不遇な幼少期の地獄から抜け出し、周囲の人間“X”たちを残酷に踏みにじるトップ女優のペク・アジン(キム・ユジョン)。その壮絶な破滅と、彼女に翻ろうされ、それでも守るために地獄を選んだユン・ジュンソ(キム・ヨンデ)の切なくも激しい愛の軌跡が描かれる。

先日、最終回を迎えて、世界中のファンに大きな衝撃を与えた本作から、出演するキム・ユジョン(ペク・アジン役)、キム・ヨンデ(ユン・ジュンソ役)、キム・ドフン(キム・ジェオ役)、イ・ヨルウム(レナ役)の特別メッセージが、インタビュー形式で届いた。
――配信後、グローバルで大きな反響がありますが、キャストの皆さんにもその声は届いていますか? ヒットを受けての率直なお気持ちを教えてください。
キム・ユジョン 「
親愛なるX」がTVINGとして海外に紹介する作品の第1作に選ばれたと知った時、驚きと同時に身が引き締まる思いがしました。さまざまな国と地域で注目を集めていると聞くたびに、とてもありがたいと思いました。これほど多くの方々にご覧いただいているということだけでも、大変大きな意味を感じています。
キム・ドフン 知人から「『
親愛なるX』見てるよ、面白かった」と言われて、実感が湧きました。特に、普段はドラマや映画をあまり見ない友人から「面白かったよ」と言われたときは、ずいぶん驚きました。
SNSでも、本作について、興味を示してくださったり、些細な情報でも熱く語り合い、登場人物の心情や状況に共感し、時には胸を痛める皆さんの声に触れるたびに、ホッとすると同時に手応えを感じています。本当に心から感謝しています。

――本作がこれだけ視聴者を魅了する理由は、どの点にあると思いますか?
キム・ヨンデ 興味深い題材や予測不能な展開、そして、さまざまな登場人物たちが複雑に絡み合って生まれる感情の変化こそが、視聴者の皆さんを惹きつけた要素だと思います。各キャラクターのしっかりしたバックボーンも、自然と視聴者の皆さんを、物語の世界に引き込む力になったと思います。
イ・ヨルウム 私たちの身近にいそうな、さまざまなタイプの人物を魅力的に描き、アジンというキャラクターへの共感と憤りが交錯する中で芽生えてくる新たな感情が、本作を、より興味深いものにする理由の1つだと思います。
――
キム・ユジョンさんは、新境地ともいえるアジンという難しい役柄を理解するために、役作りのためのリサーチや、参考にした作品・人物、あるいは監督と相談されたことはありますか?
キム・ユジョン 役作りのために、原作のウェブトゥーンを読み込み、キャラクターの変化や感情を分析しました。彼女の心理状態をより深く理解するために、心理学の教授にもアドバイスを求めるなど、専門家の方々にも協力していただきました。
ルックスに関しては、ウェブトゥーンに描かれたアジンの冷徹で落ち着いた雰囲気を表現するために、彼女の視線や目つきに気を配り、スタイリング面では初めてフルバングヘアに挑戦してキャラクターのイメージを構築していきました。

――
キム・ヨンデさんは、アジンとジュンソの関係性を表現するにあたり、
キム・ユジョンさんと何か相談したり、役について話し合ったりする場面はありましたか?
キム・ヨンデ キム・ユジョンさんとは、撮影が始まる前から、各シーンについて十分話し合いを重ね、お互いのキャラクターへの理解を深めようとしました。ふたりのキャラクターの感情の密度をシンクロさせていくことが重要だったので、その話し合いが自然に芝居に反映されたと思います。
――イ・ヨルウムさんは、アジンとレナの関係性を演じる上で、特に意識した点や、何か
キム・ユンジョンさんの演技から影響を受けた点があれば教えてください。
イ・ヨルウム 私はアジンとレナの一番大きな違いは、本心を隠しているかそうでないか、そして愛を渇望しているかどうかだと思いました。レナはアジンとは対極にある人物だと思います。なので、どうして、このような根本的な違いが生まれたのかを、ずいぶん考えました。
レナが愛を求め、本心をさらけ出すキャラクターである一方で、アジンは他人に気を取られるあまり、自分のことは顧みない人物です。ですから、アジンとは対照的に、レナを人との関わり方が不器用な人として描き、彼女の人間らしい魅力を加えたいと思い工夫しました。

