“宇宙天気”を知っていますか? 神戸の科学館制作オリジナルアニメのプラネタリウム番組で、楽しく宇宙と科学を学ぶ
2025年5月18日 08:00

映画の歴史が始まってから、メリエスの「月世界旅行」をはじめ宇宙をテーマにした優れた映像作品は枚挙にいとまがありません。最近の日本の作品では映画「夜明けのすべて」やアニメシリーズ「チ。―地球の運動について―」のヒットなどを通じ、若い世代もプラネタリウムや天文学に興味を持ったり、より宇宙の知識を深めたいと思った方も多いでしょう。
今回ご紹介するのは、なんとドームシアターの大迫力スクリーンで見られる、宇宙、科学の専門家監修によるアニメーション「宇宙天気予報は放課後に」です。子どもから大人まで楽しめる、ユニークなプラネタリウム番組をオリジナルで制作している兵庫県神戸市のバンドー神戸青少年科学館を映画.com編集部が訪問しました。

バンドー神戸少年科学館は1984年開業のサイエンスミュージアムで、コニカミノルタ社製の最新システムを備えたプラネタリウムは2022年7月にドームシアターとしてリニューアルオープンしました。
公共交通機関を使ってアクセスしやすく、三宮駅、もしくは神戸空港からポートライナーに乗り換え、南公園駅下車、徒歩3~5分程度で到着します。入館料は大人600円、小中高生は300円、ドームシアター(プラネタリウム)鑑賞は大人400円、小中高生200円と家族連れでもお財布に優しい料金設定が魅力です。(※幼児以下無料、団体料金あり)

230席のドームシアター内はとても広くてきれい、すべての座席でリクライニングが可能です。また、友人同士やカップル、親子で楽しめるソファ型リラックスシートも前方に用意されています。(※予約制、1シート500円)

LED光源を使用し、肉眼で見ることのできる恒星、太陽や月、惑星も位置や動きを含め正確に再現する光学式プラネタリウム、そして、緻密な天文データを基にした立体宇宙空間を再現するデジタル式プラネタリウムで投影されます。ドームの直径は20メートル。アルミパネルをつなぎ目が分からないように貼り合わせたゆがみのない球体スクリーンに、最新型の4Kレーザープロジェクター2台を使用し、フルハイビジョンの約8倍の高解像度映像が映し出されます。音響は8.2chサラウンドシステムという独自規格で、ライブコンサートも可能な環境なのだとか。映画館とはまた一味違った、非日常の没入感を楽しめる施設です。

毎回の投影は、まず神戸市の星空解説からスタート。普段はネオンが眩しい都会ですが、夕暮れ時からの空、そして、もし神戸の街の明かりが消えていたら……という設定の夜空が映し出されます。138億光年の彼方、時空を超えた宇宙空間が天井いっぱいに広がる感動的な瞬間を楽しめるのは、ドームシアターならでは。観客を天空の世界に誘う、インタープリターと呼ばれる解説員さんのドラマチックな語り口にも引きこまれます。星空解説時に流れる素敵なBGMも、解説員さんたちがそれぞれ選曲しているそうです。

そして、観客は星空を満喫したのち、まるでそのまま宇宙にいるかのような気分で番組鑑賞に移ります。同館オリジナル番組の他にも、様々なテーマの映像作品が季節ごとの入れ替えで上映されています。

「宇宙天気予報は放課後に」本編で、映像を用いてよりわかりやすく解説されますが、ここで、宇宙天気を簡単に説明します。地球の周りの宇宙空間にはプラズマや磁場が存在し、それは太陽の活動によって絶えず変化します。その環境変化を宇宙天気と呼び、太陽活動の影響でGPSや通信に障害が起こる可能性があるのだとか。ですから、現代の私たちの生活に影響を及ぼす可能性のある宇宙天気を予測することが重要なのです。(※「宇宙天気予報は放課後に」作品解説チラシより引用)

