口で、間借り人に感情をぶちまけるオスカー。
そして、鍵の真実を知った時のオスカーの姿は、とても辛くていたたまれなかったです。
でも、母親はそんな息子を優しく受け止めました。何も知らないようでも実は、オスカーをちゃんと見守っていたと気付いた時は、温かい気持ちになりました。
この映画には、鍵の他にも重要なアイテムがあったと思います。オスカーがお守りのように持っているタンバリンです。
情緒を安定させるための必需品で、大部分で断続的にシャランシャランと鳴り響いていました。
でも、最後には鳴らなくなりました。
きっと、“うるさくて、近い”から克服できたことを示しているのでしょう。
また、その努力の結晶が、こじつけ感アリアリですが、父親が出した謎である、“第6行政区”の答えではないでしょうか。
オスカーが“最悪の日”に手を振って、さよならと言えるまでの、長く不思議な旅でした。
亡くなった魂は死後も生き続づけ、遺族をきっと護り導いていてくれているだろう
映画フリークの私としては、アカデミー賞に関係する映画は一応観て置きたい衝動に突き動かされるが、この映画を観るには相当迷いがあった。あの911事件から僅かに10年しか時が経っていない。私は、被害者遺族でもなければ、アメリカ人でもないが、あの事件の後も幾度もNYを旅して、決して被害者遺族のみならず、あの日、NYにいた人々であの悪夢の影響を受けてなどいない人は恐らくいないと言う事実を知ったから。
事件後、911の恐怖がトラウマとなり、その後の人生を辛い想いの中で現在も生きている人に何人も出会った。その後、アフガニスタンやイラク戦争へとその被害は拡大され、イラク戦争などで亡くなられた人命は数え切れない。その遺族の事を思うと冷静に映画を物語として観ている事が難しいのだ。
あの911には謎が多く、陰謀説なども存在しているが、その総ては‘藪の中’であり真実が明らかにされる日が巡って来るのは、きっと遠い未来の事だろう。
公式発表では、2753名の方が亡くなり、うち日本人は24名と発表されているが、その亡くなられた方々全員に、家族があり、友人・知人がいるのだ。そしてその被害者を知る人達の多くが、今もその苦しみを克服しながら懸命に毎日を乗り越えようと生きている事実があるのだ。
この映画は、特別に911で父を亡くしてしまう息子のドラマでなくても、父と息子のドラマとして存在は出来なかったのだろうか?
しかし、その一方でオスカー少年と変わらぬ想いで暮している現実の遺族も、必ず何処かにいるのだろう事を想う時、決してこの、忌まわしい事件を埋もれさせてはいけない気も同時にする。
そして、この映画の唯一の救いは、亡くなってしまった父親の存在が、そこで終わってしまうのでは無く、遺族の心と暮らしの中で、今も共に存在し、悲しみの原因ではあるけれども、同時にその死が遺族との関わりを絶ってしまう別次元の世界の出来事ではなく、遺族への愛を立派に育んでいて、ついにはオスカーの希望へと昇華している事だ。ラストのブランコを懸命に漕ぎ続けるオスカーが心に焼き付いた。
オスカーを演じたトーマス・ホーン、そして間借り人のお爺さんを演じるマックス・フォンシドーがこの映画の命であったのは確かだ。彼らの素晴らしい感性無くしてはこの作品の成立は無かったと思う。
オスカーが、このお爺さんを、家に呼び入れた時に、オスカーと父トーマスの写真がリビング置かれている、そのアップショットで、私は涙が溢れ出し止まらなかった。
オスカー少年が鍵を探している事を知った母親が、内緒でブラックと言う苗字の家々に先回りしていたと言う話しは、少しばかり出来過ぎているようで、そんな話しにしなくても良かったのにとも考えるのだが、そんな事にナンクセを付けようする自分の小ささに嫌気がさした瞬間でもあった。
何故911のような人災が起きてしまうのか、その原因の特定はとても一口で簡単には語れないだろう。真実が明かされるのも、ずっと先かもしれない。
しかし2度とこのような惨事が、この地上の如何なる地域でも起きない事を願い、911で他界された被害者のご冥福とご遺族の今の日々が安らかである事をお祈りしてレビューを終わる事にしたい。この映画を制作してくれた事に感謝を捧げたい。
間借人に完全しびれました
愛する大事な人を唐突且つ永遠に失う事は何て残酷で痛いんだろう。
トムの演じた父の愛はどこまでも大きく、少年の傍らに“ものすごく”近く、サンドラの母は“ありえないほど”(同じ母として私にはここまでの力はないと感服)深く、強い。
主人公の少年の演技力はもちろん卓越しています!!!!
