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「兄を持ち運べるサイズに」あらすじ・概要・評論まとめ ~「兄を持ち運べるサイズに」というタイトルに込められた家族にしかわからない感情~【おすすめの注目映画】

2025年11月27日 08:30

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「兄を持ち運べるサイズに」
「兄を持ち運べるサイズに」
(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

近日公開または上映中の最新作の中から映画.com編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介!

本記事では、「兄を持ち運べるサイズに」(2025年11月28日公開)の概要とあらすじ、評論をお届けします。


【「兄を持ち運べるサイズに」あらすじ・概要】
画像2(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

湯を沸かすほどの熱い愛」「浅田家!」で知られる中野量太監督の5年ぶりとなる監督作。作家・村井理子が自身の体験をもとにつづったノンフィクションエッセイ「兄の終い」を原作に、絶縁状態にあった実の兄の突然の訃報から始まる、家族のてんてこまいな4日間を描く。

ある日、理子のもとに警察から電話が入る。それは、何年も会っていない兄が死んだという知らせだった。発見したのは、兄と暮らしていた息子の良一だという。「早く、兄を持ち運べるサイズにしてしまおう」。そう考えた理子は東北へ向かい、警察署で7年ぶりに兄の元妻・加奈子と、その娘・満里奈と再会する。兄たちが住んでいたゴミ屋敷と化したアパートを片づけていた3人は、壁に貼られた家族写真を見つける。そこには、子ども時代の兄と理子が写ったものや、兄と加奈子、満里奈、良一という、兄が築いた家庭の写真などがあった。同じように迷惑をかけられたはずの加奈子は、兄の後始末をしながら悪口を言い続ける理子に、「もしかしたら、理子ちゃんには、あの人の知らないところがあるのかな」と言う。これをきっかけに、理子たちはそれぞれに家族を見つめ直すことになる。

マイペースで自分勝手な兄に、幼いころから振り回されてきた主人公・理子を柴咲コウが演じる。家族を振り回す原因となるダメな兄をオダギリジョー、兄の元妻・加奈子を満島ひかりが演じた。兄と加奈子の娘で、両親の離婚後は母と暮らす満里奈役にnicola専属モデルの青山姫乃、最後まで兄と暮らしたもうひとりの子ども・良一役に、ドラマ「3000万」の味元耀大が起用された。


画像3(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
●「兄を持ち運べるサイズに」というタイトルに込められた家族にしかわからない感情(筆者:和田隆

人によって“家族”(=親子や兄弟姉妹)の形はさまざまで、強い絆で結ばれた家族があれば、そうでない家族もあったりする。それでも当たり前の存在だった家族の誰かが亡くなると、その形が急に揺らぎ、変化し、今まで見えなかった家族の姿が露呈したりする。しかもその死が突然となればなおさらである。「兄を持ち運べるサイズに」というタイトルだけを見たら、自分の家族の形によって人それぞれとらえ方が異なることだろう。

本作は、「チチを撮りに」「湯を沸かすほどの熱い愛」「浅田家!」などの作品で常に“家族”の姿を独自の視点から描いてきた中野量太監督の5年ぶりの最新作。作家・村井理子氏が自身の体験をもとにつづったノンフィクションエッセイ「兄の終い」が原作となっている。キャストには、柴咲コウ満島ひかりオダギリジョーという演技派が中野監督の脚本に惚れ込んで集結し、青山姫乃味元耀大という注目の若手が起用された。

画像4(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

疎遠になっていた兄の突然の訃報を受け、妹の理子(柴咲)、兄の元妻・加奈子(満島)らが、兄の人生のあと片付け、遺品整理、葬儀(火葬)のために再会して直面する事実と葛藤する数日間が描かれる。人生において多くの人が経験することになるであろう家族の死、それを見送る葬儀を通して、家族との関係と自身を振り返り見つめ直していくことになる。結局のところ兄とはいったいどんな人だったのか。自分の知らなかった家族の生前の人生や人間性を知った時、家族であってもその一面性しか見えていなかったことに気づき、人は何を思うかを問いかけてくるような作品だ。

他人である恋人、結婚した妻や夫、その間に授かった子どもに対する以上に、家族だからこそ近すぎて、愛情とともに何とも言えない憎しみを抱いてしまったりもする。それは家族にしかわからない、他人には理解できない感情なのだろう。マイペースで自分勝手な兄に、幼いころから振り回されてきた理子が、疎遠になっていた間の兄、自分の知らなかった兄の姿が見えてくるにつれて、憎しみや後悔という感情が変化していく様を柴咲が絶妙なグラデーションで演じている。また、その気づきにひと役買うことになる元妻・加奈子を演じた満島も、離婚したことで離れて暮らしていた息子への負い目に正面から向き合っていく“母”の姿というもうひとつのドラマに説得力を持たせている。

画像5(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

そして、映画が始まった時にはすでに亡くなっている兄をオダギリが“魅力的”に演じて、理子や加奈子らはもちろん、観客もこの兄に会いたいと思わせてくれる。身勝手で落ち着きがなく、迷惑ばかりかけるような稀にみるダメダメな兄だが、一方で子供や動物には愛情を注ぎ、実は家族思いの不器用な男。「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」で脚本・監督・編集・出演を務めるなど、俳優以外の活躍も目覚ましいオダギリにしかこの愛すべき役は演じられなかったのではないか。理子や加奈子らが思い思いの兄と再会するシーンは必見だ。

明日は自分に起きるかもしれない通過儀礼。愛する人や親しい人が亡くなった後に、あんなことをしてしまった、ああしてあげればよかったとか、もっと話をしたり、お酒を一緒に飲んでおけばよかったなどと後悔しないよう、映画を見終わったら、先延ばししないで一歩踏み出し、“家族”と素直に向き合ってみようと思わせてくれる。中野監督の温かな視線に溢れた新たな秀作が誕生した。

執筆者紹介

和田隆 (わだ・たかし)

1974年生まれ。映画業界紙の記者、編集長などを経て取締役に就任。キネマ旬報などに寄稿。2014年より映画.comで国内映画ランキング、新規事業などを担当。映画もプロデュース。


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