“言葉にならない痛み”を確かに知っている――「ひとつの机、ふたつの制服」製作陣が語る創作の背景【アジア映画コラム】
2025年11月9日 10:00

北米と肩を並べるほどの産業規模となった中国映画市場。注目作が公開されるたび、驚天動地の興行収入をたたき出していますが、皆さんはその実態をしっかりと把握しているでしょうか? 中国最大のSNS「微博(ウェイボー)」のフォロワー数270万人を有する映画ジャーナリスト・徐昊辰(じょ・こうしん)さんに、同市場の“リアル”、そしてアジア映画関連の話題を語ってもらいます!
昨年の釜山国際映画祭で鑑賞し、心を強く動かされた作品があります。
それが「ひとつの机、ふたつの制服」(日本公開中)。
一見すると淡く切ない青春映画のようですが、その奥には当時の台湾社会――教育格差や階層意識、そして“女の子であること”が抱える抑圧――が、透けて見えます。個人の揺らぎと社会構造が交錯する映画はそう多くありませんが、「ひとつの机、ふたつの制服」はそのひとつに数えることができる希少な1作だと思います。
今回は、90年代の台湾“夜校”という独特の背景をもとに、少女たちの痛みと再生を描いた本作について、ジャン・ジンシェン監督、脚本のシュー・フイファン、ワン・リーウェンの3名にお話をうかがいました。
それぞれの視点から語られる創作の背景には、懐かしさだけでなく、今なお続く問いが息づいていました。
Renaissance Films Limited (C)2024 All Rights Reserved.国立大学や大学院に進学しても、心のどこかで“私は本当にここにふさわしいのだろうか”という思いが消えませんでした。
成功しても、自分を完全には肯定できない。その小さな劣等感の根をたどるようにして、この脚本を書きました。言ってみれば、“書くこと”が過去の自分を癒やす行為だったんです。
読んでいるうちに、私もリーウェンも涙が出ました。とくに母親と娘の言い争いのシーンは、自分の記憶と重なって胸が痛くなりました。私たちの世代は、あの“言葉にならない痛み”を確かに知っています。
Renaissance Films Limited (C)2024 All Rights Reserved.製作前にはいくつかの学校の生徒にも取材を行いました。試験制度は変わっても、プレッシャーは今も変わらない。だから「ひとつの机、ふたつの制服」は、単なるノスタルジーではなく“現在の物語”でもあるんです。
Renaissance Films Limited (C)2024 All Rights Reserved.
Renaissance Films Limited (C)2024 All Rights Reserved.
Renaissance Films Limited (C)2024 All Rights Reserved.
Renaissance Films Limited (C)2024 All Rights Reserved.Renaissance Films Limited (C)2024 All Rights Reserved.
関連ニュース
「ひとつの机、ふたつの制服」あらすじ・概要・評論まとめ ~地震による破壊と再生が人間関係の崩壊と修復を対比させる~【おすすめの注目映画】
2025年10月30日 09:00
90年代生まれ中華圏の女性が「1リットルの涙」に心打たれ“日本の映像業界”に身を置くまで/原点から現在に至るまでの軌跡【アジア映画コラム】
2025年10月7日 13:00
映画.com注目特集をチェック
人生にぶっ刺さる一本
【すべての瞬間が魂に突き刺さる】どうしようもなく心が動き、打ち震えるほどの体験が待っている
提供:ディズニー
ブルーボーイ事件
【日本で実際に起きた“衝撃事件”を映画化】鑑賞後、あなたは“幸せ”の本当の意味を知る――
提供:KDDI
プレデター バッドランド
【ヤバすぎる世界へようこそ】“最弱”ד下半身を失ったアンドロイド”=非常識なまでの“面白さと感動”
提供:ディズニー
あまりにも凄すぎた
【“日本の暗部”に切り込んだ圧倒的衝撃作】これはフィクションかノンフィクションか?
提供:アニモプロデュース
盤上の向日葵
【「国宝」の次に観るべき極上日本映画に…】本作を推す! 壮絶な演技対決、至極のミステリー、圧巻ラスト
提供:松竹
てっぺんの向こうにあなたがいる
【世界が絶賛の日本映画、ついに公開】“胸に響く感動”に賞賛続々…きっとあなたの“大切な1本”になる
提供:キノフィルムズ