ジャンヌ・モロー : ウィキペディア(Wikipedia)

ジャンヌ・モロー(、1928年1月23日 - 2017年7月31日)は、フランスの女優、脚本家、映画監督、歌手。フランスを代表する女優として知られ、映画界への多大な貢献を評価されて、フランス内外から名誉賞等を授与されている。

経歴

パリ生まれ。父はフランス人のレストラン経営者、母はイギリス人(イングランド・ランカシャー州出身)のキャバレー・ダンサーで、母の影響を受けて育つ。パリのフランス国立演劇学校 (コンセルヴァトワール)で演技を学び、1947年に舞台デビュー。劇団コメディ・フランセーズで頭角を現す。映画にも出演し始め、ルイ・マルの『死刑台のエレベーター』やフランソワ・トリュフォーの『突然炎のごとく』など、ヌーヴェルヴァーグの監督達の作品で国際的な名声を得る。

ミケランジェロ・アントニオーニ『夜』、ジョゼフ・ロージー『エヴァの匂い』、オーソン・ウェルズ『審判』、ルイス・ブニュエル『小間使いの日記』など、著名な映画監督と組み、ウェルズはモローを「世界で最も偉大な女優」と評した。

マルグリット・デュラス原作の『雨のしのび逢い』でカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞。同じくデュラス原作の『マドモアゼル』では主演を、『愛人/ラマン』ではナレーションを務めている。『デュラス 愛の最終章』では生前親交があったデュラス本人を演じた。

映画界への多大な貢献を評価され、フランス内外から名誉賞等を授与されている。国内では1995年と2008年にセザール賞の名誉賞、2003年にカンヌ国際映画祭のパルム・ドール名誉賞、国外では1992年にヴェネツィア国際映画祭の栄誉金獅子賞、1997年にヨーロッパ映画賞の生涯貢献賞、2000年にベルリン国際映画祭の金熊名誉賞を贈られた。また2007年には芸術文化勲章のコマンドゥールを受けている。

1949年に俳優のジャン=ルイ・リシャールと結婚し、一男ジェロームをもうけるも後に離婚。1977年に映画監督のウィリアム・フリードキンと再婚したが、1979年に離婚している。

2017年7月31日午前、パリ8区フォーブール・サントノレ通りの自宅アパルトマンで倒れた状態で亡くなっているのを家政婦が発見した。その後、代理人とパリ8区長によって死去が発表された。調査結果によれば老衰。89歳没。同日、エマニュエル・マクロン大統領は声明を出し、「映画を体現した」モローに敬意を表した。同大統領は「映画、舞台界の伝説的女優だったジャンヌ・モローは真の自由と共に人生を疾走したアーティスト(芸術家)であった」と、悼んだ。

エピソードなど

  • 交際する男性の条件を記者から「お金ですか?経歴ですか」問われた際に「そんなものはいらない。すべて私が持っています。殿方はただ美しくあってくれれば、それでいいです」と返答し、モローを敬愛している美輪明宏も著書で、カッコ良い女の名言として紹介した『天声美語』講談社 2000年 。
  • 第一回東京国際映画祭にハリソン・フォードやジェームズ・ステュアート、ソフィー・マルソー中井貴一、中曾根康弘総理(当時)共にゲストして来ており、その模様はタモリ明石家さんまによる司会でテレビ放送された明石家さんまヒストリー2 1982~1985 生きてるだけで丸もうけ (明石家さんまヒストリー 2 1982~1985) 新潮社 (2021/6/28) 。
  • 石ノ森章太郎原作の平成仮面ライダー第一弾であるオダギリジョー主演の仮面ライダークウガの15話で、女優を目指しているメインキャラになってほしい大女優たちの一人として、きたろう演じるカフェのオヤッサンは吉永小百合富司純子マリリン・モンロー共にモローの名が挙がった。