とある関西地方の中学校に転校してきた、中学2年生の野崎りた、クラスメイトで面倒見の良い中町祐香、元気なお調子者の才木遥斗という3人の中学生の物語です。新しい環境になかなか馴染めず、クラスで浮いていたりたですが、りたに興味を持って話しかけた祐香、そして遥斗のおかげで、りたは将来宇宙天気予報士になりたい、という夢を明かし、ふたりに宇宙天気について説明します。
半球のスクリーンというドームシアターの特性を生かした迫力映像を用いて、難しそうな専門知識がわかりやすく解説されるのは、プラネタリウム番組ならではの面白さ。漫画の一コマのような表現が挟まれたり、祐香と遥斗ふたりの関西弁での掛け合いなど、笑いを誘うご当地ならではのユーモアもオリジナル作品の魅力です。
祐香が、自分にはりたのような夢がない……と落ち込む一場面もありますが、解明されていない謎も多くある宇宙のように、自分の将来や、やりたいことが今ははっきり見えなくても大丈夫。と、未来に不安を持ったり、自信のない若者にも優しいメッセージも投げかけるような良作でした。

ドームシアター以外にも、広いフロア内には様々な分野の体験型展示があり、各テーマごとに辿っていくうちに子どもも大人もあっという間に時間がすぎてしまうことでしょう。同館では、営業日の毎日、天体観測室での太陽観察会が実施されており、雲の少ない天候の良い日は、屈折望遠鏡“たいよう”で太陽の黒点やプロミネンスを見ることができます。裸眼では見ることができない太陽表面の活動を観察できる貴重な体験になりますし、筆者も「宇宙天気予報は放課後に」の理解がさらに深まりました。

同館の屈折望遠鏡は1922年(大正11年)に、当時の神戸海洋気象台がイギリスから購入したもの。その姿かたちもかっこよく、100年以上の時を経ても現役で使われているのにも驚きですが、50億年近く生きている太陽からみたら、100年前なんて昨日のことのような感じなのかもしれません。また、季節の星や月、惑星を観察する夜間の観察会も月に1度程度行われているそうです。開催日や予約については公式HP(https://www.kobe-kagakukan.jp/)でご確認ください。


宇宙天気について、「宇宙天気予報は放課後に」見どころなど文系出身の筆者にも、わかりやすく解説してくださいました。映画ファンのみなさんも、バンドー神戸青少年科学館を今年のお出かけの候補先のひとつにしてみてはいかがでしょうか?

バンドー神戸少年科学館では、毎年一般向けと子ども向けのプラネタリウム番組を1本ずつ制作しています。オリジナル作品は、独自の色を出しやすく、タイムリーな話題を取り上げたり、また、作品化しにくいマニアックなテーマも扱うことができます。過去には、火星の衛星探査についてや、海底地震のメカニズムと深海の生き物をテーマにした作品を制作しました。神戸という地域的な特徴を活かし、時事性なども見て、テーマを決めていきます。2022年のリニューアル時に記念番組として制作した「Wonder KOBE」は、神戸の四季や名所を紹介するまさに神戸ならではの番組です。
ちょうど去年あたり、普段は北欧など緯度の高い場所でしか見られないオーロラが、低緯度の日本でも見えるというニュースがあったと思います。その原因は太陽の活動が活発であることと関係しており、太陽の活動が活発になるのはおよそ11年周期、今年もまさにその真っただ中なので、テーマに宇宙天気を選びました。

これまでも宇宙天気を扱ったプラネタリウム作品はありますが、ファンタジーやSF調ではなく、宇宙天気をリアルな科学の現象として伝えることを目標にしました。さらに宇宙天気予報士という、今はない仕事を夢見る中学生を主人公にすることで、中学生や高校生が将来の進路について考えるきっかけになればという想いがあります。ちなみに主人公のりたは、自分のためではなく、自分以外の人のために行動するという性格で、“利他”にもかけています。
また、設定が放課後というのも面白いと思います。学生にとっての放課後は、学校の授業でもなく、家でもない特別な時間ですよね。でも場所は教室なので、自由の中に制限がある。そういう特別な時間の中で、3人の中学生が、夢を語ったり、自分の好きなことを熱心に話したり……そんなシチュエーションを想像し、自分の学生の頃を思い出しながら見てもらえると嬉しいです。

