少女と青年二人のカフカ的な旅の記録 「ストレンジャー・ザン・パラダイス」からインスピレーション受けた「テイク・ミー・サムウェア・ナイス」
2025年6月5日 17:00

第48回ロッテルダム国際映画祭のタイガーアワード特別賞を受賞した、エナ・センディヤレビッチ監督の初長編監督作品「Take Me Somewhere Nice」が、「テイク・ミー・サムウェア・ナイス」の邦題で9月13日公開される。ティーザーポスター、特報映像が披露された。
幼い頃に別れた父を訪ね、母国であり異国の地ボスニアへと向かう一人の少女と、彼女の旅の道連れとなる二人の青年を描く物語。少女アルマは、オランダ生まれのボスニア人。両親は戦火に揺れた祖国を離れ、オランダで彼女を育ててきた。やがて父はひとり祖国へ戻り、消息は遠ざかっていた。そんな父が入院したという知らせが届き、母に言われるまま、アルマはたったひとりでボスニアへと向かうのだった。出迎えたのは、終始ぶっきらぼうで何の手助けもしてくれない従兄のエミル。居場所のない空間に身を持て余した彼女に声をかけたのは、エミルの“インターン”を名乗るデニスだった。アルマは父のいる町を目指し、バスに乗り込むが、休憩の間にバスは彼女を置き去りにし走り去ってしまう――—。
ボスニア・ヘルツェゴビナ出身でオランダ育ちのセンディヤレビッチ監督のルーツを主人公に色濃く投影した半自伝的な作品だ。監督が心酔するジム・ジャームッシュの代表作「ストレンジャー・ザン・パラダイス」から多大なインスピレーションを受けている。ひとりの若い女性が経験する、ひと夏の物語であり、さらに、大きな経済的格差のある西欧(オランダ)と東欧(ボスニア)の文化的対立、移民といったテーマが織り込まれる。1992年にユーゴスラビアから独立し、激しい内戦を経験したボスニアだが、監督はアルマという新たな世代のまなざしを通して、そのイメージを刷新する。
タイトルである「テイク・ミー・サムウェア・ナイス」は、監督が愛するスコットランド出身のポストロックバンド、モグワイの楽曲名に由来している。監督自身のルーツが色濃く投影されたアルマは「自分はどこに属しているのか」「本当の居場所はどこなのか」を問い続ける。監督曰く、アルマというキャラクターを「カフカ的な旅に出る現代の『不思議の国のアリス』」と表現し、その複雑で曲がりくねった旅路を、撮影、美術、衣装などの映像的なディテールにこだわり抜いて描いた。
撮影監督はエモ・ウィームホフ。そして、ローファイで夢のような空気感を醸し出す音楽は、作曲家/シンガーソングライター/映画音楽家のエラ・ファン・デル・ウーデによるもの。ソニック・ユースによる疾走感あふれる挿入曲「Kool Thing」の使い方も絶妙だ。アルマ役を演じるのはサラ・ルナ・ゾリッチ。旅の道連れとなるエミル役のエルナド・プルニャボラツとデニス役のラザ・ドラゴイェビッチは、それぞれ孤独や閉塞感を抱えた若者像を見事に体現している。
9月13日からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
(C)2019(PUPKIN)
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