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【世界の映画館めぐり】1935年開館、韓国・光州劇場を訪問&大ヒット映画「タクシー運転手」の時代背景を学ぶ旅

2025年5月13日 18:00

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韓国最古級の単館劇場
韓国最古級の単館劇場

映画.comスタッフが訪れた日本&世界各地の映画館や上映施設を紹介する「世界の映画館めぐり」。今回はゴールデンウィークに韓国を訪れた編集部スタッフが、光州の老舗映画館、光州劇場を訪問しました。

光州広域市は朝鮮半島南西部に位置する、韓国・湖南地方の経済・行政・文化の中心地です。日本のアートファンの方には1995年から開催されている光州ビエンナーレの開催地として、若い映画ファンの皆さんはソン・ガンホ主演の大ヒット作「タクシー運転手 約束は海を越えて」(2018)でその名を知る都市でしょう。「タクシー運転手」そして、今春日本公開の「1980 僕たちの光州事件」でも描かれ、1980年に軍事政権が民主化を求める学生や市民を暴力的に弾圧した、韓国近現代史で重要な光州事件(5.18民主化運動)が起きた地です。

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▼韓国最古級の単館劇場、光州劇場

まず訪れたのは光州劇場です。「光州劇場100年プロジェクト」に向けて寄付を募るサイト(https://www.wegive.co.kr/shop/donationProduct/0000000390)によると、1935年10月1日に開館し、10月10日に最初の映画を上映。オープン当時は韓国で最大の座席数を誇る劇場で、現在、韓国国内に現存する最古級の単館劇場なのだそう。インディペンデント映画上映館ということで、近年のヒット作のポスターや一場面を手描きで描いた看板が目を引きます。

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建物は1968年の火災後を経て再建されたもの。約800席、バルコニー席まである大きな劇場の1階にて筆者は、第97回アカデミー賞長編アニメーション賞受賞作の「FLOW」を鑑賞しました。チケットは10000ウォン。椅子はもちろんリニューアルされており座り心地良く、セリフのないアニメーションだったため、音響の良さにも集中できました。

味わい深い館内
味わい深い館内
劇場オリジナルグッズも販売
劇場オリジナルグッズも販売
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1階のロビーや廊下、2階では当時の歴史を伝える資料の展示、様々な映画の1シーンを描いた水彩画の展示も行われていました。また、韓国映画のほか外国映画の韓国版ポスター、劇場オリジナルグッズも販売されており、歴史ある映画館と映画文化を守ろうという劇場の思いが伝わってきます。劇場はショッピングや飲食に便利な繁華街のほど近くに位置し、近隣には最新の韓国映画やハリウッド話題作を上映するシネコンもあるので、新旧の映画館をはしごして楽しむのもおすすめです。

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おしゃれなグッズ包装の袋
おしゃれなグッズ包装の袋
光州劇場の隣のブックカフェ
光州劇場の隣のブックカフェ
▼「タクシー運転手」の時代背景を学べる5.18民主化運動記録館

光州劇場から歩いてすぐの場所に、5.18民主化運動記録館があります。2011年にユネスコ「世界の記憶」に登録されたこの出来事を、リアルタイムで報道を見ていない世代の筆者は、恥ずかしながら「タクシー運転手」で初めて知り、民主主義国家の在り方について深く考えさせられました。

画像27(C)2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.

1960年代後半から70年代の日本の学生運動の一部が過激で暴力的だった残念な経緯もあり、日本では今でも、デモにはかかわらない方が良い、政治的な発言をすることを“思想が強い”などと言って冷笑する空気がありますよね。「タクシー運転手」の主人公も、当初は光州に行くのはお金のため、と政治には無関心の姿勢でした。しかし、権力の横暴を放置してしまうことで、一般市民の生活、命まで脅かされることがある――映画は、そんなメッセージを見事なエンタメ性をもって伝える傑作でした。

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記録館の入館料は無料で、入り口で日本語のパンフレットをいただけます。5.18民主化運動についてわかりやすくまとめられており、資料館の説明のほか、主な舞台となった錦南路を中心とした地図にゆかりの場所が記されているので、市内を歩くのにも役立ちます。

