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令和の今とはこんなに違う、昭和・平成の映画館マナー

2025年9月19日 10:00

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昭和や平成の映画館はどんな鑑賞マナーだった?
昭和や平成の映画館はどんな鑑賞マナーだった?

「いつでも入退場可、一日中いてもOK」「他の客から『そこ空きますか?』」「飲酒・喫煙・トイレ臭」「通路に座布団」「上映禁止の国から…」

例年にも増して酷暑となった2025年の夏、その影響もあってか映画館を含む屋内娯楽が好調に推移しており、消費額は昨年比で20~30%増という予測も出ている。実際に今夏の映画界は、邦洋のアニメ、SFやアクション大作の続編、ヒーローものや日本の古典芸能に切り込んだ作品などバリエーションも豊かで、家族連れだけでなく、さまざまな客層で賑わっている。そんな活況の中でSNSを中心に盛り上がっているのが、鑑賞マナーに関する議論だ。そこで現在に比べ、昭和や平成の映画館はどんな鑑賞マナーだったのか、識者の方々に話を伺った。

AさんとBさん
AさんとBさん

まずは1970年代から映画館に通っていたという長年の映画ファンで、仕事仲間であるAさんとBさん。Aさんは子供の頃、出身地の愛知県岡崎市Y町に存在した映画館に通っていた。「若大将にゴジラ、ガメラなどのシリーズをよく見ましたね。あと大魔神とか。当時は各回入替制ではなく流し込み制だったので追い出されない。確か、3本立てで入場料は350円くらいで、1日中いたこともありました」

Bさんは横浜の出身。私鉄大手が運営する横浜駅にある映画館や、かつて映画街といわれた馬車道周辺、さらには渋谷にまで足を伸ばして映画を楽しんでいた。「上映中の入退場は常識でしたね。途中から入ってラストまで見て、次の回の同じシーンまで見たら出ていく、なんて見方も普通でした。座席予約なんてロードショー館でももちろん無いシステムなので、ラストが近づくと通路ににじり寄ってきたお客さんに『(この回が終わったら)その席、空きますか?』なんて小声で話しかけられたり」

当時は学生で食べ盛りだったAさんは「家から弁当を持って行って場内で食べていましたね。授業をサボって。それから座席でタバコを吸う人も多く、場内は煙たかった。昔の床は絨毯じゃなく硬い材質だったので、みんな吸い殻を床にポイ捨てしていましたよ。アルコールの持ち込みも普通に行われていて、酒臭いお客さんもいました。それから座席はビニール張りのシートで、ひび割れたり破れたりしていることもありました」

Bさんはすぐそばに映画館がある環境だったが故に、系列によっての違いも感じていた。「ある系列の劇場はおしなべて広くて綺麗、トイレも清潔でしたが、別のチェーンの劇場はどこも汚くてトイレの匂いが場内にまで漂ってくる、なんてことも。そんな中、渋谷にあった東急文化会館(現ヒカリエ)は4館入っていましたが、全部がクリーンで管理が行き届いていました」

2人とも、映画は現在よりもっと身近な娯楽だったと語る。時間など気にせずフラッと入りフラッと出ることができたし、席の移動も自由。内容が難しい文芸作品や、ヨーロッパ発の大人向けの際どい作品を中学生だった自分が1人で見に行っても、学生証の提示なども要求されなかったという。ただし、スクリーンに話しかけたり叫んだり、上映終了後に拍手をするといった客には、当時からあまり遭遇しなかったとのこと。いい意味で時代の緩さが感じられる対談だった。

次は、かつて中央線沿線にあった映画館に勤務していたCさん(男性)に話を聞いた。時代は平成が始まったばかり。1990年代半ばか2000年代初めまで在籍して、上映作品の選別から接客など、運営全般を担当していた。

Cさん
Cさん
―その頃はもちろんネット予約といったシステムは無かったため、整理券を配っていたんですよね?
「はい、開館当初から各上映回の整理番号制を採用していました。作品によっては早朝の開館前から並んでいる人もいましたね。時間になったら番号順に呼ぶので座席指定はなく、ある程度は立ち見も可能でした。チケット購入時に整理券を配布するので、混雑はしても混乱するようなことはなかったです」
―人気の作品には傾向がありましたか?
「伝説的な女性監督や天安門事件にまつわる3時間超のドキュメンタリー映画など、長時間の上映作品でも、人気があれば立ち見客も出ました。トークイベントやエッジの立った監督の特集上映も同様で、立ち見はもちろん、通路に座布団を敷いて座って見てもらったりしました」
―当時の映画館ではフィルムでの上映だったと思いますが、どんなトラブルがありましたか?
「名画座では古い映画が多いので、フィルムが切れる、巻き方を間違える、裏表を間違える、音声が出ない、などのトラブルがあって上映が滞ったり、その回は中止になることもしばしば発生しました。デジタル素材の現在ではあり得ない事態です。お客さんも多少慣れがあるのか、静かに待っていましたね」
―勤務期間中にその映画館で起きた事件について教えてください。
「主に2つの事件がありました。一つは従軍慰安婦をテーマにした韓国映画の上映時に、政治団体の構成員が館内で消火器を噴射した事件。二つ目は北朝鮮関連のドキュメンタリー上映時に、同国の飛翔体発射に抗議した人が塗料を劇場前のガラスケースにぶちまけた“赤ペンキ事件”でした。両方ともケガ人などは出なかったんですが、後片付けが大変でしたね」

