■「ガールズバーの女の子たちにも、お客さんにも、それぞれの人生がある」
木村:「
天使たち」の監督、脚本を務めました
木村ナイマと申します。本日は、いろいろな映画があるなか、テアトル新宿で「
天使たち」を選んでくださってありがとうございます。
ゆっきゅん:ゆっきゅんです。よろしくお願いします。3日間満席、おめでとうございま
す!
木村:本当にありがとうございます!まず、感想から伺っていいですか?
ゆっきゅん:ちょっと前に連絡をいただいて、こういう映画があるんだと初めて知って、スクリーンで観たのは今日が最初だったんですけど。新宿・歌舞伎町の夜の街で、ガールズバーで働く子たちがいて、客がいて、そういう物語を描くなかで、登場人物の誰もが人間としてありたい、生きていきたいって、もがき葛藤する様にフォーカスしているのがすごくいいなと思って観ていました。それが「
天使たち」っていうタイトルにも表れていますよね。
あとは、若い女性っていうラベルがある社会のなかで、その内側から見た視点を描いてるというか、でも別に内情を暴くようなことでは全然なくて。多分、歌舞伎町という街やガールズバーという場所はどこまでも戯画化できると思うんですけど、働いている子たちにもお客さんたちにも人間味があるというか、当たり前なんだけど、それぞれの人生があるということが自然に描かれているなと感じました。
木村:人間として歌舞伎の人たちを描こうというのはすごく気をつけました。
ゆっきゅん:普通の子たちがバイトしているという。
木村:そうですね。やっぱり歌舞伎町とかガールズバーってフィルターをかけて見られるじゃないけど、私も実際、自分がガールズバーで働いてるのをずっと大きい声で言えないと思ってたりとかして。でもガールズバーで働いてる子ってハスラーっていうか、自分の足で立とうとしているすごい立派な存在だから、私はそういうところをもっと評価されてもいいんじゃないかなって思ってて、ずっと。お客さんにもひどい人はいるから、この映画では結構よく描いているけど。
ゆっきゅん:よく描いてると思う。
木村:手厳しくやばい人を描いてもよかったんですけど。
ゆっきゅん:でもやばい人が出てきたらやばい人が出てくる映画になっちゃうから、っていうことですよね
トークの模様木村:ちょっとそれもやってみたいっていう意地悪な心もあったんですけど、それよりは、女の子たちのつながりを描きたかったという思いがあります。
ゆっきゅん:わかります。そのなかで、私、結構この世で「同僚」って好きな存在なんですけど。なんか絶妙な距離感の友情っていうか。地元の友達でも大学の友達でもなくて、いつ会わなくなるかもわからない。特にバイトだとね、飛んだりもするだろうし。だから、いついなくなるかわからないんだけど、「
天使たち」の「なる」と「
マリア」の二人とか、「みあ」とか、みんな自分の幸せを願える人として描かれてることがまず前提としてあって、さらにそばにいる人、隣にいる人の幸せも願っている様子があって、そんな「同僚」の関わりも観ていて好きなところです。カリスマのみあさんもよかったですね。「どうしたら稼げますか?」とか相談されて、ちょっとかっこいいこと言うんだけど、最後は「がんばろう?」って言う。
場面写真木村:カリスマだけど、あの子自身も結局探しているところで。
ゆっきゅん:言葉にはできているけれど、割り切れなさもありますよね。
木村:みあさんには結構明確にモデルがいて、その人は私が働いていたお店のナンバー2でした。でも、この前お店に行ったら新しく自分でお店を始めてて、ナンバー1になってた。やっぱりどんなにメンタルが強そうに見える人や結果を残してる人にもきっと繊細な部分があって、そういう一面が飲んだ日の朝とか大変なことがあったときとかにちょっと見られると、私はすごい嬉しくて。
ゆっきゅん:嬉しいよね。かっこいいとか、自分から見ると完璧無欠だとか、人に対してそ
うやって思うことばかりだけど、そういう人が本当は苦しんでいるとかそういうことだけじゃなくて、それはまあみんなそうなんだけど、なにかのタイミングでその人自身が見えてくるというか、交流のなかでふっと人格が立体的に見えてくるときってすごくグッときますよね。
木村:女の子同士や、常に対等な立場にある人間同士のつながりができて、かかわりを重ねていけば、人は大丈夫になるんじゃないかっていうことを、この映画でどうにかしてやりたかったですね。
ゆっきゅん:たしかに対等っていうのは本当にそうで、関係性の序列みたいなのが全然なくて、年齢とかもわかんない感じでしたよね。
木村:年齢とかも、実際聞かないとわかんないですよね。
ゆっきゅん:聞かないとわかんないことが描かれてないことに納得しました。

