毎日400回スクワット→富士山頂の撮影に挑戦! 阪本順治監督「てっぺんの向こうにあなたがいる」秘話を明かす
2025年10月3日 13:00

吉永小百合の通算124本目の映画出演作で、世界最高峰のエベレストに女性として世界初登頂した田部井淳子さんの生涯を描いた「てっぺんの向こうにあなたがいる」(10月31日公開)。このほど、メガホンをとった阪本順治監督の新たなコメントが披露され、製作秘話が明かされた。
“女性だけで海外遠征を”を合言葉に女子登攀クラブを設立し、1975年にエベレスト日本女子登山隊の副隊長兼登攀隊長として、 世界最高峰のエベレストの女性世界初登頂に成功した田部井さんは、生涯で76カ国の最高峰・最高地点の登頂を成功させた。映画では、その勇壮な生涯を壮大なスケールで描く。
スペイン最大の国際映画祭「第73回サン・セバスティアン国際映画祭」のスペシャルスクリーニングも盛り上がり、今後は第38回東京国際映画祭のオープニング上映も控える本作。阪本監督は、山での撮影のこだわり、脚本、撮影手法などの秘話を語っている。
詳細は、以下の通り。
(C)2025「てっぺんの向こうにあなたがいる」製作委員会夏になると富士登山のニュースが取り上げられて、多くの人が登っている様子が報じられているので、自分も大丈夫だろうと思っていました。ただ、「エルネスト」の準備段階で、富士山より高いボリビアのラパスを訪れた際、高山病になったことがあるのと、年齢的な体力の不安もあったので、スクワットを朝・昼・夜で計400回位やるようにしました。
2年前に富士山に初めてチャレンジした時には、足腰ではなく、呼吸が苦しくなってしまい八合目で断念しました。その後、呼吸法、登山靴の選び方や、重心の取り方などを勉強して、さらに田部井淳子さんの息子さんである進也さんたちに励ましてもらいながら、頂上からの景色を無事に撮ることができました。
まずルールとして、登山をされている方の邪魔をしてはいけない。皆さん自分のリズムで登られているので、撮影を理由に制するなど邪魔をしないことが前提にあります。
そして、僕自身も含めて山という環境に慣れていないキャスト・スタッフの方も大勢いらっしゃるので、慣れない環境でケガや病気などにならないように気を配るのがプロデューサー陣と私の仕事だと思いました。座長の吉永小百合さんに対してもそうですし、吉永さん自身にもそういう気持ちで臨んでいただいたと思います。
機材の運搬に関してはブルドーザーで運ぶという方法もあったのですが、カメラなどの精密機材が振動に耐えられない可能性も考慮し、結局スタッフが背負って運搬しました。機材と共に山小屋に宿泊するスタッフは風呂無しの環境で過酷だったと思います。閉山後の富士山は気温もぐんと下がるので、全員登れるかというより、全員無事に下山出来るかということに気を配りました。下りるときの方が油断しがちなので。また、富士山撮影に参加する人たちは、低酸素室での高度順応テストを受けて臨みました。高山病になったときの呼吸法なども学んだ上での撮影でしたね。
(C)2025「てっぺんの向こうにあなたがいる」製作委員会坂口さんはご夫婦で登山家なので、専門用語など教えていただく部分も多くありました。田部井淳子さんの人生を2時間に収めるということで、ご本人の直筆資料なども踏まえて、女性世界初のエベレスト登頂という偉業だけでなく、その背後にあった苦悩や軋轢も描こうと決めましたが、実在する人の話なので、誰も傷つけることのない様にもしたい。そういうことを相談しながら作り上げていきました。
方法論としては、過去パートをセピアにするとか粒子感を変えるなどはあると思うのですが、そのようなことはやめようとなり、地続きの物語なので過去にあった話で終わりではなく、あえて分割した感じは出さないようにしました。吉永さん、のんさんは同じキャラクターを演じるということで、田部井淳子さんの気質のなかからヒントになる言葉をお二人にお伝えして、共通した意識で演じてもらえるようにしました。現代パートの撮影が先だったので、参考になるようにのんさんには吉永さんが純子を演じている様子を、工藤さんには佐藤さんが正明を演じている様子を見ていただき、それぞれのキャラクターを実感しながら演じてもらいました。
田部井進也さんには富士山や立山など、山の撮影に山岳アドバイザーとして参加いただいたのですが、吉永小百合さん演じる多部純子に「母を感じました」と仰っていただきました。実在の人物・エピソードを基にしながらもフィクションであるということに理解をいただいたうえで「あとは託します」と言っていただけたので、大変有難かったです。
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