小川隆夫 : ウィキペディア(Wikipedia)

小川 隆夫(おがわ たかお、1950年8月7日 - )は、日本の文筆家、音楽ジャーナリスト、音楽プロデューサー、作曲家、ギタリスト、整形外科医。さまざまな音楽分野、特にジャズでの活動で知られ、ブルーノートのコンプリート · コレクターとしても著名。

幼い頃からクラシックギターを習い、中学でバンド結成。その後、ロックやジャズのバンドでギターを演奏しながら、医学部に進学した。

これまで3,000 枚以上のレコード、CDのライナーノートを書き、数多くのCDをプロデュースした。また 1,000 人以上のミュージシャンや関係者にインタビューし、その中にはマイルス・デイヴィス(1985年 - 1990年)、アート・ブレイキー(1982年 - 1991年)、ソニー・ロリンズ(1986年 - 2001年)、オスカー・ピーターソン(1987年)、デクスター・ゴードン(1982年 - 1984年)、ハービー・ハンコック(1985年 - 2019年)、 キース・ジャレット(2001年)、 チャーリー・ワッツ(1989年、1990年)、 秋吉敏子(1984年 - 2016年)、渡辺貞夫(1985年 - 2021年)、 日野皓正(1983年 - 2021年)、 アルフレッド・ライオン(1985年、1986年)、ボブ ·ワインストック(1999年)、 オリン・キープニュース(2000年)、クリード・テイラー(2009年)などが含まれる。

1985年にマイルス·デイヴィスの知遇を得、彼について7冊の本を発表している 。

これまでジャズに関する多くの記事や書籍を執筆し、2016年にはマイルス・デイヴィスの音楽を継承したエレクトリック・フリー・ジャズ・ロック・バンド、セリム・スライヴ・エレメンツを結成。

1991年以降、フラットアウト・プロダクションズでケニー · ワーナー 、デニス・チェンバース、マーク・コープランド、、アダム・ホルツマン、、カーティス・フラーなどのアルバムをプロデュースした。

2023年時点では東京のセントラルクリニック整形外科部長を務める。

来歴

東京生まれ。小学3年からクラシックギターを習い、中学生の時アルバム『ゲッツ/ジルベルト』で聴いたジョアン・ジルベルトのギター・スタイルに感銘を受け、ボサノヴァに興味を持つ。その頃、中学の同級生たちとザ・ベンチャーズ・スタイルのバンドを結成。高校時代はフォークソングを演奏し、ラジオ番組やコンサートに出演。東京のディスコにはリズム&ブルース・バンドを結成して出演。

1970年、東京医科大学に入学。ロックやリズム&ブルースのバンド活動と並行してジャズ・バンドでも演奏。1971年に「アン・ミュージック・スクール」でジャズ・ギターと音楽理論を学ぶ。同校の生徒とジャズ・バンドを結成し、都内周辺のジャズ喫茶やホテルのラウンジなどで演奏。その後、学業が忙しくなり、バンド活動を全て断念。

1977年、医学部を卒業して、そのまま大学病院の医局に入る。1981−1983年、ニューヨーク大学院生としてニューヨークに在住し、ソーシャル・リハビリテーションを学ぶ。

ニューヨークでは、自宅アパートとなりの建物に住んでいたウィントン・マルサリスと兄のブランフォード 、アート・ブレイキーをはじめ、ヴィレッジ・ヴァンガードのオーナーであるマックス・ゴードンら多くの人々と知り合う。

キャリア

1983年の帰国後、音楽ライター、翻訳家、ジャーナリスト、音楽イベント、特にジャズのプロデューサーとして活動を開始。

1985年にブルーノート・レコードの創設者アルフレッド・ライオンと出会い、翌年のライオン来日時は主治医として同行した。その年はマイルス・デイヴィスにもインタビューし、これがその後の交流につながる。マイルスが1991年にこの世を去るまでに20回近くのインタビューとミーティングを重ね、これらの経験に基づき『マイルス・デイヴィスの真実』(2002年)とマイルス・デイヴィスが語ったすべてのこと~マイルス・スピークス』(2016年)を出版した。