が、私はこの両親に泣きました。
そして両親をも凌ぐ、素晴らしい存在が“間借人”…心にしみました。もっていかれました。
辛い内容だったけれど観てよかったです。
ニューヨークのブラックさん達(拒否した方も)私からもお礼を言わせて下さい。
子供らしく
時として子供は凄く残酷だ。
大人の事情などまったく関係なく本能のまま生きてる。
でもここで描かれたオスカー少年はそんな一面を見せつつも
利発で物事をしっかりと分析して考えられる。
だからこそ精神不安定な状態に陥ってしまう。
子供に縁遠い自分だからなのか、そんな「大人子供」のオスカーの言動や行動
に少しも共感できぬまま時間が過ぎていった。
世の中にはオスカーのように利発ゆえに同世代の子供たちに巧くとけ込めない
思いをしている子が沢山いるであろうこと
そんな子供達が日々、精神との葛藤をしているであろうこと
そんなことを考えながら鑑賞していたときに、オスカー少年が母親に言い放つ一言。それを受けての母親の言葉。
たまらなくグッときました。
人はさまざまな人とのかかわり合いの中で、人生を生きていく
でも、究極自分自身で乗り越えていかなければ行けないことは山ほどある
最後に小さな希望を見出したオスカー
がんばれ、君により良き人生が舞い降りますように!
もう、タンバリンは鳴らさない。
好きな映画です。とても良かった。
オスカー少年は、自分が人と違う感性の持ち主だと知っている。
それを自覚しつつも、どうにもできない。
父の死に関すること全て、感受性という名のアンテナが際限なく辛い事象をキャッチしてしまう。
故に感情の波に折り合いが付けられない。
向き合えないけど向き合いたい。
再び父に会いたい。
父のメッセージを聞きたい。
やがて迎える旅の終着点は何処へ。
9.11後の世界。
その被害で亡くした父を思い、苦悩する少年と、彼を支える周囲の大人達を描いている本作品ですが、これに限らずとも、身内の死を経験しそれとどう向き合うか、どう乗り越えていくのか、というテーマは非常に難しいものがあると思います。
描き方にしても、余りに重苦しいと観ているのが辛かったり、かと言ってライトなポップ調にしてしまうのも、何だかちょっと違うなあ、と。
でも、この映画はその「あいだ」を上手く汲み取ってくれていると思いました。
所々に軽い笑いの要素を入れ、それが重くなりがちな展開に緩やかな役割を果たしてくれてるというか。
トム・ハンクスのコミカルな動きや、祖母とのトランシーバー交信、物言わぬ老人との交流、出会う大人や子供達の個性的な性格なんかで、かなり救われるというか。
ただ、オープニングの表現は結構ヘビーだと個人的には感じました。
このモチーフ使っちゃうのか、と。
人によっては結構不愉快になってしまうんじゃないかな、という。
劇中でもこのモチーフは度々挿入されるんですけど、本国ではどういう受け取られ方されたんでしょうか。
それ以前に『9.11』を描く、という時点で拒否反応示す人も居るでしょうし。
いやまでも、このモチーフがラストに繋がる布石でもあるので、そこ含めて自分はとても好きなんですけどね。
オスカー少年の心の叫びを129分間、ずっと浴びせ続けられるこの映画。
率直に言って、人を選ぶと思います。
ナイーブなテーマです。
日本も3.11を経験しました。規模にも辛さにも大小など有り得ず、感じるものは人によって様々な訳で。
この映画に嫌悪を抱かれたとしても、それは仕方のないことでしょうし、本当に難しい。
自分は、見当外れかもしれませんが『考えることを止めてはいけない』というメッセージを、自分なりに受け止めました。
絶望、そして希望
