兄貴分・北村匠海に支えられて… 「愚か者の身分」林裕太、釜山国際映画祭で感謝を語る
2025年9月24日 13:30

北村匠海、林裕太、綾野剛が共演し、第30回釜山国際映画祭のメインコンペティション部門に出品された逃亡サスペンス「愚か者の身分」。林、永田琴監督、森井輝プロデューサーが、9月18日に行われたワールドプレミアの舞台挨拶および上映後のQ&A、同19日の記者会見に登壇し、作品について語った。

本作は、永田監督と、Netflixドラマ「今際の国のアリス」シリーズや「幽☆遊☆白書」などを手がけたプロデューサー集団「THE SEVEN」が、「マルチの子」の西尾潤氏のデビュー作で、第2回大藪春彦新人賞を受賞した同名小説(徳間文庫刊)を映画化するもの。貧しさから闇ビジネスの世界に足を踏み入れ、抜け出せなくなった3人の若者たちの運命と、友との絆を描く。
SNSで女性を装い、言葉巧みに身寄りのない男性たち相手に個人情報を引き出し、戸籍売買を日々行うタクヤ(北村)とマモル(林)。彼らは劣悪な環境で育ち、気付けば闇バイトを行う組織の手先になっていた。闇ビジネスに手を染めているとはいえ、時にはバカ騒ぎもするふたりは、ごく普通の若者であり、いつも一緒だった。タクヤは、闇ビジネスの世界に入るきっかけとなった兄貴的存在の梶谷(綾野)の手を借り、マモルとともにこの世界から抜け出そうとする。


キャスト陣は、9月17日に開幕した同映画祭のオープニングのレッドカーペットに登場。そして翌18日には、メイン会場であるBusan Cinema Center Haneulyeon Theaterでワールドプレミアが行われた。自身のフィルモグラフィについて質問を受けた永田監督は、「いままでの作風と今回の作風がガラッと変わりました。本当にいま日本の問題を自分のなかでしっかりと捉えたいという思いと、今後自分のキャリアのなかでも再デビューのつもりでこの映画を作りました」と、心情を吐露。岩井俊二監督の助監督を務めていた経験に話がおよぶと、「厳しく努力家の方なので、本当に人としても学ぶことが多かった」と振り返った。

出演作「HAPPYEND」が最近韓国でも公開された林は、撮影を回想し、「すごく北村匠海さんと綾野剛さんが僕に対して優しくしてくださったこと」が印象的だったと語る。「北村さんとは何度もご飯に行って、本当に、劇中の役の設定通りのふたりみたいな関係を築くことをやっていました。それがすごく記憶に残っています」と明かした。


上映後のQ&Aで、林には「演じる上で難しかったこと、NGが続いたことは?」という質問が寄せられた。林は「撮影初期はNGが多かったです。複雑な背景を背負う役に入り込みすぎて身体が硬くなり、自由に演じられず苦戦しました」といい、「監督や匠海くんがケアしてくれて、次第に心身ともにほぐれ、自由に演じられるようになった」と、感謝を口にした。
さらに「撮影内外でも兄貴分である共演者から支えてもらったことは?」という問いに、林は、「特に匠海くんには演技でもプライベートでも支えてもらいました」と回答。林が無意識に見せた演技の仕草を、北村が「俺それすごい好き」と褒めてくれたそうで、「心が穏やかになり、助けられていると実感しました」と、笑顔を見せた。

翌19日に行われた記者会見では、今年から新設されたメインコンペティションの注目度を象徴するように、記者たちの熱意溢れる質問が次々と飛び交った。闇ビジネスというハードな世界を女性監督が描くことについて、永田監督は「最初は意識していなかった」としつつ、「エンタテインメント性がありながら社会性のあるものを作りたいという思いだけがあって、完成していくにつれて、『こういう題材を扱う女性がいるんだ』と周囲から言われ、『そうだったんだ』と逆に自分も気付かされました」と述懐する。
さらに「男性監督が手がけるサスペンスを見ると、数多くのエピソードの間にアクションが挟まれていて、スピード感やスリル、登場人物の人間性が見えないまま激しいアクションが求められることが多いのかな?と、感じていました。私はやはり、そこにも人の感情が必要だと思っています」と解説した。
オーディションでマモル役に決まった林の第一印象や決め手について、林監督は「彼は切れ長の鋭い目を持っていた」と、まずそのビジュアルに強く惹かれたことをコメント。マモルは、警戒心を抱えながら誰を信じるかを模索していく繊細なキャラクターであり、オーディションで林が見せた演技が決め手となったという。「マモルが初めてタクヤからコンビニのパンを投げてもらい、心を許していく場面があるのですが、そこに垣間見える“人への警戒心”や、少しハングリーな雰囲気がとても合っていました。さらにタクヤ役の北村さんとの顔立ちのバランスも違いがあって、そこも魅力的だと思いました」と話した。
マモルを演じる上でのアプローチについて、林は「(肉親からのDVやさまざまな不遇な環境で暮らしながらも)マモルは『飯が食えて雨風がしのげればそれでいい』と思っている節があるんですけど、それでいいから生きていきたいという力強さがあって、そこがとてもいいなと思った」「その強さが彼の根幹にあることは、演じていくなかでも変わっていないというか、ずっとそのイメージがずっとあった」と語る。
そして「物語が続いていくなかで起こるマモルの心境の変化や、タクヤからもらった幸せを享受して、でも、それを失いかけた時、マモルはどうするのか? この先も生きていられるんだろうかと考え、監督と話しながら、うまくたどり着けるようにしました」といい、永田監督も「人に対する警戒心をしっかり表現できる俳優だと感じました」と、称賛を送った。

さらに永田監督は、現代の日本の格差社会についても言及。「日本は海外の人から『平和で美しい街』『ゴミが落ちていない国』と見られがちですが、実際には国内にも格差社会が存在します。若い世代も経済的な貧困だけでなく、精神的な貧困にも苦しんでいると思う。結果として、理由もわからないまま犯罪に巻き込まれるケースがあることを知ってほしい。そうした思いもあって、この映画を作りました」と、メッセージを託した。
本作は、アジア各国から選ばれた計14のコンペティション作品とともに、最優秀作品賞を含めた5つの釜山アワードをめぐって競い合う。結果発表と授賞式は9月26日を予定している。「愚か者の身分」は、10月24日に全国公開。
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