1990年代は、グラス・ハウス(パイオニアLDC) 、サヴォイ(日本コロムビア)、Novus-J(BMGビクター) などのレーベルを立ち上げ、ニューヨークやシカゴなどでアルバムをプロデュースした。

2010年以降、第二次世界大戦後の日本のジャズの状況とジャズの発展について、日本のミュージシャンや関係者のインタビューを積極的に行い、それらは『証言で綴る日本のジャズ』(2015年)、『証言で綴る日本のジャズ 2』(2016年)、『伝説のライヴ・イン・ジャパン 記憶と記録でひもとくジャズ史』(2019年)、『来日ジャズメン全レコーディング 1931-1979 レコードでたどる日本ジャズ発展史』(2023年)などで発表する。

2016年には日本を代表するクラブジャズ系ミュージシャンらとマイルス・デイヴィスをオマージュするバンド「セリム・スライヴ・エレメンツ」 を結成。以後、 横浜「モーション・ブルー・ヨコハマ」、 代官山「晴れたら空に豆まいて」、渋谷「JZ Brat」、渋谷「WWWX」、新宿「ピットイン」、などに出演。

2017年にデビューアルバム『Resurrection』(T5Jazz Records)発表。2019年4月10日、渋谷「JZ Brat」でライヴレコーディングを行い、2作目の『Voice』として、同年8月7日にUltra-Vybeからリリースした。

