谷口悟朗監督、名古屋でコアファンに向けキャリア語る濃密トーク 新作「パリに咲くエトワール」トピックも
2025年12月14日 21:10

名古屋市で開催中の「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」のオールナイト上映部門で、谷口悟朗監督の「スクライド オルタレイション QUAN」「スクライド オルタレイション TAO」「BLOODY ESCAPE 地獄の逃走劇」が12月13日ミッドランドスクエアシネマで上映された。上映前に、谷口悟朗監督と声優の倉田雅世がトークを行った。
この日はオールナイト上映ということで、谷口監督作品を愛するコアなファンが集結。上映トーク前から谷口監督はスクリーン前に待機し、現在闘病中の声優、津久井教生への励ましのメッセージカードの記入を観客に熱心に呼びかけていた。
90分のロングトークの前半は、フェスティバルのアーティスティックディレクター数土直志から出された「これまでどういう考えで作品を撮ってきたのか」というテーマから自身のキャリアを振り返り、後半は会場の観客からの質問に答えた。

この日上映された「スクライド」から、近年の大ヒット作「ONE PIECE FILM RED」とコアなファンからライト層までその名を知られる谷口監督だが、トークの口火を切るや否や「アニメ界で1番無能なのが私」と衝撃発言。「声優さんみたいに芝居をするわけでもなく、専門として脚本を書いてるわけでもないし、絵や美術を描くのでもなく、自分で撮影もしない。私は持っているものが何にもない」と謙虚に説明する。アニメ制作会社「J.C.STAFF」に所属し、メジャー系の作品に携わるチャンスが少なく、仕事がなくなった際に相談できる人脈の後ろ盾もない“非エリート組”としてキャリアをスタートしながらも、アニメーション業界でサバイバルした過去、サンライズでの経験など、数々の作品、関係者の名を挙げながらドラマチックな半生を振り返る。
また、様々なジャンルの作品を手掛けた監督として成功した理由として、「1つのセクションの仕事が100点満点だとしたら、アニメーション制作にかかわる全セクションに対して20点から40点ずつを取れるように。それを積み上げたら勝ち」と、企画、制作はもちろんのこと、音響、営業、宣伝にまで及ぶ多くのスタッフに対して耳を傾け、その仕事を理解することが重要だったと明かし、プロデューサー的視点を持って仕事をしている。コアなファン向けの作品の裏話をはじめ、国内興行収入200億円を超えた「ONE PIECE FILM RED」や、実写映画「室井慎次 生き続ける者」への参加の経緯、観客からの質問では「ガンダム」に対する自身の思いやスタンスも赤裸々に語りファンを喜ばせた。

スタジオジブリ作品でキャラクターデザインや原画を務めた近藤勝也と初タッグを組んだ、オリジナルの最新作「パリに咲くエトワール」の公開を3月に控えており、「自主映画みたいな感じで作り始めたんです、『プラネテス』のような脳みそをつかった作品」と紹介。これまでの仕事や経験で学んだ様々な技術を駆使した作品でもあり「ヨーロッパなど各地で上映させてもらえるとありがたい」と世界へ羽ばたくことを願い、「音楽は服部隆之さんにお願いし、オーケストラもしっかり使っている。劇場で見ていただけると嬉しいです」と呼びかけた。
倉田は、谷口監督のパワフルなトークの良き聞き手を務め、行き過ぎた表現には突っ込みを入れるなど、長年の信頼関係を感じさせるチームワークを披露。「ガン×ソード」で演じたファサリナの名セリフで観客の質問に答えるなど、会場を沸かせていた。

「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」(ANIAFF)は12月12日~17日、愛知県名古屋市で開催。チケットは公式サイト(https://aniaff.com/)で発売中。
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