ギャラリー

File:JeanneMoreau-1952-Harcourt. original.webp|アルコート・スタジオにて(1952年) File:Kinema-Junpo-1959-April-early-1.jpg|『恋人たち』(1958年) File:Kinema-Junpo-1964-February-early-4.jpg|『突然炎のごとく』(1962年) File:Kinema-Junpo-1966-April-early-1.jpg|『ビバ!マリア』(1965年) File:Jeanne Moreau Marcello Mastroianni 1991.jpg|第44回カンヌ国際映画祭にて、マルチェロ・マストロヤンニと(1991年) File:Nicole Garcia, Jeanne Moreau, Cyrille Thouvenin et Josée Dayan sur le tournage des "Parents Terribles" (2003).jpg|テレビ映画『ホット・ハウス』の撮影中。ニコール・ガルシア、シリル・トゥブナンらと(2003年) File:Jeanne Moreau et Étienne Daho (2).jpg|エティエンヌ・ダオとのコンサート。サル・プレイエルにて(2008年) File:Movie Juliette Binoche dans les Yeux 17.jpg|ジュリエット・ビノシュ(左)と(2009年)

主な出演作品

公開年邦題原題役名備考
1950 オーケストラPigalle-Saint-Germain-des-Prés
1952 今は真夜中ですシュバイツァー博士Il est minuit, docteur Schweitzer マリー・ウィンター
1953 上級生の寝室Dortoir des grandes ジュリー
巴里の気まぐれ娘Julietta ロジー
1954 現金に手を出すなTouchez pas au grisbi ジョジィ
バルテルミーの大虐殺 La Reine Margot 王妃マルゴ
寝台の秘密 Secrets d'alcôve ジャンヌ
1955 狩込み M'sieur la Caille フェルナンデ
地獄の高速道路 Gas-oil アリス
1957 恐怖の三日間 Trois jours à vivre ジャクリーン
1958 死刑台のエレベーター Ascenseur pour l'échafaud フロランス・カララ 2010年に吉瀬美智子阿部寛で日本映画でリメイクされた
絶体絶命Le dos au mur グロリア
恋人たちLes amants ジャンヌ
1959 危険な関係 Les Liaisons dangereuses ジュリエット・ヴァルモン
1960 五人の札つき娘 5 Branded Women
雨のしのび逢い Moderato cantabile アンヌ・デバレード カンヌ国際映画祭 女優賞 受賞
1961 La Notte リディア
女は女である Une femme est une femme バーの女 クレジットなし
1962 突然炎のごとくJules et Jim カトリーヌ
エヴァの匂いEva エヴァ
1963 天使の入り江 La Baie des Anges ジャッキー
Le procès マリカ
バナナの皮Peau de banane キャシー
鬼火Le feu follet エヴァ
勝利者The Victors フランスの女
1964 小間使の日記Le Journal d'une femme de chambre Céléstine
1964 大列車作戦 The Train クリスティーヌ
マタ・ハリ Mata-Hari マタ・ハリ
黄色いロールス・ロイスThe Yellow Rolls-Royce エロイーズ・フリントン
1965 ビバ!マリア Viva Maria! マリア 英国アカデミー賞 主演女優賞 受賞
オーソン・ウェルズのフォルスタッフCampanadas a medianoche Doll Tearsheet
1966 マドモアゼル Mademoiselle マドモアゼル
1967 愛すべき女・女たち Le Plus vieux métier du monde ミミ
ジブラルタルの追想 The Sailor from Gibraltar アナ
1968 黒衣の花嫁 La Mariée était en noir ジュリー
キャサリン大帝Great Catherine
1970 モンテ・ウォルシュMonte Walsh マルティーヌ
1972 親愛なるルイーズChère Louise ルイーズ
1974 バルスーズ Les Valseuses ジャンヌ
個人生活La Race des 'seigneurs
1976 パリの灯は遠く Monsieur Klein フロランス
ラスト・タイクーン The Last Tycoon ディディ
1979 ジャンヌ・モローの思春期L'adolescente 監督・脚本
1981 スキャンダラス・ラブYour Ticket Is No Longer Valid リリー・マルレーン
1982 ケレル Querelle リジアヌ
La Truite ルー・ランベール 大阪ヨーロッパ映画祭で上映。日本が舞台。山形勲らと共演
1983 リリアン・ギッシュの肖像Lillian Gish ドキュメンタリー監督/出演/製作
1990 ニキータNikita アマンド
厚化粧の女La femme fardée
1991 海を渡るジャンヌLa vieille qui marchait dans la mer レディ・M セザール賞 主演女優賞 受賞
夢の涯てまでもBis ans Ende der Welt エディス 笠智衆竹中直人らと共演
こうのとり、たちずさんで To meteoro vima tou pelargou
1992 心の地図Map of the Human Heart シスター・バンヴィーユ
1993 ノルマンディーの黄昏Screen One: The Clothes in the Wardrobe アンジェリーク テレビシリーズ
1995 百一夜Les Cent et une nuits de Simon Cinéma
1996 女帝キャサリンCatherine the Great テレビ映画
プラトニック・ゲームI Love You, I Love You Not ナナ
1997 奥サマは魔女Un amour de sorcière
1998 エバー・アフターEver After 貴婦人
2000 レ・ミゼラブルLes misérables イノサント修道院長 テレビ・ミニシリーズ
2001 銀幕のメモワール Lisa リザ
デュラス 愛の最終章Cet Amour-là マルグリット・デュラス
2005 ぼくを葬る Le Temps qui reste ローラ
2007 撤退Disengagement フランソワ
2009 ヴィザージュVisage ジャンヌ
2012 クロワッサンで朝食をUne Estonienne à Paris フリーダ