NHKで放送されるマイルス・デイヴィスのラジオ番組「JAZZ MILES」など、NHK-FM や他のラジオ局で定期的にラジオ番組に出演している。

受賞歴

2015年、「ミュージック・ペンクラブ音楽賞」『証言で綴る日本のジャズ』

著作一覧

  • 『激白!JAZZ TALKIN'』(スイングジャーナル) 1992年
  • 『ジャズ・サックス決定盤』(音楽之友社)1994年
  • 『知ってるようで知らない~ジャズおもしろ雑学事典』(ヤマハミュージックメディア)2001年
  • 『JAZZウルトラ・ガイド』(平凡社新書)2001年
  • 『ニューヨークJazz―パーフェクト・ジャズ・ガイド200』(東京キララ社/三一書房)2002年
  • 『マイルス・デイヴィスの真実』(平凡社)2002年
  • 『マイルス・デイヴィス―コンプリート・ディスク・ガイド』(東京キララ社)2002年
  • 『新音楽解体入門 読んでから聴く厳選ジャズ名盤』(全音楽譜出版社)2003年
  • 『ブルーノート・ジャズ』(平凡社新書)2003年
  • 『ブルーノートの真実』(東京キララ社)2004年
  • 『ベスト・オブ・ジャズ・ピアノ』(平凡社新書)2005年
  • 『ジャズのたしなみ方』(全音楽譜出版社)2005年
  • 『はじめてのブルーノート』(音楽之友社 On Books 21) 2005年
  • 『マンハッタン・ジャズ・カタログ』(全音楽譜出版社)2005年
  • 『ブルーノート・コレクターズガイド』(東京キララ社)2006年
  • 『JAZZ TALK JAZZ』(河出書房新社)2006年
  • 『ジャズマンが愛する不朽のJAZZ名盤100』 (河出書房新社)2006年
  • 『となりのウィントン』(NHK出版)2006年
  • 『スタンダード・ジャズのすべて大辞典850』(全音楽譜出版社)2006年
  • 『愛しのジャズメン』(東京キララ社)2007年
  • 『ジャズ・マンはこう聴いた! 珠玉のJAZZ名盤100』(河出書房新社)2007年
  • 『愛しのジャズメン2』(東京キララ社)2007年
  • 『ジャズマンがコッソリ愛する ジャズ隠れ名盤100』(河出書房新社)2007年
  • 『知ってるようで知らないジャズ名盤おもしろ雑学事典』(ヤマハミュージックメディア)2008年 ISBN 978-4-636-82577-0
  • 『ジャズ楽屋噺~愛しきジャズマンたち』(東京キララ社)2008年
  • 『ジャズマンが語るジャズ・スタンダード120』(全音楽譜出版社)2008年
  • 『決定! JAZZ黄金コンビはこれだ!!』(河出書房新社)2008年
  • 『ザ・ブルーノート、ジャケ裏の真実 1500番台編』(講談社)2008年
  • 『証言で綴るジャズの24の真実』(P-Ryhtm)2008年
  • 『モダン・ジャズの世紀―プレイバック! 10大ニュースで綴る』(春日出版)2009年
  • 『感涙のJAZZライヴ名盤113』(河出書房新社)2009年
  • 『ブルーノート大事典 1500番台編』(東京キララ社/河出書房新社)2009年
  • 『必聴!JAZZ 101』(河出書房新社)2009年
  • 【オーディオブックCD】『愛しのジャズメン』(パンローリング/東京キララ社)2009年
  • 【オーディオブックCD】『愛のジャズメン2』(パンローリング/東京キララ社)2009年
  • 【オーディオブックCD】『ジャズ楽屋噺』(パンローリング/東京キララ社)2009年
  • 『ブルーノート読本―アルフレッド・ライオン語録』(春日書房)2009年
  • 『改訂版 ブルーノート・コレクターズ・ガイド』(東京キララ社/河出書房新社)2009年
  • 『ザ・ブルーノート、ジャケ裏の真実 4000番台編』(春日出版)2009年
  • 『ピアノ・トリオ決定盤ベスト100』(東京キララ社)2011年
  • 『ジャケ裏の真実 ジャズ・ジャイアンツ編(JAZZ歴史的名盤)』(駒草出版)2015年
  • 『証言で綴る日本のジャズ』(駒草出版)2015年
  • 『ジャズメン、ジャズを聴く』(シンコーミュージック・エンタテインメント)2016年
  • 『証言で綴る日本のジャズ2』(駒草出版)2016年
  • 『マイルス・デイヴィスの真実』(講談社+α文庫)2016年
  • 『マイルス・デイヴィスが語ったすべてのこと~マイルス・スピークス』(河出書房新社)2016年
  • 『ジャズメン死亡診断書』(シンコーミュージック・エンタテインメント)2017年
  • 『スリー・ブラインド・マイス・コンプリート・ディスク・ガイド~伝説のジャズ・レーベル~』(駒草出版)2017年
  • 『おもしろジャズ事典』(ヤマハミュージックメディア)2017年
  • 『ジャズ・ジャイアンツ・インタビューズ』(小学館)2018年
  • 『ジャズ超名盤研究』(シンコーミュージック・エンタテインメント)2018年
  • 『ビバップ読本 証言で綴るジャズ史』(シンコーミュージック・エンタテインメント)2018年
  • 『ジャズ超名盤研究2』(シンコーミュージック・エンタテインメント)2019年
  • 『改訂版ブルーノートの真実』(東京キララ社)2019年
  • 『伝説のライヴ・イン・ジャパン』(シンコーミュージック・エンタテインメント)2019年
  • 『レーベルで聴くジャズ名盤1374』(シンコーミュージック・エンタテインメント)2020年
  • 『ジャズ超名盤研究 3』(シンコーミュージック・エンタテインメント)2021年
  • 『Blue Note Collector's Guide』(Jjokkpress)2021年、言語:韓国語
  • 『マイルス・デイヴィス大事典』(シンコーミュージック・エンタテインメント)2023年
  • 『来日ジャズメン全レコーディング 1931-1979 レコードでたどる日本ジャズ発展史』(シンコーミュージック・エンタテインメント)2023年
  • ジャズ · クラブ黄金時代 - NYジャズ日記 1981-1983(シンコーミュージック・エンタテインメント)2023年

