劇場公開日 2012年2月18日

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「もう、タンバリンは鳴らさない。」ものすごくうるさくて、ありえないほど近い ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5もう、タンバリンは鳴らさない。

2012年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

好きな映画です。とても良かった。

オスカー少年は、自分が人と違う感性の持ち主だと知っている。
それを自覚しつつも、どうにもできない。
父の死に関すること全て、感受性という名のアンテナが際限なく辛い事象をキャッチしてしまう。
故に感情の波に折り合いが付けられない。
向き合えないけど向き合いたい。
再び父に会いたい。
父のメッセージを聞きたい。
やがて迎える旅の終着点は何処へ。

9.11後の世界。

その被害で亡くした父を思い、苦悩する少年と、彼を支える周囲の大人達を描いている本作品ですが、これに限らずとも、身内の死を経験しそれとどう向き合うか、どう乗り越えていくのか、というテーマは非常に難しいものがあると思います。
描き方にしても、余りに重苦しいと観ているのが辛かったり、かと言ってライトなポップ調にしてしまうのも、何だかちょっと違うなあ、と。
でも、この映画はその「あいだ」を上手く汲み取ってくれていると思いました。
所々に軽い笑いの要素を入れ、それが重くなりがちな展開に緩やかな役割を果たしてくれてるというか。
トム・ハンクスのコミカルな動きや、祖母とのトランシーバー交信、物言わぬ老人との交流、出会う大人や子供達の個性的な性格なんかで、かなり救われるというか。

ただ、オープニングの表現は結構ヘビーだと個人的には感じました。
このモチーフ使っちゃうのか、と。
人によっては結構不愉快になってしまうんじゃないかな、という。
劇中でもこのモチーフは度々挿入されるんですけど、本国ではどういう受け取られ方されたんでしょうか。
それ以前に『9.11』を描く、という時点で拒否反応示す人も居るでしょうし。
いやまでも、このモチーフがラストに繋がる布石でもあるので、そこ含めて自分はとても好きなんですけどね。

オスカー少年の心の叫びを129分間、ずっと浴びせ続けられるこの映画。
率直に言って、人を選ぶと思います。
ナイーブなテーマです。
日本も3.11を経験しました。規模にも辛さにも大小など有り得ず、感じるものは人によって様々な訳で。
この映画に嫌悪を抱かれたとしても、それは仕方のないことでしょうし、本当に難しい。

自分は、見当外れかもしれませんが『考えることを止めてはいけない』というメッセージを、自分なりに受け止めました。

ロロ・トマシ