阪神淡路大震災から15年が過ぎて「劇場版その街のこども」が上映された。そして2001.9.11から10年が経ちこの映画が作られた。未曽有の悲しみを負った遺族の絶望感、恐怖、不安を映画にするにはこれだけの時間が必要なのかとあらためて感じた。この映画がこの時期に公開されたことは、とても重要ではないか。日本はまだ悲しみから抜け出せないでいる。当然だ。家族を亡くした悲しみは消えないし、失ったものは返らない。解決などないのだ。唯一あるとすれば、自分の力でそれを乗り越えることだと、この映画は教えてくれる。そしてそれを陰で支えてくれる人がいることも…「日本もいつか立ち直り、振り返れる日が必ず来る。だから今はたとえ意味のない扉だとしても、探して開けてみろ、怖いけど勇気を出して橋を渡ろう。先に渡った僕らが言うんだから信じて踏み出してみよう。必ず出来るから」この映画はそう伝えているように思えた。この映画の日本公開に感謝したい。
原作も読みたくなりました
こういう映画って、何と言ったらいいのか。
ほんとうに心に迫る映画……、言葉に詰まってしまいます。
主人公の少年、もちろんとてもよかったです。
トム・ハンクスも、嫌みなく「お父さんお父さん」していて。
サンドラ・ブロックのお母さん、自分も傷つきながらも、
小さな心で悲しみを受けとめようともがく息子を見守る感じが
自然で、よかったです。
それから、少年のおばあさんと、間借り人のおじいさんの存在。
温かくて、でも子供だからといって、少年に優しくするばかりでなく、
少年とちゃんと向き合っていて。
それぞれの登場人物が、それぞれのつらい現実を見つめるシーンは、
涙があふれて仕方ありませんでした。
この映画から、たくさんの宿題をもらった気がします。
原作もこれから読みたいです。
この主人公の少年に、大人として共感が持てるかどうか。
911で父親(トム・ハンクス)を亡くしたオスカー。彼は父親がのこした遺品の中から鍵を見つける。何処の鍵だか、何の鍵だが、わからない。けれど永遠に父親と繋がっていたいオスカーは、その鍵に会う穴を見つけるため、ニューヨーク中を探し廻る。
パニック障害を持つオスカーは、無償の愛を注いでくれた父親を亡くして、光の無い世界に突き落とされた。その突然の死を受け入れられないし、その感情を何処に持っていったらいいか図らない。当然暗闇の世界で恐怖心にも満ちみちている。それで、周囲の大人たちにその抑えきれない感情をぶつけてしまう。母親(サンドラ・ブロック)に汚い言葉で罵り、ベットの下や戸棚の中に自分の世界を作って引きこもり、自傷行為をしてしまう。祖母の部屋に間借りしている老人(マックス・フォン・シドー)には、父親の最後の留守電を無理矢理聴かせる。
母親との口論の場面は非情な緊迫感があり、観ていて非常に辛くなる。なぜなら、母親は現実に直面している。夫を亡くしての悲しみ、喪失感。大人だから必死に耐えている。そして決して子供にはその姿を悟られまいとしている。しかし、のちに彼女は息子の「冒険」を知り、それをサポートすることで自分自身も癒されていく。
また老人は過去の辛い体験に、自ら言葉を失うことでその気持に対して封印をしてしまっている。けれども、彼はオスカーと共に鍵を捜すという「冒険」をしているうちに、次第にオスカーの純粋さに惹かれもしていく。
普通の大人は時として、子供の純粋さを自分たちにはもう持ち得ないことへの嫉妬と共に、その美しさを賞賛する。ただし、ここでのオスカーの気持ちはそれに当たるかどうかは、人それぞれだろう。むしろ、マックス・フォン・シドーの演じた老人やジェフリー・ライトが演じるビジネスマンのような、過去の後悔に悩みつづけている人たちの姿のなかに、心の重荷をずっと抱えながら生きて行くこと対して、思わず頷いてしまう自分がいた。このように、彼を取り囲む人々それぞれが持つ悲しみ、苦しみに共感する観客が多いのではないか。
911の悲劇を、11年かかってやっと、それに巻き込まれた人々の感情を表現するのに十分な作品といえる。ただし精神的に酷な表現描写もあり、当事者でない人間であっても辛くなる場面が多々ある。これの是非は、暫く経ち、この作品を離れてみてからでないと、何とも言えない。
2月18日 TOHOシネマズ六本木ヒルズ