当時の日本の新聞での報道
当時の日本の新聞での報道
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資料館内の展示はハングルのほかに英語での解説付きで、「タクシー運転手」で描かれた時代背景についてより深く知ることができます。日本での報道の資料や、「タクシー運転手」以外にも、当時の出来事を描いた映画作品が紹介されていました。市民が自らの手で、軍事政権から民主化を勝ち取った誇りが伝わり、長いこと平和ボケ気味の日本人も多くのことを学ぶことができる施設です。

▼見どころいっぱいの光州

滞在中は映画館以外のスポットにも行ってみました。ビエンナーレのように世界的に著名な芸術家の作品が集まる国際芸術祭も、光州の街を訪れ、歴史や文化を知る良いきっかけになると思いますが、通常期の開館時には、地域に根差したテーマの展覧会や地元の作家の特集を見られるのが地方都市の美術館の魅力だと思います。光州市立美術館では、5.18民主化運動と音楽をテーマにした展覧会が行われていました。丘にある美術館一帯は、市民がピクニックやスポーツをしたりと憩いの場になっており、アートに興味がない人でも、のんびり休日を過ごせる場所です。

光州市立美術館
光州市立美術館
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市内中心部には5.18記念公園という緑豊かな大きな公園があります。5.18を記念する大きなモニュメントがあり、その裏に設けられた地下通路を降りると、聖母の像と亡くなった方々のお名前が祀られた追悼の空間が広がります。公園内にはホールと資料室もあり、光州は2024年に、アジア人女性として初めてノーベル文学賞を受賞したハン・ガンさんの故郷ということで、彼女の作品や文章を引用した展示がありました。

5.18記念公園
5.18記念公園
ノーベル文学賞受賞のハン・ガン特集
ノーベル文学賞受賞のハン・ガン特集

このほか、地域の伝統文化を紹介する光州歴史民俗博物館、メディアアートや演劇などの催しが行われる国立アジア文化殿堂、その未来的な建物だけでも一見の価値がある郊外の国立光州科学館など、1日では周りきれない魅力的な施設がたくさん。もちろん、特色ある各種料理のグルメも楽しめるので、ぜひ2泊くらいしてゆっくり滞在を楽しんでほしい街です。

国立光州科学館
国立光州科学館
筆者が宿泊した町工場地帯 市内にアート作品が点在する光州
筆者が宿泊した町工場地帯 市内にアート作品が点在する光州
▼お手頃で快適、楽しい宿泊施設

最後に、ちょっとやわらかな観光情報を。今回、長めの韓国滞在だったので、なるべく宿泊費用は抑えたいと海外のホテルを検索できる一般的な宿泊予約サイトで見つけたのが、日本のチェーン系ビジネスホテルよりお手ごろ価格で、光州劇場ほど近くの繁華街やローカルな市場も徒歩圏の町工場が並ぶ下町の宿。予約サイト上の写真では建物外観全体が映っておらず、到着して驚いたのが、日本の昭和から平成時代のラブホテルのような、西洋の城を模した建物だったこと。

筆者が滞在したお城ホテル
筆者が滞在したお城ホテル

韓国のモーテルとも呼ばれる施設です。日本のラブホテルを普通の旅行で利用するのはちょっと気が引けますが、韓国のモーテルは街のいたるところにあり、カップルのみならず、友人や家族、もちろんひとりでも宿泊可能な施設も多いよう。建物はやや古いですが(お城ですから)、室内は広く清潔で充実の設備、豊富なアメニティをいただき、クイーンサイズのベッドをひとりじめ、街歩きが楽しくて時間を忘れそうになっても、「そろそろお城にもどらなきゃ…」とにわかシンデレラ気分を味わえました。

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こちらはお城ビジネスホテル
こちらはお城ビジネスホテル

光州はこのようなお城型ホテルが街のあちこちにあり、レトロでゴージャスな建築意匠を見て歩くのが楽しかったです。一般宿泊用の予約サイトで出てくるホテル、モーテルであれば、きっとどなたでも快適に過ごせるはずです。

お釈迦様の誕生日を祝う時期でした
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