7月4日公開の「映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか! 」では、新しい登場人物も加わり、「おっパン」ファミリーが新たな問題や困難に立ち向かう。年の差を越えて友情を深める誠と大地のように、お互いに尊敬し合い、真っ直ぐに気持ちを伝え合う原田泰造 と中島颯太 (「FANTASTICS」)に話を聞いた。(取材・文・撮影/編集部)
©練馬ジム | LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会 沖田家にようやく平穏な日常が訪れたかに見えたが、アップデート前の誠(原田)からパワハラとも言える扱いを受けていた元部下の佐藤(曽田陵介 )が、誠の取引先相手として現れる。一方、大地(中島)はパートナーの円(東啓介 )と遠距離で暮らすことになり、寂しさや不安を募らせていく。6月28日に映画公開を記念したスペシャルドラマが東海テレビ・フジテレビ系全国ネットで放送(午後11時40分~12時35分)。
――ドラマのクランクアップから約1年ぶりに「おっパン」ファミリーと再会していかがでしたか?
©練馬ジム | LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会 原田:「久しぶりな感じがしないね」って言いながら撮影していましたね。スタッフさんも演者さんもほとんど変わっていないから、ホームに戻ってきた感じでした。
中島:クランクインのときに、
二宮崇 監督が「おかえり!」と言ってくれて安心感がありました。沖田家のシーンはドラマと同じ家で撮影したので、家に着いた瞬間、「帰ってきたな」と思いました。
原田:カルロス役(沖田家の愛犬)のこまちも覚えてくれていて、うれしかった。こまちが近くにいるとやっぱり和むよね。撮影のときに「カルロス!」って言わなきゃいけないのに、つい「こまち!」って言っちゃう(笑)。
中島:僕もありました(笑)。「こまち!……あ、すみません!!」って。
――「おっパン」はドラマ放送時、「TVer」の初回再生回数が東海テレビ史上歴代1位を記録しましたが、多くの人に愛される理由はどんなところにあると思いますか?
原田:僕が演じた沖田誠はドラマの第1話で大地くんと出会って友達になって、そこからいろんなものを吸収していくんだけど、大地くんがこの作品のシンボルなんだよね。「僕は恥ずかしいことは何もありません」っていう堂々とした大地くんに対して、その全部を吸収しようとする誠がいる。映画でもそういった2人の関係性がちゃんと描かれていて、素敵だなと思います。大地くんの存在はカッコいいなと思いますね。
中島:ドラマを見てくださった方からは、「お父さんに見てほしいんです」という声や「このドラマを見て気付くことがありました」といった感想をたくさんいただいて、この作品はフラットにたくさんの方に届くべき作品だなと感じました。お父さんがこれまでやってきたことにただダメ出しをするんじゃなくて、相手の好きなものを尊重することを丁寧にゆっくりと教えてくれています。コメディとしてもおもしろいし、キャラクターも魅力的で、平和な世界観が「おっパン」の良いところだと思います。
――中島さんは「おっパン」がドラマ初出演でしたが、現場で原田さんからどんなことを学びましたか?
中島:初めての連続ドラマ単独出演作品だったので緊張していたんですけど、演技も含めて学ぶことだらけでした。泰造さんは現場でのやり取りの中で生まれてくる演技を大事にされている方で、全部が“沖田誠”だからできる動きで、爆笑しちゃうぐらいおもしろいときもあれば、大事なシーンではすごく心に来る。演技にストイックに向き合っていらっしゃるんだなと感じました。
©練馬ジム | LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会 原田:颯太くんは、「ドラマ初めてです」って撮影に入った瞬間、「あ、こいつ嘘ついたな(笑)」って思うくらい上手かった。そのくらい役に入り込んでいて、どんな動きをしてもぜんぶ“大地くん”で返ってくるから、迷いがなくてすごくやりやすかったですね。
みんながそうかはわからないんだけど、役者って演じたあと「今のよかったかな?」「もうちょっとできたかな?」とか、いろんな「?」を持ち帰っていくと思うんです。颯太くんは聞こえるか聞こえないかくらいの距離から「やばい、今のカッコよかった泰造さん」とか言ってくれるの。だから、「今の良かったんだ!やったぜ!」って気持ちよく帰れる(笑)。颯太くんは褒め上手だから、彼と一緒だと役者さんはやりやすいと思いますね。
中島:つい声に出ちゃうだけなんです。二宮監督もその場で「今の表情よかった」「今のおもしろい!」って褒めてくださったり、足りなかったら指摘してくださったり。二宮監督がまさに「おっパン」の雰囲気を作ってくださっていた感じがします。
――原田さんが中島さんから刺激を受けたことはありますか?
