風の前奏曲

劇場公開日:

解説

タイで公開されるや、口コミ等で評判を呼び、異例のロングランを記録、2004年のタイの映画賞を総なめにし社会現象となった感動作。主役のソーン師には、タイでは知らぬ人のいない映画・演劇界の重鎮アドゥン・ドゥンヤラット。青年時代のソーンには、、行定勲監督作「春の雪」に抜擢されたアヌチット・サパンポン。

2004年製作/106分/タイ
原題:The Overture
配給:東宝東和
劇場公開日:2005年12月3日

ストーリー

1人の老人がいま、息を引き取ろうとしていた。第2次世界大戦下、国家政策としての近代化至上主義と、それに伴う伝統芸能の“禁止統制”という名の弾圧にも決して屈することのなかった”ラナート”奏者ソーン・シラパバンレーン師(アドゥン・ドゥンヤラット)である。300以上の曲を作り、それらが現代でも名曲として伝えられ、国民的尊敬を集める師の脳裏に、若き日の想い出が去来する…。19世紀末。タイがまだシャム王国と呼ばれていた時代、バンコク近郊のアンパワーでソーン(アヌチット・サパンポン)は生まれた。父は音楽の師匠であり、地元でも名の知られた伝統楽団を率いていた。当時は王族が楽団のパトロンになり、お抱え楽団同士の競演会が盛んに開催され、タイ音楽のルネサンスと言える全盛期を迎えていた。地方都市のアンパワーも例外ではなく、競演会は時に音楽家の殺し合いにまで発展するほど白熱した。そんな中、ソーンは幼少の頃から天賦の才を発揮し、木々の葉や、水の流れや、風の音の中にハーモニーを見出し、華麗な手つきで“ラナート”を叩いてはそのハーモニーを自然に奏で、最高のリズムを生み出した。しかし他の流派の姦計で“ラナート”奏者の兄を殺害された事件以来、師匠である父に“ラナート”を禁じられてしまう。だが彼の音楽への想いが止むことはなく、父の目を盗んでは、夜な夜な森の中で、洞窟で、廃墟となった寺で“ラナート”を叩き続け、地元で一番の”ラナート”の名手へと成長していった。やがて、父の許しも得て、アンパワー郡長付きの楽団に採用され有頂天となったソーンは、競演会でライバルに敗退するという人生最大の屈辱を受けた。彼を完膚なきまでに打ちのめしたのは、伝説の“ラナート”奏者クンイン(ナロンリット・トーサガー)だった。文字どおり“嵐を呼ぶ”凄絶な演奏に「おれには一生かかってもあのような演奏は出来ない」とソーンは打ちひしがれる。その後、バンコクの王族の宮廷楽団へと重用されたソーンは、親王直属の楽団との競演会に挑むことになる。その楽団の“ラナート”奏者こそ、かのクンインだった。持てる才能のすべてを燃え立たせ、かつての無垢な修行時代を思い起こし、ソーンの“風と大地のハーモニー”を取り戻す特訓が始まった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0タイの伝統的木琴楽器ラナート

2019年6月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 こんな楽器は知らなかったけど、ハンモックのように吊った木琴。なんとなくチューニングが狂っているような気もするが、倍音に忠実な純正律なのだろう・・・こうした伝統的な音もいい。
 19世紀末、幼いソーンの兄も有能なラナート奏者だったが、妬みにより殺されて音楽を禁止されるが彼の才能は両親の心をも動かした。

 映画は青年期の修行時代と、1930年代。クンインという強力なライバルの出現によって苦悩するソーン、そして宮廷内での協演まで続く。そして師と呼ばれるに至ったソーンが日本軍に侵略されつつある戦時下。戦争があっても音楽を禁じえない精神的な部分が感動的。

 二つの時代が交互に描かれるという流行の構成だけど、真面目に作ってあるところがいい。だけど幼馴染との交流がいまいち弱い。幼馴染の息子が弟子入りするなんてのはもっと後半のほうが効果的なんだろうな。

 伝統を重んじるテーマではあるが、息子が持ち帰った西洋のピアノ。死に伏すベッドの上で二本指の手ぶりが西洋の音楽も受け入れる寛大さを表してるんだと思う・・・

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kossy
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