――アジンを
キム・ドフンさん演じるジェオが笑わせ、ふたりが自然体で笑い合うシーンがとても印象的でした。まるで素で笑っているようにも見えましたが、あのシーンにまつわるエピソードがあれば教えてください。
キム・ドフン 僕も台本を読みながら「このシーンは絶対いいものにしたい」という意欲が湧きました。それは恋しかったアジンと数年ぶりに再会した状況で、アジン、ジュンソ、ジェオが一堂に会する数少ないシーンだったからです。
台本にはジェオとアジンが「キャッキャッと笑う」というト書きだけがありました。その笑いが、お互いすっかりリラックスしたものになるといいなと思って、自然と即興の台詞や表情、ジェスチャーが生まれました。僕はユジョンさんが、とびっきりの笑顔になることを期待して、思いつく面白い話をどんどんしました。実際、彼女を笑わせることは簡単なことではないので必死でした(笑)。

――ハードなシーンも多い作品ですが、皆さんは撮影の中で特に印象に残っているシーンや苦労したシーンはありますか?
キム・ユジョン 最も印象に残っているのは第11話です。取り返しがつかないほど暴走してしまったアジンの行動や思考を表現するのがとても難しく、葛藤を覚えました。それまで持っていた強い心が揺らぎ始めた時、彼女をしっかり掴んで止めてあげたいと思いました。
本作では、多くのキャストたちが登場人物に命を吹き込んでくださったので、アジンが新しい登場人物と出会い、ぶつかりながら新たな関係が生まれるシーンを撮影するたびに、喜びと感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。
キム・ヨンデ 記憶に残るシーンはたくさんありますが、中でも爆発シーンは、準備から現場の緊張感まで鮮明に覚えています。安全には細心の注意を払い、体力的にもかなり負担が大きかったので、個人的にも忘れがたいシーンですね。
キム・ドフン 僕は、弟を虐待する父親をジェオが止めるシーンです。ジェオの人生において、大きな転機になる瞬間なので、彼を演じる僕にとっても大事なシーンでした。猛暑の中、急な坂道を駆け上がりながらの撮影も大変でしたし、古くて狭い家の中で取っ組み合いをする瞬間は、さながら肉弾戦でした。
リアリティを追求するために、ロケハンからセットデザインに至るまで、とことんこだわったスタッフや、目の前の状況に僕が集中できるよう演じてくださった共演者の皆さんに感謝しております。同時に、その瞬間に完全に入り込まなければならなかった僕としては、心身共にかなりハードなシーンとして印象に残っています。
イ・ヨルウム やはり駐車場でのアジンとのシーンです。あのシーンは、レナの強烈なイメージを印象づける瞬間でもあり、思い悩みました。

――作品の内容とは対照的に、舞台裏の写真からは、キャストの仲の良さが伝わってきます。休憩中や撮影の合間は、どのように過ごされていましたか?
キム・ユジョン アジンを演じている間、どうしても物語の雰囲気に、精神的にも体力的にも影響を受ける瞬間がありましたが、共演者やスタッフ、監督に励ましてもらい、バランスを保つことができました。
休みの時間には、作品のことだけでなく、身の回りの話をしたり、一緒に食事をしたり自然と息抜きができました。そういう時間があったからこそ、ハードなシーンも比較的安定した状態で臨むことができたと思います。
キム・ドフン 同年代の共演者が多い現場だったので、すぐに打ち解けましたし、監督も撮影が始まるまで、自由に意見を出し合える雰囲気を作ってくださいました。クランクイン前のワークショップで信頼関係を築き、読み合わせの日には、キャスト同士で気楽に挨拶したり、コミュニケーションをとったりする時間を十分に取ることができました。
何より撮影に入るまで、リアルな感情を保つことができるよう、気づかってくださいました。なかなかヘビーな作品ですので、その重苦しさは、休憩時間におしゃべりをしたり、冗談を言ったりして和らげました。それぞれ役とは全く違う一面を見せたり、イタズラも結構しましたね。撮影のない日には、キャストと監督が集まって、絆を深めていきました。

