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【第1回ANIAFF】コンペティション部門出品作「ひゃくえむ。」「ホウセンカ」監督&審査員が会見

2025年12月17日 15:00

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「ひゃくえむ。」岩井澤健治監督(左)と「ホウセンカ」木下麦監督
「ひゃくえむ。」岩井澤健治監督(左)と「ホウセンカ」木下麦監督

名古屋で開催中の「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」国際コンペティション部門出品作「ひゃくえむ。岩井澤健治監督、「ホウセンカ木下麦監督、3人の審査員による記者会見が12月17日実施された。

木下監督の「ホウセンカ」は、2021年のオリジナルテレビアニメ「オッドタクシー」の此元和津也(原作・脚本)と再タッグを組み、無期懲役を言い渡された受刑者が、鉢植えのホウセンカとの会話を通して過去と向き合う物語。「前作は群像劇でしたが、今回は登場人物を最小限に絞り、ミニマムな世界観の中で映画としての純粋な美しさを追求しました」と紹介する。

岩井澤監督の「ひゃくえむ。」は、「チ。 地球の運動について」で知られる漫画家・魚豊のスポーツ漫画をアニメーション映画化した作品だ。「100メートル走という、わずか10秒ほどで終わる競技を題材にしていますが、その一瞬に込められた時間や感情を、アニメーションとしてどう体感してもらうかを意識しました。非常にシンプルな題材だからこそ、表現の難しさと向き合った作品」と振り返る。

両監督とも実写映画のバックグラウンドを持っており、その経験とアニメーション制作への影響を問われると、「実写映画出身というわけではありませんが、MVやCM制作の現場にいました。アニメーションの形式に縛られなかったことが、結果的に個性につながった」(木下)。「もともと実写映画の美術スタッフでした。実写を作りたくてもうまくいかなかったという挫折もありましたが、絵を描くことも好きだったので、実写をベースにしたロトスコープという手法に出会い、実写を取り入れることが自分の個性にもなった」(岩井澤)と振り返る。

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今後の作品について木下監督は、「ホウセンカ」とは全く違うベクトルの明るく賑やかなアクションエンタテインメントシリーズを準備中、岩井澤監督は、長編3作となる新井英樹氏の漫画を原作とする「ひな」について触れ、「制作方法も含めて新しい挑戦になると思います」と話す。

また、近年劇場版アニメーションでは実写の俳優をボイスキャストとして起用するケースが増えているが、その起用基準を問われると岩井澤監督は「基本的には、まず絵があり、そこに声を当てるものだと考えています。その意味で、声優の皆さんの、絵に負けない声の芝居には大きなリスペクトがあります。理想はプロの声優の方にお願いしたいという一方で、より多くの方に作品を届けるための橋渡しとして、実写の俳優の方にお願いする場合もあります。その際に大切にしているのは、キャラクターに本当に合っているかどうか。声が絵から浮いてしまわないか、違和感が出ないかという点を最も重視しています。最終的には、観客がアニメーションとして自然に受け取れることが重要だと思っています」と回答。

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木下監督は、「声優か俳優かという区別は、あまり意識していません。今回の作品では、間や空気感など、実写的なリアリティを重視した演出をしています。セリフがなくても、そこに言葉があるように感じられる空気を作りたい」といい、「この声をこのキャラクターに当てたいと思える方にオファーをしています。声優だから、俳優だからという理由で分けることはなく、作品の世界観に合うかどうかを基準にしています」と語った。

また、映画祭はさまざまな出会い、つながりを作る場でもあると強調し、両監督は「無名の人生鈴木竜也監督も含め3人で初めて飲酒し、親交を深めたというエピソードも披露した。

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コンペティション部門の審査員による記者会見では、オーブリー・ミンツ、ペネロープ・バジュー、塩田周三の3人が登壇した。

審査を振り返り、「第1回の映画祭として非常にクオリティが高いと感じました。セレクションには明確な意思があり、アートとエンターテインメントの中間に位置する、多様な手法・テーマの作品が揃っていました。11本すべてが魅力的で、最終的な選考は感情的に訴えたかどうかが決め手になった」(塩田)、「今後どのような映画祭に成長していくのかを意識しながら審査しました。11作品はすべてクオリティが高く、多様で、本質的に異なる表現が集まっていた。議論は非常にスムーズだった」(バジュー)、「ホスピタリティ、プログラム構成ともに素晴らしく、審査員として非常に集中できる環境でした。スタッフが一切介入せず、審査員の判断を尊重してくれた点も印象的です。11作品はいずれも作り手の個人的背景が強く感じられた」(ミンツ)とコメント。

国際的なアニメーションフェスティバルの存在意義について問われると、「観客にとっては、通常の興行では出合えない作品をまとめて体験できる貴重な場となり、アニメーション制作を孤独な仕事なので、作り手同士が出会い、称え合い、次につながる関係を築く場所になる。さらに産業的な視点でも、新たな動きを生み出す可能性がある」と塩田氏。

バジュー氏は自身がアニメーション業界は属さず、バンドデシネ作家であることを前置きし「このような映画祭がなければ、永遠に観られなかったかもしれない作品に出会える場。作品が多くの人に届くことで、その映画の人生が変わる可能性がある。映画祭は大きな責任を担っていると感じた」と感想を述べる。ミンツ氏は「アニメーションは子ども向けジャンルではなく、真剣に向き合うべき映画表現だという認識が広がりつつあります。映画祭は、その価値を観客に伝える重要な役割を果たしています。また、世界中のプロフェッショナルが集まり、短期間で深い交流が生まれる点も大きな意義」とした。

また、一般的に映画祭では予算や会場の制約もあるものだが、今回は名古屋駅付近のシネコン(ミッドランドスクエアシネマ、109シネマズ名古屋)で上映が行われ、「映像・音響ともに素晴らしい環境が整っていた」と審査員全員がクオリティの高い施設での開催を称えていた。

国際コンペティション部門の受賞者については、本日17日夜の授賞式で発表される。「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」(ANIAFF)は12月17日まで、愛知県名古屋市で開催。チケットは公式サイト(https://aniaff.com/)で発売中。

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