原田:いっぱいあります。颯太くんはスター性があるけど壁がなくて、誰とでも自然に話せるし、常にニュートラルでフラットな状態を保っていて。「こういうふうになりたいな」って思う。
中島:こうやって褒めてくださったり、すごく年下の僕に羨ましいって言ってくださったり、僕こそ泰造さんのようになりたいです。周りのスタッフさんへの接し方や話し方を見ていても人格者だと思いますし、僕の目指す像です。
――映画では誠が新たな難題に挑むことになりますが、どんなことを感じながら演じられましたか?
©練馬ジム | LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会 原田:誠はドラマでアップデートしきったのかなと思ったら、まだアップデートしきれていなかった部分があって。映画では、かつて誠のパワハラが原因で辞めた部下が取引先相手として現れて、アップデートしていない頃を覚えている相手とどう向き合っていくかが描かれていく。
過去に傷つけることを言ってしまった人と再会して、心の中で「この前、ひどいことを言っちゃったよね」みたいなことって、多分誰にでもあると思う。僕自身も、振り返ると“
原田泰造 ”として謝りたいこともいっぱいあるし。だから、誠として過去に傷つけてしまった相手と向き合える時間を与えてもらったことに感謝して演じていましたね。
――一方で、大地と円は遠距離になって新たな壁に立ち向かうことになりますね。
©練馬ジム | LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会 中島:ドラマでは大地は頼れる太陽みたいな存在で、彼に影響されてみんなが変わっていくんですけど、映画では円先輩と遠距離結婚になることで、寂しさだったり人間味だったり、ドラマとは違う大地の一面が描かれます。そういったところを繊細に演じたくて、二宮監督とも話し合いました。前半は寂しそうな表情が多いんですけど、そこからどう乗り越えて、円先輩にどうやって好きな気持ちを表現したのか。後半には「やっぱり大地ってこうだよな」というシーンもどんどん出てくるので、そこも注目してもらえたらうれしいです。
原田:映画の後半に、「あぁ、いいカップルだなぁ」と思わせてくれる素敵なシーンがあるんだよね。そういうシーンは見ていてやっぱりうれしい。
©練馬ジム | LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会 中島:大地は誠さんとの関わりの中ではしっかり者なんですけど、円先輩の前ではちょっと抜けていたり、普段よりも感情を出したり。円先輩も職場ではしっかりしているけど、大地へのプレゼント選びは間違えちゃう(笑)。そういうお互いに欠けている部分を補い合っている感じが尊いですよね。
――「おっパン」に出演されて、ご自身の価値観や考え方に変化はありましたか?
原田:僕が子どもの時や若かった時と比べると、今は生きやすくなったと思う。トイレひとつとってもどんどん進化していて、ウォシュレットや音姫がついたりね。パーマだって昔はくりんくりんになっちゃったけど、今はちゃんとふわっとするし(笑)。
中島:技術の話ですか(笑)?
原田:あと、今は男の人もメイクするでしょ? 「いいなぁ。俺も若いうちにしたかったな」って思う。オンライン会議をしている人を見ると「かっこいい!」って思うし、高校生の時にスマホを持っていたら楽しかっただろうな。逆に、昔の方がよかったことはすぐに思いつかない。あるのかもしれないけど、今は今ですごく楽しいから。
©練馬ジム | LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会 中島:僕はSNSやライブのMCのように、たくさんの人に対して何かを発信する時に、より相手の立場になって考えられるようになりました。例えば「ライブ楽しかったです」だけじゃなくて、ライブに来られなかった方の気持ちも考えて「来られなかった方はまた必ず会いましょう」とひと言添えるとか。そこまで考えた発信の仕方を意識するようになったのは、「おっパン」を通して色々な考えや思いがあることを経験したからこそなので、人としてもアーティストとしても成長できたのかなと思います。
――映画では、「相手の好きなものを尊重すること」に加えて、「好きでい続けることの難しさ」も描かれますが、お二人は「好き」なもので悩んだことはありますか?
