寺沢徹 : ウィキペディア（Wikipedia）

寺沢徹（てらさわとおる、、1935年1月4日 - 2025年3月23日）は、日本の陸上競技選手、陸上競技指導者。選手としての専門は長距離走・マラソンで、1963年には当時のマラソン世界最高記録を樹立した。1964年東京オリンピック代表選手。

来歴

出生からマラソン競技開始まで

高校への入学当初はハンドボール部に所属していたが、2年次に健脚を買われて陸上競技部に転じた。富山県立高岡商業高等学校を卒業Profile - 寺澤徹のヘルシーライフ。卒業後は就職し、会社員として働きながら独力で陸上競技を続けた。1957年栃木国体の5000メートル (m)で6位に入賞した。倉敷レイヨンへ転職し、移った。しかし当時の倉敷レイヨン陸上競技部は愛媛県西条市を練習拠点としており、寺沢は常時コーチの指導を受けられる環境ではなかった。

日本および世界最高記録の更新

日本陸上競技連盟からニュージーランドの合宿に派遣され、の指導を受けて多様な練習方法を体験し、以後のトレーニングに反映させる。この合宿中には現地のオークランドマラソンで2位となった。その年の12月に参加した朝日国際マラソンでマラソン初優勝を飾る。このとき日本最高記録を更新（2時間16分18秒4）し、多くの国内主要マラソン大会で優勝する端緒となった。翌1963年1月の愛媛マラソンでは初代優勝となり、同年2月の別府大分毎日マラソンでは、アベベ・ビキラが持っていた当時の世界最高記録を上回る2時間15分15秒8で優勝し、マラソン世界記録を更新した。1936年ベルリンオリンピックで活躍した村社講平がチームのコーチに就任し、指導を受けた。

東京オリンピック出場

1964年東京オリンピックには、円谷幸吉（3位）、君原健二（8位）とともに出場したが、最も持ちタイムがよかったものの15位に終った。序盤にペースを上げすぎたことが響いたとされる。

日本最高記録更新

一時は現役引退を考えるも、その年の11月に参加した朝日国際マラソンで2時間14分48.2秒の日本最高記録で優勝。

1965年6月のポリテクニック・ハリアーズ・マラソン（ウィンザーマラソン）では、2時間12分00秒の世界最高記録で優勝した重松森雄には敗れたもののMarathon Won by Shigematsu in Record Time. 1965、自己ベストとなる2時間13分41秒を記録したA history of the Fukuoka International Marathon Championships. IAAF。

1966年4月19日、ボストンマラソンに出場。1963年、1964年大会の優勝者のベルギーのオーレル・バンデンドリッシュは飛行機に乗り遅れたため不参加となった「ボストンマラソン日本、四位まで独占」『中日新聞』1966年4月20日付夕刊、D版、1面。。同大会で日本選手は1位から4位までを独占した。順位と記録は以下のとおり。君原健二（優勝、2時間17分11秒）、佐々木精一郎（2位、2時間17分24秒）、寺沢（3位、2時間17分46秒）、岡部宏和（4位、2時間18分11秒）。

国民体育大会出場

マラソン競技の傍ら国民体育大会の35kmロードに大阪府代表として参加、1963年山口国体、1964年新潟国体、1965年岐阜国体で3年連続で優勝し、3連覇を果たしている。1965年には金栗記念熊日30キロロードレースで1時間31分52秒のタイムで優勝し、これは30km走での世界最高記録更新となったWorld Best Progressions – Road. arrs.net。

後進の指導

。マラソンの普及広報活動にも携わり、2010年代まで市民ランナー・ゲストランナーとして数多くの大会に参加し続けたゲストランナー - 大阪マラソン2016公式ウェブサイト。

2025年3月23日に慢性心不全のため死去したことが、3月31日に報じられた（満90歳没）。

マラソン成績

先述の通り、アベベ・ビキラの持っていた世界最高記録を更新したものの、実際に同走したレースでは3度ともアベベよりも上位にはなれず、生前の寺沢は「雲の上の存在。でも、ソウル国際マラソンの20キロ付近で、いったん追い付いたんですよ」と述べていた。

年月日	大会名	開催地	順位	記録	参考
1960年4月17日	福井マラソン	JPN福井市	3rd	2:34:24
1961年3月12日	別府大分毎日マラソン	JPN別府市	3rd	2:27:14
1961年6月25日	毎日マラソン	JPN大阪市	8th	2:44:26
1961年12月3日	朝日国際マラソン	JPN福岡市	6th	2:24:32
1962年2月11日	別府大分毎日マラソン	JPN別府市	5th	2:27:05
1962年5月13日	毎日マラソン	JPN大津市	3rd	2:31:54
1962年10月20日	オークランドマラソン	NZLオークランド	2nd	2:19:14
1962年12月2日	朝日国際マラソン	JPN福岡市	1st	2:16:18.4	日本最高記録
1963年1月15日	愛媛マラソン	JPN松山市	1st	2:20:25
1963年2月17日	別府大分毎日マラソン	JPN別府市	1st	2:15:15.8	日本最高記録、世界最高記録
1963年5月12日	毎日マラソン	JPN東京都	5st	2:24:29
1964年2月2日	別府大分毎日マラソン	JPN別府市	1st	2:17:48.6
1964年4月12日	毎日マラソン	JPN東京都	3rd	2:19:43.0
1964年8月23日	タイムスマラソン	JPN札幌市	3rd	2:20:35
1964年10月21日	東京オリンピック	JPN東京都	15th	2:23:09.0
1964年12月6日	朝日国際マラソン	JPN福岡市	1st	2:14:48.2	日本最高記録
1965年2月7日	別府大分毎日マラソン	JPN別府市	1st	2:14:38	日本最高記録
1965年6月12日	ポリテクニック・ハリアーズ・マラソン	UKロンドン	2nd	2:13:41	日本最高記録更新、生涯最高記録
1965年10月10日	朝日国際マラソン	JPN福岡市	12th	2:25:07
1966年1月15日	愛媛マラソン	JPN松山市	--	2:21:15	オープン参加のため順位なし、2位相当
1966年2月13日	別府大分毎日マラソン	JPN別府市	1st	2:14:35
1966年4月19日	ボストンマラソン	USAボストン	3rd	2:17:46
1966年8月23日	タイムスマラソン	JPN札幌市	--	--	途中棄権
1966年10月30日	ソウルマラソン	KORソウル	2nd	2:19:35.0
1966年11月27日	国際マラソン	JPN福岡市	5th	2:15:51.2
1967年2月5日	別府大分毎日マラソン	JPN別府市	6th	2:17:48.2
1967年4月19日	ボストンマラソン	USAボストン	8th	2:21:17
1967年12月3日	国際マラソン	JPN福岡市	11th	2:17:00
1968年12月8日	国際マラソン	JPN福岡市	10th	2:17:23
1969年2月2日	別府大分毎日マラソン	JPN別府市	8th	2:20:39.6
1969年3月23日	信毎マラソン	JPN長野市	1st	2:21:02.2	Ota, Shigenobu (2010-04-19). Nagano Olympic Memorial Marathon . ARRS. Retrieved on 2010-04-30.
1976年3月7日	延岡西日本マラソン	JPN延岡市	2nd	2:26:20.6