市川染五郎、現代劇ドラマ初挑戦→松たか子に通じる“第3の目”開眼 西島秀俊「美しさを感じました」
2025年8月13日 13:43

「告白」「母性」などで知られるベストセラー作家・湊かなえ氏が、デビュー15周年を記念して書き下ろした小説を実写ドラマ化した「人間標本」の制作発表会見が8月13日、恵比寿のウェスティンホテル東京で行われ、西島秀俊、市川染五郎、湊かなえ、廣木隆一監督が登壇した。
“イヤミスの女王”として名高い湊氏が10年来温めてきた「親の子殺し」というセンセーショナルなテーマをもとに、極上のミステリーサスペンスとして映像化した本作。ステージに立った西島が「湊先生の傑作小説がドラマになりました。見応えのある、最後まで先が読めない素晴らしいドラマが完成しました」と自負すると、染五郎も「今回初めて現代劇のドラマに出演させていただきまして。役者として新鮮で、そして濃密な撮影期間を過ごさせていただきました。ようやくこの日を迎えられたことをとても感慨深くうれしく思っております」と晴れやかな顔をみせた。

デビュー当時から温めてきた「親の子殺し」というテーマについて、「成長して、エンターテインメントとして楽しめるようになるまで書いてはいけないなと思っていた」と振り返った湊氏。「『告白』のときからずっと、いろんな形で問い続けてきた『人は同じものを見ているのか』というテーマ。そしてわたしはずっと母と娘の話を多く書いてきましたが、今回は父と息子の物語。こういったたくさんのことに挑んだ作品でした」と語った。
並々ならぬ意欲をもって送りだした本作が実写化されるにあたり、「こうして文字で表現したものを一番絵で見てみたいと思っていたのは自分自身でした」という湊氏。映画「母性」に続く廣木監督とのタッグに「こんな幸せなことはないと、飛び上がって喜びました」と語ると、「わたしは廣木監督を尊敬しています。廣木監督は役者さんの内なる演技を映し出すことにとても評価が高いんですが、それと同じぐらい背景を撮るのが本当に美しい。どこで切り取っても絵画のような画がつながっているので、すごく滑らかで、ストレスなくこの世界に入っていける。“役者の廣木”、そして“背景の廣木”だと思っています」と全幅の信頼を寄せている様子だった。

一方の西島も「すぐに企画に飛びつきました」というが、実際に撮影の準備を進めると、その構造が非常に難しく感じたという。「おそらく皆さん、見終わった後に、あの時はどうだったんだろうと見返したくなるような作品だと思うんですが、そういうことを最初から考えていかないといけなくて。そこは廣木監督の演出にお任せしました」と振り返る。
現代劇ドラマが初だという染五郎は、オファーを受けた時を「自分にとっても大きな挑戦になるだろうという感覚でいましたが、湊先生の原作が純粋に面白いなって思ったのと、また廣木監督の現場に取り組んでみたい」と述懐。「わたしの叔母の松たか子が湊先生原作の『告白』という作品の実写化で主演をしておりまして、そういった意味でもとてもご縁を感じたということもありました」と付け加えた。


今回共演した染五郎について、西島は「演技を見ていても、背筋がスッとまっすぐ通っているような美しさを感じましたし、ものすごく素直なんです。それが歌舞伎と通じるものなのかは分かりませんが、自分の中で起きてることに、正直にその場にいるということを徹底しているように見えました」という印象を抱いたという。
対する染五郎も「西島さんは、現場の真ん中に立つとはどういうことなのかということを近くで学ばせていただきました。台湾ロケや、天気があまり良くない日などもあって、バタバタしているような現場もあった中で、真ん中にドンといらっしゃって。引っ張ってくださった。終始、現場での居方、役者としてどう存在したらいいのか、という根本的な部分を常に気づかっていただいて。教えていただきました」と語った。

ふたりの演技について質問された湊氏は「1話が開始した10分ぐらいの、西島さんの表情を見ただけで、何かすごいことが起こっているぞと引き込まれていった」と語ると、さらに染五郎について「先ほど松たか子さんの名前が出ましたが、『告白』の最後の場面で、歌舞伎好きな元担当編集者の方が『松さんはここ(眉間のあたり)に第3の目を持っていて。眉間で表情とか、感情とかの演技をしてらっしゃる』と言っていて。当時、わたしはそれがまだよく分かってなかったんですけど、今回、染五郎さんのラストの場面を見て、『こういうことなのか』と分かった気がします」としみじみとコメント。かみ締めるように「おふたりからは、黙っている時の演技こそ、人物の内面がにじみ出てるんだなということを教えていただいた」と付け加えた。
「人間標本」は、12月19日よりPrime Videoにて独占配信。
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