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押井守監督作品で兵藤まこが演じる役はいつも同じ 40年前の「天使のたまご」収録を振り返る

2025年10月31日 13:00

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押井守監督、兵藤まこ
押井守監督、兵藤まこ

第38回東京国際映画祭のアニメーション部門で10月30日、「天使のたまご」4Kリマスターがジャパンプレミア上映され、押井守監督、少女役の声を演じた兵藤まこが会場のTOHOシネマズ シャンテで上映後トークショーを行った。

同作は、押井守が原案・脚本・監督、天野喜孝が原案・アートディレクターを務めた1985年発売のOVA。公開40周年を迎えた2025年に押井監督の監修のもと4Kリマスター化され、第78回カンヌ国際映画祭のカンヌクラシック部門で上映された。

「40年の長きにわたりこの作品を守り続けてくださったスタッフの皆様をはじめ、ファンの皆様に心から御礼を申し上げます」と挨拶した兵藤は、「天使のたまご」が初めてのアニメ声優の仕事だった。声の収録は夜8時からスタートして深夜2時までかかったことを振り返り、押井監督に「初めてとはいえ、ほんとにご迷惑をおかけしました」と話しかけた。
兵藤が少女役に起用されたのは音響監督の斯波重治氏からの推薦で、オーディションのテープを聴いた押井監督は即決。その後、兵藤本人に会った押井監督は声から想像していた姿とまったく違ってあまりにもきれいだったことに驚き、「今度は映画の仕事をしませんか」と「速攻で誘った」という。役者としての兵藤の魅力を訊かれた押井監督は、「ひと言でいうとミューズだった。映画監督ってだいたい自分のミューズがいるんですよ。僕にとっては、彼女がそういう存在だった」と照れ臭そうに答えた。
兵藤は、押井監督が初めて手がけた実写映画「紅い眼鏡」でも少女役を演じている。その後も押井監督作品に俳優や声優として参加するなかで、兵藤から「自分が演じる役は幻影や幽霊など生活感も現実味もない特殊な役ばかり」「セリフも少ない」と強硬に言われたことがあったと押井監督は笑う。兵藤は苦笑しながら、「セリフが少ない仕事ほど難しいものはないんです。ひと言ですべてを表現しなくちゃいけない」と、壇上でもユーモアを交えながら押井監督にやんわり抗議する一幕もあった。

押井「たぶん彼女にやってほしかった役というのはいつも同じで、『現実にいない誰か』なんです。『天使のたまご』の少女も『誰かの記憶の中の誰か』であって、それは少年も(舞台の)街自体もそうで、全部誰かの記憶なんだっていうね。実際には誰もいない街に雨が降っているだけなんだっていうようなことを言った記憶があります」

兵藤は、「ここは雨もふらないし、あたたかくて」という少女のセリフは短いながらも心をこめて語ることができたと振り返り、押井監督は、少女が少年に問いかける「あなたはだあれ」がもっとも大事なセリフだったと解説した。少女自身が自分を誰だか分かっていない自問するようなニュアンスも出したかったそうで、少女は自分の存在自体を問う実存的な人物でもあったため「とても難しいセリフ」で、収録では「どうしても違うんだということで、たしか何十回も演じてもらった記憶がある」そうだ。

天使のたまご」で少女が唯一感情を爆発させて悲鳴をあげるシーンは、押井監督は少女のセリフはなしでいいと考えたが、音響監督の斯波氏からの「一応録っておきましょう」という提案で演じてもらったのだという。その際、何回も演出をうけて最後は本当に泣いてしまったことを明かした兵藤は、「いろいろな思いがあったと思うんです。あの嗚咽は本物です」と微笑んだ。押井監督は、「ちょっとね……(収録現場が)凍りついた。すごかった」と悲鳴のシーンの収録を回想しながら、「今思えば録っておいてよかった。素晴らしかったです」と称賛していた。

トークショーの最後には押井監督から、「40年前の作品なので、この作品にかかわった重要な方たちがだいぶ鬼籍に入られました」と、キャストの根津甚八さん(少年役)、スタッフの小林七郎さん(美術監督)、保田道世さん(色指定)、二木真希子さん(原画)の名前を挙げながら、「もしあの方たちが生きていれば、今日の日をたぶん喜んでくれたと思います」とも語られた。

「40年前の作品がこういうかたちで世にでるとは思ってもなかった」と終始うれしそうな表情を浮かべていた押井監督は、「またスクリーンで見ていただけるようになって、ありふれた感想かもしれないですけど感無量です。この作品を忘れずにいてくださった方々すべてに感謝したいと思います。ありがとうございました」と観客にお礼の言葉を述べて、トークショーは幕を閉じた。

第38回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。「天使のたまご」4Kリマスターは、11月14日からドルビーシネマ上映で先行公開、11月21日から全国で順次公開される。

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