東京グランプリは満場一致で「パレスチナ36」 福地桃子と河瀨直美が最優秀女優賞に輝く【第38回東京国際映画祭】
2025年11月5日 20:30

第38回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが11月5日、東京・TOHOシネマズ日比谷で行われ、東京グランプリ/東京都知事賞に「パレスチナ36」が輝いた。
同作は1936年、英国委任統治時代のパレスチナを舞台に、パレスチナのアラブ人たちがユダヤ人入植者たちと、英国植民地支配への反発から起こした民族主義的な反乱を描いた。審査委員長を務めたカルロ・シャトリアンは、満場一致での受賞決定だと語った。
監督・脚本を手がけたアンマリー・ジャシルは、第38回東京国際映画祭に参加していたが、授賞式を前に帰国。ビデオメッセージを寄せ「初めての東京の滞在で、この映画を観客の皆さんに見ていただき、とても特別な気持ちです」と感謝の意。
続けて「映画祭でとても素晴らしい数日を過ごした後、審査委員から素晴らしい知らせをいただきました。このような賞をいただけて、チームにとっても私にとっても、この作品の制作に懸命に力を尽くしてきた全ての人たちにとっても、大きな意味を持つものです」と受賞の喜びを東京に届けた。

また、中川龍太郎監督の「恒星の向こう側」で、親子を演じた福地桃子と河瀨直美が、ふたり揃って最優秀女優賞に輝いた。余命わずかの母(河瀨)と、その関係性に葛藤を抱く娘(福地)の“喪失と再生”を詩的なビジュアルで描き出すヒューマンドラマだ。
福地はトロフィを手に「故郷での映画祭で、大切な作品を通して、携わったひとりとしてお話させていただけるのは、身が引き締まる思いで、とてもうれしく思っています」と挨拶した。

母の余命を知り故郷に戻った娘・未知を演じ、「未知という人物を見つめて、追いかけて、溶けあっていくような時間は、決してひとりで乗り越えられるものではなかった。多くの支えがあって、未知の内側にある言葉や感情が引き出された」と中川監督や現場のスタッフ、そして「圧倒的に温かな存在感」を持った河瀨に感謝を伝えた。
そして、「この先、自分がどんな風に年を重ねて、どんな役者さんになるのか分からないが、この経験を胸に、ひとつひとつの作品にまっすぐ向き合っていきたい」と決意を語った。

一方、自分に寄り添おうとする娘を拒絶し、衝突を重ねる母親・可那子を演じた河瀨は「難しい役柄でした」と述懐。共演する福地に対しては「カットがかかっても冷たい態度をとったり、衣装合わせからあまり話さなかったり、徹底した役積みをしたので、嫌われたかな?(笑)」と恐縮した表情だ。「でも、彼女の重さや温かさを背中に背負えた瞬間、自然に涙が溢れた」と話していた。
監督最新作「たしかにあった幻」(26年2月公開)には、今度は中川監督が俳優として出演しており、「表現者が立場を超えてコラボレーションし、どこかでつながり合っている。生きているそのことが、表現だと毎日噛みしめる」とさらなる挑戦に意欲を燃やした。

今年のコンペティション部門は2025年1月以降に完成した長編映画を対象に、108の国と地域から1970本の応募があり、審査委員長を務めるジャーナリスト、作家、プログラマーのカルロ・シャトリアンをはじめ、イ・ルンメイ(俳優)、マチュー・ラクロー(編集者)、齊藤工(俳優・監督)、ヴィヴィアン・チュウ(監督、プロデューサー)が審査委員として、コンペティション部門の全15作品を審査した。
「第38回東京国際映画祭」全受賞結果は以下の通り。
▼東京グランプリ/東京都知事賞:「パレスチナ36」(監督:アンマリー・ジャシル)
▼審査員特別賞:「私たちは森の果実」(監督:リティ・パン)
▼最優秀監督賞:アレッシオ・リゴ・デ・リーギ、マッテオ・ゾッピス(「裏か表か?」)、チャン・リュル(「春の木」)
▼最優秀女優賞:福地桃子、河瀨直美(「恒星の向こう側」)
▼最優秀男優賞:ワン・チュアンジュン(「春の木」)
▼最優秀芸術貢献賞:「マザー」(監督:テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ)
▼観客賞:「金髪」(監督:坂下雄一郎)
▼アジア学生映画コンファレンス作品賞:「フローティング」(監督:イ・ジユン)
▼審査委員特別賞:「エンジン再始動」(監督:チョン・ヘイン)
「永遠とその1日」(監督:チェン・リーシュエン)
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