やっぱりトム・ハンクスとサンドラ・ブロック。
9.11により父を失った少年が、父の遺品の謎を追う物語。
物語に9.11が取り入れられていますが、9.11をテーマにした作品ではありません。突然の父の死を、象徴的・衝撃的に描くために9.11が選ばれています。その意味では、交通事故でも、飛行機事故でも良かったのかもしれません。ただ、9.11を取り入れることで、周囲の人間を物語により取り込みやすくなったのは事実。そういう意味では、9.11と言う事に意味はあるのかもしれません。
トム・ハンクスやサンドラ・ブロックと言うアカデミー俳優を従えて主演をはったのは、トーマス・ホーン。オスカーはちょっとクセのある少年ですが、自然に上手く演じています。でもやっぱり、この映画のキモは、トム・ハンクスとサンドラ・ブロックですね。息子オスカーを愛で包む両親の姿を、すごく自然に演じています。特に、トム・ハンクスは、いきなり亡くなってしまう役で、その後は回想シーンで出てくるだけですが、それでも尚且つ、その存在感を示しています。流石です。それと、サンドラ・ブロックも上手い! 『スピード』とか『デンジャラス・ビューティー』や『あなたは私の婿になる』の、ちょっとコミカルなイメージが強いんですが、この作品では一点、息子を愛する母親の姿を上手く演じています。
結局のところ、一人の少年が数々の障害に立ち向かい成長していく姿、そして、その少年が関わった周囲の人々も、少年から受けた影響で幸せになると言う話ということで良いでしょうか。はっきりとした結論とか、そう言うものは無いかもしれませんが、人間の成長、人間の愛というものを見られた様な気がします。
違和感
9.11で父親を亡くした(たぶん)アスペルガーの少年が、
悲しみを乗り越えてゆく。。というのが、おおまかなストーリーです☆=
脚本として、言いたいことはよくわかるのだけれど、
アスペルガーの少年を主人公にしたことで、
逆に暖かさのようなものが薄れてしまった気がします。
アスペルガーを理解していないと、わかりづらいところもある半面、
映画の中のアスペルガーの描写そのものに、疑問がある点もありました。
良かったのは、やっぱりトム・ハンクス演じる父親と、(老人)の心の暖かさです。
いつものことながら、トムの演技は本当に素晴らしかったです!!♪
逆に、サンドラ演じる母親が、実は器用に手をまわしていた。。という愛情の示し方は、
「対等に扱って」という少年の心の叫びを、無にしているようで、好感がもてませんでした。
父親の、「この子が最初に恋する相手は・・」というセリフ、
そのひとことで、映画すべてが救われた気がしました。 ^-^
人に薦めたくなる秀作。
トーマス・ホーン君の繊細な感情表現で達成された
静かな葛藤と,
たしかな成長を伝える心の旅が共感に満ちており,
泣いた,胸を打った,自然とエールを送った。
心地良い語り過ぎない演出の数々と,
辿り着いた優しい答えが大好き。
喪失と再生をテーマにした9.11映画の到達点のように思う。
人と出会って鍵穴を埋めよう。
未来のために。
引き裂かれる
苦しくて、心が引き裂かれます。 事実から目を背けてはいけないけれど、それを受け止めるには 相当の体力がいります。 なので、鑑賞後は 疲労困憊でした。。
9・11テロで 最愛の父を亡くした少年オスカーは、クローゼットで1本の鍵を見つけ、父親が残したメッセージを探すため ニューヨークの街へ飛び出していく。 鍵の先にある奇跡を追って、最愛の者を失った人々の再生と 希望を描き出していく(作品情報より抜粋)。
主人公・オスカーを演じた トーマス・ホーン。 素晴らしい演技でした!! が、トムにもサンドラにも似ていないところが ちょっと浮いてたかも(苦笑)。 アスぺルガー症候群の疑いがある少年の心の揺れ方を、見事に表現していたと思います。 将来がとても楽しみな イケメン君☆
