【世界の映画館めぐり】南フランス・モンペリエの個性派シアターで相米慎二監督「夏の庭」鑑賞
2025年7月20日 09:00

映画.comスタッフが訪れた日本&世界各地の映画館や上映施設を紹介する「世界の映画館めぐり」。今回はフランス・モンペリエの個性的な映画館ユートピア(Cinéma Utopia Sainte-Bernadette Monpellier)を訪問しました。
モンペリエはパリから高速鉄道(TGV)で最速3時間半、中世の趣を残す歴史ある美しい旧市街や地中海性気候の明るい雰囲気が印象的な南仏の街です。


ユートピアは、モンペリエのほかアヴィニョン、ボルドーなど6つの街で展開している独立系の映画館です。主にアート系作品を上映しており、地域ごとに新聞のようなオリジナルの冊子を発行しています。冊子も公式ホームページもレトロなデザインで、「3Dなし」を強調していたり、冊子内には上映作品の紹介や批評のほか、時事問題や運営側の社会的な取り組みについての記事もあり、骨太なこだわりを感じます。

モンペリエのユートピアは、一般料金が7ユーロ(約1200円※2025年7月現在)、毎日の初回上映は4.5ユーロ(約780円※2025年7月現在)で鑑賞できます。円安で何もかもが高い…(涙)と倹約を余儀なくされていたフランス滞在でしたが、この価格設定は映画ファンにとって正にユートピアでした。

筆者が気になったのは上映スケジュールに「Bébé」(赤ちゃん)の印がついていた回です。親御さんが生後間もない乳児を抱いて鑑賞できる回で、誰でも入場できますがその旨ご了承の上来場ください、という説明がありました。 セドリック・クラピッシュ監督の最新作や日本で公開待機中のウェス・アンダーソン新作も気になるところでしたが、相米慎二監督の「夏の庭 The Friends」4Kリマスター版の上映にこのマークがついていたので、筆者に子どもはおりませんが好奇心に駆られ、こちらに行ってみることに。


こちらの映画館は国鉄のモンペリエ・サン=ロック(Montpellier Saint-Roch)駅付近から乗車できるトラム1のSaint Eloiが最寄りです。市内観光がてら歩いていくことも可能です。筆者は賑やかなコメディ広場など繁華街を抜け、中世の雰囲気を残した小道を楽しみながら徒歩30分ほどで到着しました。


モンペリエは大学都市として知られ、日本でも翻訳されている作家のフランソワ・ラブレーやポール・ヴァレリー、数多くの理系研究者を輩出、そして、おそらく30代以上の日本人なら誰でも知っているであろう、あのノストラダムスがこの地で学んだのだそう。先日も久々に予言騒動が世間を賑わせましたが、1999年のノストラダムスの予言も当たらなくて本当に良かったです。


映画館は人文系専門のモンペリエ第3大学のほど近くです。螺旋階段が取り付けられた南仏らしいクリーム色とサーモンピンクの建物が目を引き、アンティークなインテリアがおしゃれかつ居心地の良いロビーでは、猛暑日が続いていたからか、常設なのかはわかりませんが冷たいレモン水のサービスもありました。


こちらの劇場は3つのスクリーンを擁しており、「夏の庭」が上映されたスクリーンは、詳細なサイズはわからなかったものの、座席数100席以上の中規模のもの。古い建物を活かした室内で、赤くペイントされた壁には映画館の隣に聖ベルナデット教会の隣にあるからでしょうか、宗教的な絵画も飾られていました。


この日は平日の午後だったからか、観客は10人に満たないくらい。残念ながらこの回に赤ちゃん連れのお客さんはいませんでしたが、近所にお住まいと見受けられるシニアの方々が多く、地元の方々に愛されている、地域に根差した映画館なのだとわかります。筆者が前回「夏の庭 The Friends」を鑑賞したのは中学生で、当時はいたずら好きな少年たちに感情移入していましたが、もうすっかり大人になってしまった今となっては、また違った視点で鑑賞できました。

これが神戸で撮影されたのは(阪神・淡路の)震災前だったんだな、相米監督も、三國連太郎さんも、淡島千景さんも亡くなられてしまったな、私の祖父母ももういないけれど、本人たちから戦争の話は聞くことができなかったな、当時は学校に子どもがたくさんいて元気だな……など、生と老いと死をテーマとした物語に心を打たれたのはもちろんですが、異国で30年前の日本を観られたことにも胸が熱くなり、忘れられない夏の思い出になりました。


上映作品のラインナップをはじめ、教会を改装した劇場もあるなど、運営母体の方針が個性的で、映画芸術を守ろうという姿勢を強く感じ、いつかフランス各地のユートピアめぐりをしたい、そんな風に思える鑑賞体験になりました。アート映画ファンにはぜひお勧めしたい映画館です。
Cinéma Utopia公式HP(https://www.cinemas-utopia.org/)
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