中島:僕はもともとすごくポジティブな性格で、両親からずっと関西弁で「ええようになってる」と言われて育ったので、好きなもので悩むことはあまりありませんでしたね。父も母も「結局なるようになってるから、大丈夫なんや」「笑っとけばええねん」と言ってくれて。この両親じゃなかったらこのポジティブさってないんだろうなと、ありがたいなと思います。「笑顔のまんま」(BEGIN with アホナスターズ/作詞:
明石家さんま 、BEGIN)という曲も昔から聞いていて、支えられましたね。
今も好きだから音楽をやっていて、アーティストとして届けられる立場になって、俳優としても作品やセリフを通して素敵なことを発信できる。自分の好きなものが全部繋がっていて、好きだから楽しくて突き進んでこられたという感覚です。
©練馬ジム | LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会 原田:僕は部活もバイトも全然続かなくて、唯一、居酒屋の「村さ来」のバイトだけは店長が優しかったから何年か続いて、そこで奥さんと出会ったんだけど(笑)。今の職業だけは続いていていいなと思ってる。人生で「ネプチューン」が一番長いんじゃないかな。「ネプチューン」の2人と出会って、人生が変わったしね。結成したときはこんなに長く続くとは思わなかったけど、好きだし、やっていて楽しいから続いているんだと思う。
――学校や職場で世代間ギャップに悩んでいる人にアドバイスするとしたら?
原田:僕が馴染めなかったからねぇ……。悩む人の気持ちはわかるけど、打開策なんてないよね。嫌だったらすぐにやめていいと思う。
中島:「おっパン」でも描かれていますけど、いろんな世代と接することで、それぞれの常識を知れたり、お互いの角度から見たものを共有し合えたりするのは素敵なことですよね。それこそ、誠と大地はたくさんの方が見ていて「いいな」って思ってもらえる関係性だと思いますし。ただ、僕自身は世代の違いはあまり関係ないとも思っていて。好きなものを通じて繋がれるし、お互いを尊敬し合いながら、好きなものを尊重できれば、年齢関係なく良い関係が築けるんじゃないかと思っています。
もし先輩や上司に強く言われることがあって嫌な気持ちになったら、それは一旦置いておいて、自分の好きなものや武器になるもので見返してみたり。角度を変えて、好きなものや強みを見つけるっていうのもいいんじゃないかなと思います。得意なことで評価が上がったら、言われて嫌だったこともちっぽけに感じられることもあると思うので。
原田:颯太くんと話していると、「同じくらいの年のとき、自分ってこんなに大人だったっけ?」って反省する(笑)。
――映画では、翔(
城桧吏 )と萌(
大原梓 )の成長が感じられる一方で、「趣味は家族」という誠が寂しそうな表情をしているのが印象的でした。原田さんご自身は“子離れの寂しさ”をどう乗り越えられたんでしょうか?
©練馬ジム | LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会 原田:子離れするときは僕よりも奥さんの方が大変だったから、「大丈夫、大丈夫だよ~」って奥さんに言いながら乗り越えていった感じ。「俺は平気だよ!」みたいに振る舞って。奥さんの方がより寂しがっていて、「さすが母親だなぁ」と思いながら見ていましたね。僕はむしろ、子どもたちが心配で、小さい頃から「早く成長しろ、早く成長しろ」「早く大人になってほしい」って思ってた。そっちの方が強かったかな。
――最後に、お仕事以外で原動力になっている「好きなもの」を教えてください。
原田:僕はサウナ。リラックスできるから、その時間がすごく大切。無心になれるし、大好きな時間だね。
中島:僕はお笑いです。泰造さんと一緒にバラエティ番組に出演させていただいたときも、「なんでこんなにおもしろいんだろ?」「すごいな」って毎回思っていました。お笑い芸人さんのことをすごくリスペクトしていますし、僕自身いつも元気をもらっています。
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