オスカーの父親を演じたトム・ハンクス。 助演に徹して、トーマス君をしっかり盛りたてていました。 ますます太って オッサンになっていましたが、家族を支えていた立派な父というイメージが しっかり残る演技でした。
オスカーの母親を演じた サンドラ・ブロック。 彼女の そつのない演技も好印象。 泣けました。 頑張るママを演じさせたら(今のところ)世界一。
その他、オスカーと出会う“話せないおじさん”を演じた マックス・フォン・シドー(『シャッターアイランド』)、オスカーが鍵を探し訪ねた先で出会う女性に バイオラ・デービス(『ヘルプ 心がつなぐストーリー』)、などなど 助演の皆さんも素晴らしいです。
この作品を通して… 立ち止り、9・11で家族を亡くした人々の痛みに触れ、考え、そしてまた歩き出す勇気を持つことの大切さを 少年の葛藤を胸に刻みながら学ぶ。 ストーリーもキャスティングも、演出もシーンごとのコントラストなども 緻密に計算されてるなと思いました。 ただ、もう悲しすぎて。。。トーマス君の演技が完璧すぎて。。。 良い作品であるのは間違いないですが、「もう一度観たいか」と聞かれたら 正直迷うと思います。。 でも、感想を聞かれたら「ぜひ観てほしい」と お勧めすると思います。
***『最後だとわかっていたなら』(ノーマ・コーネット・マレック作)
あなたが眠りにつくのを見るのが最後だとわかっていたら
わたしはもっとちゃんとカバーをかけて神様にその魂を守ってくださるように祈っただろう
あなたがドアを出て行くのを見るのが最後だとわかっていたら
わたしはあなたを抱きしめてキスをして そしてまたもう一度呼び寄せて抱きしめただろう
あなたが喜びに満ちた声をあげるのを聞くのが最後だとわかっていたら
わたしはその一部始終をビデオにとって毎日繰り返し見ただろう
あなたは言わなくてもわかってくれたかもしれないけれど 最後だとわかっていたら
一言でもいい・・・「あなたを愛してる」とわたしは伝えただろう
たしかにいつも明日はやってくる
でももしそれがわたしの勘違いで今日ですべてが終わるのだとしたら
わたしは今日どんなにあなたを愛しているか伝えたい
そしてわたしたちは忘れないようにしたい
若い人にも年老いた人にも明日は誰にも約束されていないのだということを
愛する人を抱きしめられるのは今日が最後になるかもしれないことを
明日が来るのを待っているなら 今日でもいいはず
もし明日が来ないとしたらあなたは今日を後悔するだろうから
微笑みや抱擁やキスをするためのほんのちょっとの時間をどうして惜しんだのかと
忙しさを理由にその人の最後の願いとなってしまったことをどうしてしてあげられなかったのかと
だから今日あなたの大切な人たちをしっかりと抱きしめよう
そしてその人を愛していることいつでもいつまでも大切な存在だと言うことをそっと伝えよう
「ごめんね」や「許してね」や「ありがとう」や「気にしないで」を伝える時を持とう
そうすればもし明日が来ないとしてもあなたは今日を後悔しないだろうから***
現実は残酷だ
911で父親が亡くなった少年の心の変化と再生。と言えば聞こえがいいが、その傷はあまりに大きい。
留守電に残されたメッセージも変に感動を誘うような内容では決してなく現実的だ。
死を覚悟しているはずなのに、このメッセージを聞く(聞いている)息子の事を考えているんだろうなと。
息子の父親に対する愛情は全編を通し伝わってくるけど、父親の息子に対する愛情はより深い。
作品としては、悲しいながらも、最後は希望がもてるストーリーだけど、現実とファンタジー的要素の落差が大きくてノリきれない部分もある。
現実の出来事を絡めた内容で作品をつくるのってつくづく難しいと感じます。
そういう意味では、今作よりダイアナ妃の事故を効果的に使用したアメリは上手かった。
何かを期待しまうという点でトムハンクスはミスキャストだったと思います。
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