ライアン・クーグラー監督&マイケル・B・ジョーダンが語る「罪人たち」【微ネタバレあり】
2025年6月21日 12:00

ライアン・クーグラーが監督、マイケル・B・ジョーダンが一人二役で主演を務める「罪人たち」(公開中)。クーグラー監督とジョーダンが、全米で大ヒットした本作について語るインタビューを映画.comが入手した。
舞台となるのは、1932年のアメリカ南部、ブルース発祥の地とされるミシシッピ・デルタ。双子の兄弟スモークとスタックは、一攫千金の夢を賭けて、当時禁じられていた酒や音楽をふるまうダンスホールを計画する。オープンを迎えた店で誰もが熱狂する中、スタックとスモークの19歳の従兄弟で、生粋のブルース・ミュージシャンであるサミー(マイルズ・ケイトン)が魂を震わせるブルースを披露する。悪魔を呼び寄せるかのようなその歌によって招かざる客が姿を現し、事態は一変。歓喜は絶望にのみ込まれ、人知を超えた者たちの狂乱が幕を開ける。

クーグラー監督が本作で創造しようとした世界とは、膨大な量の調査と検証によって、細部に至るまで裏付けられている。1930年代初頭のミシシッピ・デルタの歴史と状況、そして登場人物全員の文化と文化的慣習、そして一卵性双生児の心理、偶然の出来事、そしてブルースが呼び起こす神話的な共鳴へと、多彩なテーマがシームレスに描かれていく。
「映画を作るたびに、作品はより個人的なものになっていきました」と語るクーグラー監督がインスパイアされたのは、「クリード チャンプを継ぐ男」(2015)の制作中に亡くなった叔父だった。
脚本執筆に当たって「生涯をかけて築き上げてきたジェームズ叔父との関係を掘り下げました。ミシシッピの出身で、ブルースを聴いてオールドテイラー・ウイスキーを少し口にすると、彼は懐かしそうに“そのこと”を語りました。彼を恋しく思っていた私は、映画を通して“アメリカ”を生き抜いた自分の先祖の歴史を掘り下げる機会を得たのです」と振り返る。
叔父が語った“そのこと”は、本作が描く時代設定に隠されている。双子の兄弟が従軍した第一次世界大戦終結後、1927年のミシシッピ大洪水によって全てが流され綿畑も壊滅的な状況に追い込まれ、1929年の世界恐慌がさらに拍車をかけた。舞台となる1932年とは、米南部に生きる誰もが貧困に喘いだ時代である。南北戦争後に発令されたジム・クロウ法が黒人差別を助長し、秘密結社KKK(クー・クラックス・クラン)による理不尽な暴力や殺人が横行していた。禁酒法の時代、苦しい生活や生きづらさ、ブルーな気分を歌うブルースだけが心の拠り所だったのだ。クーグラー監督は、混迷する現在の世界を見つめながら、兄弟の生き様を通して自分が生きるアメリカの近代史を俯瞰する作品を作ることに決めた。

クーグラー監督は、映画が描く時代の空気感を再現するために自身が信頼するキャスト、スタッフに脚本を読んでもらった。主人公は一攫千金の夢を賭けてジュークジョイントを作る双子の兄弟。一人二役で挑んだジョーダンは、「これは監督の頭脳から生まれた、ジャンルを超えた特別な作品」だと真摯に受け止めるとキャラクター作りに意欲的に取り組んだ。
「体の位置、立ち方から双子像を作り上げ始めました。兄のスモークは重厚な雰囲気があり、あまり話さない。弟のスタックは軽やかで、痛みの中でも笑顔を絶やさない」とイメージを固めていく。さらに探求を続け、「スモークは仕事一筋で、物質的なものにはあまり価値を見出さず、兄のように外見を気にもしない。一方、スタックはお金、宝石、指輪、仕立ての良いスーツを着て、常にきちんとした服装にとてもこだわっている」と二人を演じ分ける手がかりを見いだした。
一卵性双生児についてリサーチを重ねた監督は、「兄弟の象徴性と色彩の物語」だと続ける。青で決めた寡黙なスモークと、赤を好む陽気なスタック。「二人に何が起こり、どのようにして彼らを特定の力関係に結びつけたのかというバックストーリー。同じ日に生まれた二人のユーモア、横暴な兄貴分スモークとの父性的な関係。これらすべてを、技術的に実現できるかどうかを試す素晴らしい実験でした。でも技術だけでは俳優から出てくるものしか捉えられないので、マイケルが同じ日にこの二人の男になりきれるかどうか……。40回、50回と試しました。そして彼は見事に成し遂げました」と盟友の献身的な演技に最大級の敬意を表している。

夏の猛暑でウールのスーツで身を固めて撮影を続けたジョーダンは、「非常に困難で、まるで初めて映画を作っているような気分」だったという。双子の兄弟が本当にいるかのような驚きの撮影を担った視覚効果チームは、同じシーンでそれぞれの役を撮影し合成する古くから使われてきた手法と、別の俳優の頭部をデジタル技術で合成する手法を採用。さらに10台のカメラで頭部を360度キャプチャできる肩掛け式のデバイスを開発し、双子の片方を演じた後に、デバイスを装着してもう片方を演じてもらう。そのデータをもとに制作したジョーダンの頭部の3DCGを代役の頭と入れ替えた。同じシーンを異なるキャラクターとなって最低でも2回撮影しなければならない――集中力と強靱な精神力、そして体力が要求される二人の主人公について、クーグラー監督は「マイケルにしかできない役」だと断言している。
多彩なテーマがシームレスに盛り込まれた「罪人たち」は、ホラー映画という一つのジャンルだけで語ることができない多層的な作品となっている。ジョーダンは「彼が書いたキャラクターは、叔父への個人的な思いから生まれたものだと知っています。実に様々な要素を含んでいます。非常に多くの層があります。観客には、私たちが撮影し、作り、創り出そうとしたすべてのものを感じ取ってほしい」と、観客の感受性に期待を込める。
さらに、ジョーダンは「楽しむだけでなく、考えてほしい。帰り道、シャワーを浴びている時、あるいは家族と家でくつろいでいる時でさえ、映画や登場人物のことを考え、会話を弾ませてほしいのです。それこそ、私が映画を愛する理由です。映画は人々に違った考え方をさせ、これまで触れたことのなかった物や場所、空間を知る機会を与えてくれるのです。少し怖いと感じることを楽しむことも必要です。そして音楽も楽しんでほしい」と熱く語り続けた後、「観客に音楽の要素を骨身に感じてもらいたいんです。あ、それから、新人の俳優(マイルズ・ケイトン)も忘れないでください。素晴らしいキャストが揃い、全員が素晴らしい演技を披露しています。観客の皆さんが、知っている俳優たちを違った角度から見て、見たことのない俳優たちに恋に落ちるのを、本当に楽しみにしています」と結んでいる。
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