ディスコグラフィー

シングル

  • 1953 : L'amour s'en vient, l'amour s'en va(愛が来たり去る)
  • 1962 : Le tourbillon de la vie(つむじ風)※『突然炎のごとく』挿入歌
  • 1963 : J'ai la mémoire qui flanche(途切れる想い出)
  • 1963 : Embrasse-moi(キスして)
  • 1964 : La vie s'envole(魂は飛んでいく)
  • 1965 : L'horloger(時計師)
  • 1966 : Ah ! Les petites femmes de Paris(ああ、パリの小さい女性)
  • 1967 : Tout morose(真っ暗闇)
  • 1968 : Aimer(好きになる)
  • 1969 : Je monte sur les planches(わたしは舞台に上がる)
  • 1970 : La célébrité, la publicité(名声)
  • 1970 : Quelle histoire(なんてこと)
  • 1971 : Les petits ruisseaux(ちいさな嵐)
  • 1972 : Absences répétées(度重なる不在)
  • 1973 : La ballade de l'humeur vagabonde(放浪者のバラード)
  • 1974 : Le jardin qui bascule(揺らめく庭)
  • 1975 : India Song(インディア・ソング)
  • 1979 : L'adolescente(十代)
  • 1980 : Parlez-moi d'moi(わたしについて教えてください)
  • 1982 : Each man kills the thing he love(人は愛する者を殺す)
  • 1987 : L'amour peut sauver le monde(愛は世界を救う)
  • 1988 : Aimer(好きになる)

アルバム

  • 1963 : Chante 12 chansons de Cyrus Bassiak ※日本盤タイトル『ジャンヌの新しい詩の世界』
  • 1966 : Chante 12 nouvelles chansons de Cyrus Bassiak
  • 1967 : Les Chansons de Clarisse
  • 1969 : Jeanne chante Jeanne ※日本盤タイトル『ジャンヌ・シャント・ジャンヌ』
  • 1981 : Chante Norge
  • 1995 : プーランクサティ作品集(ピアノ:ジャン=マルク・ルイサダ)※モローは『ぞうのババール』の朗読を担当。
  • 2010 : ''Le Condamné à mort ※ジャン・ジュネの詩「死刑囚」に曲をつけたもの。エティエンヌ・ダオとの共演。

日本のテレビ番組出演

  • スター千一夜(フジテレビ) - 1963年12月2日
  • いのちの響(TBS) - 2002年

関連文献

外部リンク

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