主な共著

  • 『ブルーノートJAZZストーリー』油井正一、マイケル・カスクーナ 他(新潮文庫)1987年
  • 『ブルーノート再入門』行方均、油井正一 他(径書房)1994年
  • 『200DISCS ブルーノートの名盤』行方均、村井康司 他(立風書房)1996年
  • 『[新版]ジャズを放つ』細川周平、後藤雅洋 他(洋泉社)1997年
  • 『ブルーノート再入門 モダン・ジャズの軌跡』行方均、油井正一  他(朝日文庫)2000年
  • 『ボブ・ディランとともに時代を駆けた20世紀のロック名盤300』宇田和弘, 中山康樹 他 (旬報社)2000年
  • 『徹底攻略!超難問集 マイルス・デイヴィス編―史上最強の超雑学』中山康樹 (ヤマハミュージックメディア)2003年
  • 『ビートルズ アメリカ盤のすべて』中山康樹(集英社インターナショナル)2004年
  • 『TALKIN' ジャズX文学』平野啓一郎(平凡社)2005年
  • 『われら六〇年代文化』品田雄吉、椎名誠 他 (ネット武蔵野)2006年
  • 『マイルス・デイヴィスとは誰か──「ジャズの帝王」を巡る21人』平野啓一郎(平凡社新書)2007年

セレクト・ディスコグラフィー(プロデューサー)

  • ピーター・アースキン:スウィート・ソウル、CD 1991、Novus-J/BMG Victor Inc.
  • ボブ・ミンツァー:アイ・リメンバー・ジャコ、CD 1991、Novus-J/BMG Victor Inc.
  • ボブ・ミンツァー:Two T's、CD 1994、Novus-J/BMG Victor Inc.
  • ヴィンス・メンドーサ:スタート・ヒア、CD 1990、Funhouse Productions Ltd.
  • ヴィンス・メンドーサ:インストラクション・インサイド、CD 1991、Funhouse Productions Ltd.
  • ミッチェル・フォーマン:ホワット・エルス?、CD 1992、Novus-J/BMG Victor Inc.
  • ミッチェル・フォーマン:ナウ&ゼン、CD 1993、Novus-J/BMG Victor Inc.
  • 布川敏樹 VALIS: ヴァリス、CD 1991、Crown Music Productions LLC.
  • カーティス・フラー:ブルースエット パート II、CD 1993、Savoy/Columbia Music Entertainment
  • ハービー · シュワルツ:アライヴァル、CD 1992、Novus-J/BMG Victor Inc.
  • アダム・ホルツマン:イン・ア・ラウド・ウェイ、CD 1992、Manhattan Records
  • ジミ・タンネル: トライラテラル・コミッション、CD 1992、Glass House/Pioneer LDC, Inc.
  • ラルフ・ムーア: フー・イット・イズ・ユー・アー?、CD 1993、Savoy/Columbia Music Entertainment
  • ケニー・ワーナー:ペインティング、CD 1994、Glass House/Pioneer LDC, Inc.
  • ESP (ロバート・アーヴィング三世、ボビー・ブルーム、ダリル・ジョーンズ、トビー・ウィリアムズ): P、CD 1992、Glass House/Pioneer LDC, Inc.
  • マーク・コープランド: ストンピン・ウィズ・サヴォイ、CD 1995、Savoy/Columbia Music Entertainment
  • Now's the Time Workshop: CD 1990、1996、Funhouse Productions Ltd.
  • Now's the Time Workshop 2: CD 1991、Funhouse Productions Ltd.
  • デニス・チェンバース:ゲッティング・イーヴン、CD 1998、Glass House/Pioneer LDC, Inc.
  • Selim Slive Elementz: Resurrection、CD&LP 2017、T5 Jazz Records (Vivid Sound Corporation)
  • Selim Slive Elementz: Voice、CD&LP 2020、Ultra-Vybe Inc.

外部リンク

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