Cさんからは逆に観客に接していた立場での話を聞くことができた。運営しての体験から、中央線沿線という地域性や、そこに連動した観客層を考慮した作品選びの重要性を感じたという。また、前述の事件や、遅れて来場したり、ロビーで騒いだりして他者に迷惑をかける客への対応が難しかったと語っており、現在のカスハラ対策と似た事象が30年前から起こっていたことには驚かされた。

最後は1951年開館、75年から2本立て上映のスタイルを開始し、東京でも屈指の歴史と個性を持った名画座として知られる早稲田松竹の平野大介さんにお話を伺った。平野さんは94年の同館リニューアルオープン時に入社し、現在は支配人として劇場の運営にあたっている。

早稲田松竹の映写機
早稲田松竹の映写機
―現在の指定席システムはいつから導入されましたか? また、それによって客層に変化は?
「コロナで休館した後、営業再開の時点から指定席制を導入しました。すべて窓口での対応で、座席表を見て好きな席を選んでもらい、スタッフがチェックするアナログな方法です。導入後も客層に大きな変化はありません。それまで来てくださったお客さんは引き続きお越しいただいています。営業再開の初日にぶっつけ本番で指定席制を始めましたが、比較的スムーズに移行できましたし、クレームなども今のところありません」
―お客さんの男女比や年齢層、傾向などはありますか?
「男女比は6:4くらいで男性が多いです。年齢層は作品によって変わりますが、平日の午前中は8割がシニア層です。学生さんは最近減っています。うちはお客様の好みや過去の上映実績を考慮し、映画館のカラーや特色を大事にしています。あまり逸脱しないようにしていますが、たまにハリウッド作品もかけることがあります。『スパイダーマン』などのヒーローものをやったりしました。アニメ映画を上映すると、当然ですが若いお客さんや学生さんが増え、グッズ販売なども行います。かつてはアンケート用紙を設置して上映希望作品のリクエストも受け付けていましたが、コロナ禍以降は一旦お休みしています」
―こちらの劇場は70年以上と歴史も長いですが、地域との関わりはありますか?
「商店街の組合に加入しており、町内会にも入っています。ここは町の文化的な象徴として認識されています。2017年にはイレギュラーな企画ですが、早稲田を舞台にした『BanG Dream!(バンドリ!)』というアニメの舞台挨拶付き上映イベントを、地元繋がりの縁で実施しました」
フィルム編集機
フィルム編集機
―ラインナップで洋画と邦画の割合はどのようになっていますか?
「理想としては、1ヶ月単位でアメリカ、ヨーロッパ、日本、アジアなど様々な国の作品をバランスよく上映したいと思っています。基本的には旧作を2本立てで上映していますが、ネット配信が盛んになったことと、若いお客様が減少する状況には共通点があるように思います。もともと35ミリフィルムの上映は全体の2割程度ですが、最近は4Kリバイバル公開も多いので、そういったものも手掛けています。場所柄学生さんが多く、彼らは4、5年で顔ぶれが一新されるため、いわゆるゴダールのような有名だけど見たことがない監督の作品は安定した人気がありますね」
―映画館のマナーは昔と比べてどう変わりましたか?
「昔から場内禁煙で、現在はアルコールも禁止しています。お客様は映画に集中される方が多く、トラブルは少ないですが、上映中にスマホを使用する人がいると、他のお客様が自ら注意されることがあります。それでも止めない場合はスタッフに通報されますね。それから時代を感じるのは、古いフィルムを上映した時、画面の傷に対してクレームが入ることがあります。デジタル上映に慣れているため、フィルム特有の引っ掻き傷や汚れが付くことを知らない若いお客様も多く、その場合はこちらからご説明しています」
―他にはどんなお客様がいますか?
「最近はインバウンドのお客様も増えています。例えば『さらば、わが愛 覇王別姫』のような中国国内で過去に公開が禁止されていた作品を上映する際には、中国からのお客さんが多く来場されました。特にアナウンスをしなくても顕著に動員が増加するので、こういった情報を共有するコミュニティがあるようです」
―最後に映画館の建物について教えてください。
「ここは上映を目的とした純然たる映画館という珍しい建物で、74年の歴史があります。外観はほとんど変わっていませんが、2011年にはデジタル化、内装はリニューアルを施し、完全に異なります。椅子は2019年に新しくしました」

開館当初からほとんど変わらない外観で、高田馬場の歴史を今に伝える存在である早稲田松竹。今では珍しいフィルム上映が手軽に楽しめることでも貴重だ。映画好きならぜひ一度訪れてほしい。

昭和・平成から令和へと移り変わる中で、映画館の姿や鑑賞マナーも大きく変化した。かつての自由で雑多な空気も、今の快適で秩序ある環境も、それぞれが時代を映す文化の鏡といえよう。変わらないのは、暗闇の中でスクリーンを見つめる時の高揚感。映画館はこれからも人々の記憶と体験を刻み続ける場であり続けるだろう。

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