田中泯が牛と場踊り「坂本龍一の追悼の意も込めて観に来てほしい」 リー・カンションとセリフなし、禅と悟り描く「黒の牛」の見どころ語る
2025年12月16日 13:00

100年の歴史を誇る牛嶋神社(東京都墨田区向島)で12月14日、映画「黒の牛」公開記念イベントが行われた。禅僧役の田中泯による「場踊り」が行われ、本編に出演し、この日岩手から運ばれた牛の「ふくよ」とも共に踊り観客を魅了した。その後、本作のプロデュサーである市山尚三の司会のもと、台湾から来日した主演のリー・カンション、田中泯、蔦哲一朗監督がトークを行った。
映画は、禅に伝わる悟りまでの道程を十枚の牛の絵で表した「十牛図」から着想を得て、全編フィルム撮影にこだわり8年の歳月をかけ完成させた蔦監督の長編第2作。主演はツァイ・ミンリャン監督作品で知られるリー・カンション、映画「国宝」で歌舞伎役者・小野川万菊を演じ、強烈な印象を残した田中泯が禅僧を演じ、音楽は生前参加を表明していた坂本龍一の楽曲を使用。撮影も長編劇映画では日本初となる70ミリフィルムを一部使用している。
(C)NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC CREATIVE / FOURIER FILMS牛嶋神社は古くから牛を神の使いとして祀っている場所であり、「黒の牛」は牛と人間とが共に生きるという物語であると市山氏が説明、蔦監督は「田中泯さんには、僕の前作『祖谷物語 おくのひと』にも出演して頂いて、まさか十何年経ってから自分の企画で泯さんに踊っていただけるとは感慨深いです。自分の中では、ちょっと成し遂げちゃった気持ちもあります(笑)」と喜びのコメント。そして、「オリジナル脚本なので映画に賛同してもらう方を探すのに苦労しました。リーさん、泯さん、そして坂本龍一さん、皆様のお力添えで、ここまでこられました。制作に8年かかり、僕の30代を全て懸けた作品です。フィルムで撮る以外にも、こだわり抜いた映画ですので、ぜひ劇場で観てもらいたいです」とアピール。
©NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC CREATIVE / FOURIER FILMS田中は牛の「ふくよ」を紹介し、「とんでもない大雨の中、膝まで埋まって歩けなくなるような田んぼを、リー(・カンション)さんも一緒に耕したり、山の中を歩いたりした、本当に思い出深い子です。映画が終わってお別れして、本当なら彼女は食べられてしまうところを、東北に行って農業をするようになり、おまけに子供を2頭も産んだようです。幸せなやつだなと思いました。今日来ることは知っていましたが、まさか一緒に踊れるなんて思ってもいなかったです。彼女が東北から一緒にやって来た仲間が綱をひいてくれたおかげで、突き倒されなくて済みました。時々すごく優しい目で僕を見てくれているのがわかって、すごく嬉しかったです。映画本編ではリーさんは、全然しゃべりません。全くしゃべりません。でも本当に素晴らしい俳優さんで、びっくりです。何にもしゃべらないのに、映画を引っ張っていく。こんな映画は、みなさん観たことないと思います」と見どころを語る。
リーは「今日はありがとうございます。田中泯さんの素晴らしいダンスを拝見し、曇り空から太陽の光がさっと差し込み、これは素晴らしいイベントだと思いました。そして『黒の牛』は完全に芸術映画、アート映画だと思います。監督は勇敢なことに全編フィルムでお撮りになりました。日本ではこのような映画は大変に貴重だと思います。現代、社会では色々と悲しいことがありますし、非常に忙しなく生活をされているかと思います。そんな時に、この映画をご覧になって、心を落ち着けて、静かな日々を送って頂ければと思います」と語る。
©NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC CREATIVE / FOURIER FILMS田中は共演したリーの印象を「本当に素敵な方です。言葉でなくとも、会話がなくとも分かっている。彼の一挙手一投足に納得がいきました。言葉で指示をしたり、されたり、言葉で感情を伝える、そういうことがほとんどない、より自然に近い状態の中で、ことが進んでいく。それは本当に素敵な現場でした」と振り返り、一方リーは「泯さんが先ほどお話されたように言葉の問題はなかったです。私は映画の中で、一人でワンシーン十数分ほどの長回しを演じています。田中さんはダンスでそれをされているので、私のことをよく分かってくれた気がしましたし、私も田中さんとご一緒させて頂いて、言葉じゃなくて分かり合えた気がします。現場で、私と田中さんの年齢の合計は120歳だったんですね。合計120歳の二人が、田んぼ中で牛と格闘しなくちゃいけないのは大変でした(笑)」と撮影を振り返る。
©NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC CREATIVE / FOURIER FILMS最後に田中は「映画館で観るのは、DVDで観たり、茶の間のTVで観るのとは全く違ったものになると思うんです。誰かに伝えたくなるような、心が動くのが映画館なのかなと。TVだと途中で止めたり自分でコントロールできますが、映画館はみんなで一緒に観る場所。映画は共同性がないと出来上がらないものですから、映画館でぜひ観てください。坂本龍一さんが(音楽として参加することを)『OK』と言ってくれたんだよね。でも間に合わなかった。坂本龍一の追悼の意も込めて観に来てください」と、劇場で本作を鑑賞する意義を語った。
映画は2026年1月23日から、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿K'sシネマほか全国公開。
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