――撮影を通して、それぞれ共演者の皆さんから学んだことや、刺激を受けた点はありますか?
キム・ユジョン キャスト全員がそれぞれのアプローチで、役柄への理解を深めたので、共演をする上でとても助かりました。アジンは相手によって、態度を変える人物ですので、相手役との相性がとても大事な役です。
共演者の皆さんがそれぞれのキャラクターを、とても生き生きと表現してくださったおかげで、ペク・アジンという人物も、より多面的なキャラクターになれたような気がします。ペク・アジンを演じる大変さを理解くださり、共演者の皆さんは私に寄り添い、全力で支えてくださいました。そのことに深く感謝し、多くのことを学びました。
キム・ヨンデ それぞれの役者たちが、自分の立ち位置で全力を尽くしている姿は本当に刺激的でした。そのエネルギーは、自然と相乗効果につながり、僕自身もその中で多くのことを学び、成長できたと思います。

ペク・アジンを演じる時も大きなジェスチャーより、
瞳の微かな動きや小さな手振り、眼差しだけで感情を伝え、大きな感情を小さな動きに凝縮することで、より大きなエネルギーを感じさせました。共演しながらも何度も驚かされましたし、モニター越しに見ていても、彼女の繊細な表現は、実に輝いていました。
キム・ヨンデさんは、まさに「盗みたくなるような眼差し」を持った俳優です。特に無表情な時に見せる、何とも言い難い眼差しが、とても魅力的で、ユン・ジュンソという人物が持つ感情の質感を強く訴える力強さがありました。共演する時も、モニター越しに見た時も、深い余韻を残す眼差しでした。

イ・ヨルウム 私はときどき元気が出ない日もありますが、ジェオ役のドフンさんにずいぶん助けられました。彼は溢れんばかりの元気と、ポジティブなエネルギーで、周りを幸せにします。そのおかげで、芝居と向き合う自分を奮い立たせることができました。一見、茶目っ気たっぷりに見えますが、実はとても思慮深い人なので、そういうところを見習いたいと思いました!
――物語が加速する後半の見どころと、作品を楽しんでいる日本のファンへメッセージをお願いします!
キム・ユジョン 物語が後半に進むにつれて、皆様がどんなことを予想しても、それを上回る展開が待っているかもしれません。これまでさまざまなキャラクターやストーリーが展開されましたが、まだまだこれからです。
そして、「
親愛なるX」を楽しんでくださっている皆さんに心から感謝しています。それぞれの視点で作品を楽しんでいただいていることが、俳優としてとても大きな力になっています。どうか最終話までアジンの物語を見届け、さまざまな感情や疑問を共有していただければ嬉しいです。

キム・ヨンデ アジンの変化、そして彼女を取り巻く周辺人物たちの感情や関係性は、後半でより一層密度を上げていきます。それぞれの人物がどのような選択をするのか、ぜひ見守ってください。そして、いつも応援してくださり、本当にありがとうございます。これからも良い作品、良い演技で皆さんのご期待に応えられるよう頑張ります。これからも応援よろしくお願いいたします。
キム・ドフン ペク・アジンがいよいよ頂点に登り詰めるのか、それとも破滅するのか、そして、彼女をそばで支えてきたユン・ジュンソとキム・ジェオが、最後まで彼女に寄り添い続けるかも大きな見どころです。
さらに、ペク・アジンを凌ぐ思考回路を持つムン・ドヒョクが、彼女にいかに揺さぶりをかけ、影響を与えるかも最後まで目が離せない要素です。こうしたさまざまな物語が絡み合い、最後まで予断を許さない展開を見せているのが『
親愛なるX』の魅力だと思います。
僕も日本の作品やコンテンツを愛するファンとして、日本の皆様に応援して頂けていることを誇りに思うし、感謝しております。この頃は、日本と韓国の文化交流が活発になり、コラボできる機会もどんどん増えています。僕も皆さんにより近くでお会いできる日を楽しみにしております。

イ・ヨルウム 本作には、多様で魅力的なキャラクターがたくさん登場します。アジンは、その中で周りに影響を与えるばかりの人物のように見えますが、それと同時に彼女自身も周りから影響を受けていることも見どころの1つです。
また、私自身もこの作品を通して、これまでと違う役柄を演じ、披露することができて本当に幸せでした。レナにたくさんの愛と応援をいただき、心から感謝しています。「
親愛なるX」をたくさんの方々に広めていただければ嬉しいです。