■「ゆっきゅんの歌はお守り」
木村:ゆっきゅんさんの歌を聴いてて、なかでも「いつでも会えるよ」(https://youtu.be/y1aPciQ2ABg?si=5I95dkJpwZ__z7cM)っていう曲が好き
で。
ゆっきゅん:ありがとうございます!
木村:今年、会社員になって、それからお守りみたいに聴き始めたんですよね。それまで私は女の子同士が対等につながっているなかで生きてきたんですけど、急に会社という組織に入って、つながりとか、そういう話じゃないみたいな世界になって。「
天使たち」をつくっていたときに感じていた痛みを忘れていったし、当時一緒に住んで、一緒にこの映画をつくった女の子が、今ここにもいる荒尾プロデューサーなんですけど、二人で一緒に忘れていったことも多くて。自分たちがただ隣にいて、お互いのことを信じ合っている気持ちだけでできた映画が「
天使たち」だからこそ、世の中のシステムに飲み込まれていったときに今までの関係性が壊れてしまったら嫌だなと思いながら、「いつでも会えるよ」を聴いていました。
ゆっきゅん:「いつでも会えるよ」はルームシェア解消ソングなんですよね。MVは
阿部はりかさんに撮ってもらったんですけど、一緒に住んでた二人がずっと洗面所にいて。
木村:洗面所の定点で、関係性が変わっていく様子を映している。映画みたいな濃さのMVで。烏滸がましいんですけど、私が描きたかったものとゆっきゅんさんが描いているものが一致しててめちゃくちゃ泣いちゃって。
ゆっきゅん:嬉しい。「
天使たち」のクライマックスで二人が走るシーンがありますけど、ああいうMVもあります! 新宿で女の子二人が走る、「年一」(https://youtu.be/TAe7qWm-b-Y?si=27K21C7s4ojaFWKN)って曲のMV。あれは新宿三丁目なんですけど。
■「たくさんの人にこの映画が観られることを願ってます」
木村:音楽の話、してもいいですか? 「
天使たち」の音楽の使い方だったり、どう思いましたか?
ゆっきゅん:私がいいなと思ったのは、
マリアが部屋で照明をつけたり消したりする場面。みんなで遊んでる動画を見て、そこには音楽が流れてるんだけど、その動画を見終えて、それから照明をつけたり消したりするじゃないですか。あのシーンがすごく好きで。自分はいつも一人でいるときは大体音楽を聴きながら生きてるんですけど、家に帰って来ても、音楽を聴いてるうちは完全には一日が終わっていない感じがあって。聴いてた音楽を止めるとやっと一日の終わりっていう感じがするんですよね。だからあのシーンみたいに、段々一人になっていってから眠るのが、わかるなって。

木村:優しい人ですよね。
ゆっきゅん:俺が!?
木村:あのシーンをいいと思ってくれる人って普段人と会ってるときにみんなのことをよく見て考えてる人だと思う。
ゆっきゅん:いやいやいや。でも、あのシーンの後、なるも照明をパチパチしてたから、やっぱり大事なシーンなんだって思った。
木村:二人が同じような虚無感を持っているというか、コアの部分でつながってるっていう、そうですね……演出をしました。
ゆっきゅん:あの、演出で恥ずかしがらなくていいんですよ、監督なので。(笑)
木村:そうですね、恥ずかしがらずに演出って言います!この映画は新宿の街でつくったんですけど、私にとって新宿は、辛かったことや傷みたいなものを忘れさせてくれるような場所だったから、すごい好きで。そんな新宿で、自分がまだ少女というか……天使だった頃に撮ったものを、今、こんなに多くの人に観てもらえたことが信じられない思いです。本当に今日は来て下さってありがとうございました。
ゆっきゅん:今日で一旦テアトル新宿での上映は終わりですけど、皆さんがたくさんの感想をSNSで発信し、グループLINE、個人LINE、それから友達に話すとか、そういうことをすると絶対にいいことが起こるので、たくさんの人にこの映画が観られることを願ってます。

《テアトル新宿激アツ・アンコール上映決定!》
・6月27日(金)〜7月3日(木)1週間限定レイトショー ※6月28日(土)のみ昼帯上映全日イベントあり。詳細は公式HP・SNSにて随時更新。
【チケット】
オンラインチケット予約(https://ttcg.jp/theatre_shinjuku/)、および劇場窓口にて販売。
オンライン販売は各上映日の2日前0時(=3日前24時)~上映時間20分前まで販売。
※前売券はオンライン予約では利用できない。