「栄光のバックホーム」主演・松谷鷹也、天国の元阪神・横田慎太郎さんに思い馳せ涙【第38回東京国際映画祭】
2025年11月1日 19:00

阪神タイガースの元選手で、2023年に死去した横田慎太郎さんの実話を映画化した「栄光のバックホーム」のワールドプレミア上映が11月1日、開催中の第38回東京国際映画祭で行われ、主演の松谷鷹也と鈴木京香をはじめ高橋克典、前田拳太郎、山崎紘菜、加藤雅也、製作総指揮を務めた幻冬舎・見城徹社長、秋山純監督が舞台挨拶に立った。
阪神にドラフト2位で入団するも21歳で脳腫瘍と診断され、過酷な闘病の日々を送り、23年に亡くなった横田さん。彼の人生と母親をはじめとする彼を支えた人々の姿を描き出す。
本作は幻冬舎フィルム第1回作品となったが、製作総指揮の見城社長は「74歳になりました」と切り出し「僕の人生の最後のバックホームを栄光で飾ることはできるだろうか? と思いながらこの映画をつくっていました。映画を作ろうと思ったのは3年ぐらい前です。その間、毎日、人々の胸に届くだろうか? 客は入るか? 横田慎太郎はうなずいてくれるだろうか? そんな不安と恐怖で眠れぬ夜を過ごしてきました」と振り返り、完成した映画について「何回観ても涙が止まりません。良い映画ができたなと思っています」と自信と手応えを口にした。

映画の企画は横田さんが存命中に動き出しており、松谷は、生前の横田さんとも交流を結んでいた。映画が完成し、改めて横田さんへの思いを尋ねられ「出会って4年くらいになりますが 一緒に歩んできた4年というのは僕にとって宝物のような時間です」と語り、熱い思いが込み上げてきたのか、壇上で涙を流した。そして「ひとりでも多くの人に慎太郎さんのことを知ってもらえるように、自分も公開までできること全力でやっていこうと思うので、引き続き見守っていただけたら嬉しいですと伝えたいです」と力強く語った。

横田さんの母親を演じた鈴木は、壇上でも劇中さながらに松谷に寄り添い、温かいまなざしを向ける。鈴木は「オファーをいただいたとき、野球一筋に一生懸命打ち込んできた青年のお母さん――志半ばで病と闘わざるをえなくなった慎太郎さんのお母さんが、私に務まるだろうか? と思いましたが、慎太郎さんの清らかで一生懸命な生き方に感動して『ぜひやらせていただきたい』と伝えました」と語る。

高橋は元プロ野球選手でもある慎太郎の父親を演じたが、プロの厳しさを知るがゆえに愛する息子が野球をすることに複雑な思いを抱く父親像をつくり上げる上で「一歩引いたところで家族を守る――そういう人生にスイッチした人なので、現場で(松谷と)目が合ってもできるだけしゃべらなかった」と述懐。映画の中で、鈴木扮する妻から「何をやってもあんたは中途半端」と厳しい言葉を投げかけられるシーンがあるが「それは男としても、自身としても突き刺さり、ぶっ刺さりました…(苦笑)」と語り、会場は笑いに包まれた。

山崎は横田さんの姉を演じたが「実は、家族がそろうシーンは意外と少ないし、撮影期間もわずかでした」と明かし「家族が大事な作品なので、その中でどうやって家族の空気感を出したらいいか? 物理的な距離を近くしようと、京香さんにグイグイ近づいたり、ハグしたりしました。京香さんに『申し訳ありません。大丈夫ですか?』と言ったら『全然いいからどんどんきて!』と言っていただけてホッとしました。病室の前でお母さんと話をするシーンで、後半にお父さんが来て、ハグをするんですが、それも台本にはなくて、私が勝手にハグしたんですが、高橋さんはガッと受け止めてくださって、懐の深い家族の下でお芝居できて嬉しかったです。短い時間ですが、2人の娘でいられて、慎太郎のお姉ちゃんになれて幸せな時間でした」と充実した表情を見せた。
前田は、阪神での横田さんの先輩である北條史也を演じたが、前田自身は野球経験はほぼゼロ。撮影期間中は元高校球児の松谷と一緒に練習に打ち込んだそうで「鷹也さんが休憩時間も一緒に付き合ってくれたし、休みの日も一緒に早起きして練習しました。鷹也さんの作品にかける思い、引っ張ってくれる背中を見て、不安や自信のなさもあったけど『向かっていかないと』という思いでやらせていただきました」と語る。ちなみに、松谷は高校時代にピッチャーとして北條選手と対戦した経験があり「ホームランを打たれました…(苦笑)」とのこと。

そして、阪神の監督で“鉄人”、“アニキ”と親しまれる金本知憲を演じた加藤も野球経験なし。そんな加藤に監督からは「加藤さんは、監督じゃなく“アニキ”でいてください」との指示があったそうで「現場でみんなとコミュニケーションを取るようにして、食事シーンでもみんなに話しかけて、(役を)つくっていきました」と明かした。
舞台挨拶の最後に、鈴木は「素晴らしい、清らかに生きた横田慎太郎選手と、彼を大切に思った周りの人たちの素敵な実話です。多くの人に広がりますように祈っています。みなさん、どうぞよろしくお願いします」と呼びかけ、温かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
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