はい、それが宇宙天気災害というものです。これまで、私たちが経験してきた地震や台風などの天災は、建物を強くしたり、堤防を作ったりと、ある程度の対策が講じられています。しかし、宇宙天気災害に関しては、まだ具体的にどういう被害が起こるかが広く知られていません。同じく太陽活動によって出現するオーロラは美しいですが、ちょっと見方を変えると宇宙天気の乱れとも言えるので、実は喜ばしいことばかりではないのです。
例えば国内外でかなりの数が打ち上げられている人工衛星は、現代の私たちの生活、経済の基盤になっており、それが故障してしまうと日常生活に大きなダメージを与えることが想像できます。ですから、空の天気と同じように宇宙天気を自分事としてとらえ、どのようなリスクがあるかを知っておく必要があるのです。

太陽表面で起こる爆発や、それによって太陽から飛んでくる高エネルギー粒子によって、例えばインターネットが何日間か使えなくなるだとか、GPSの不調で飛行機や船がしばらく運休してしまうなど、宇宙天気災害はかなりリアルなものとして国でも議論されています。天気予報の警報や注意報のように、太陽の表面での爆発の規模によってどれくらいのダメージが起こるのか、それを伝えるのが宇宙天気予報士の役目かもしれません。そして、この作品を見た人が宇宙天気に関心を持ち、自分の場合はどんな困りごとが起こるのかを考えるきっかけになったらと思っています。
でも、専門的な言葉って難しいですよね。そこで毎日テレビやラジオで天気のことをわかりやすく伝えてくれる気象予報士のように、太陽の活動をリアルタイムに見ながら生活者の目線で伝えてくれる、専門家と市民の架け橋のような役割を果たす宇宙天気予報士の仕事がこの先必ず重要になると考えています。

それは物事を多角的な視点で見ることです。自動運転や再生医療といった科学技術は私たちの生活を便利にしたり、けがや病気を治したりすることができると期待されています。一方でそうした現在進行形の技術を社会に取り入れることに慎重な意見もあります。未来にはまだ見ぬ新しいテクノロジーが待ち受けているでしょう。ときには自分と違う意見にも耳を傾け、みんなで話し合い、科学と社会のより良い関係を探っていくことが大事だと思います。
もう1つは、科学を通じて世界を眺めてみることです。人間の大きさは1メートル数十センチですが、宇宙は遥かに大きく、逆に原子や分子は目に見えない小さな存在です。それらが連続性を持ってつながり世界ができています。もし銀河系を外から眺めることができたら、地球や太陽のような天体は数多くあることに気づくでしょう。あるいは自分が細胞サイズになったら世界はどう見えるでしょうか。昨年映画化された「はたらく細胞」のように、科学を題材にした映画やアニメを通じて、新たな世界観に触れることもきっと楽しいでしょう。
オリジナルアニメーション「宇宙天気予報は放課後に」投映スケジュールは、バンドー神戸青少年科学館公式HP(https://www.kobe-kagakukan.jp/)で告知中。
なお、6月13日からは、全天周映像作品「QUEEN -HEAVEN-」の特別上映も決定。フレディ・マーキュリーの没後、2001年にQUEENのギタリストで天文学者でもあるブライアン・メイ監修のもとドイツで制作された作品です。フレディ最後の歌声といわれる「マザー・ラヴ」から「ボヘミアン・ラプソディ」へと遡る19曲が迫力の映像で上映されます。開催概要、申し込み方法は科学館HPにてご確認ください。

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執筆者紹介

松村果奈 (まつむらかな)
映画.com編集部員。2011年入社。
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