【インタビュー】パディントンのルーツが明かされる新作で描きたかった“家(ホーム)”の在り方 ドゥ-ガル・ウィルソン監督が語る
2025年5月6日 14:00

大ヒット映画シリーズ最新作「パディントン 消えた黄金郷の秘密」が、5月9日から公開される。映画.comは、本作で初めて長編映画のメガホンをとるドゥーガル・ウィルソン監督のインタビューを独占入手。世界的な人気シリーズの監督を務めることへのプレッシャーと覚悟、新たに参加した豪華キャスト陣との仕事、アクションやロケーションの見どころ、本作で描きたかったテーマなどについて語った。
ロンドンで暮らすクマのパディントンのもとに、故郷から一通の手紙が届く。ペルーの“老グマホーム”で暮らす育ての親・ルーシーおばさんの元気がないという。そこでパディントンは、ブラウン一家とペルーへ家族旅行に出るが、おばさんは眼鏡と腕輪を残して失踪していた。一行はおばさんを探すため、残された地図を手がかりに、インカの黄金郷があるというジャングルの奥地へと冒険の旅に出る。しかし、都会暮らしで野生の勘を失ったパディントンは大ピンチに陥り、行く手には、ブラウン一家との家族の絆を試される試練が待ち受けていた。

「この映画を監督してほしい」とオファーを受けた時、最初に浮かんだのが心配や不安でした。というのも、歴史ある偉大な作品だと分かっていましたから。でも私自身も前2作のファンであり、その表現方法やユーモア、創造性が大好きだったので、自分なりの手法でこのシリーズに貢献して、物語を紡いでいけるかもしれないと思いました。

パディントンの世界にずっと携わってきた仲間たちに歓迎してもらえて良かったです。映画のなかのキャラクターだけでなく、以前からの撮影スタッフのエリック・ウィルソンや、アニメーションディレクターのパブロ・グリロもいます。そして素晴らしいキャストたちも、みんな温かく迎えてくれました。前に一緒に仕事をしたことのある仲間と、また仕事ができたのも良かったです。
彼らは新しい台本もすぐに理解してくれました。わずかに新しいアイディアも加えましたが、物語の枠組みを一から作り変えたかったわけではありません。物語を導いてくれる大切な既存のキャラクターと、中心となるパディントンそのもの、そして以前からシリーズに携わってきたスタッフたちが私をサポートしてくれたのです。

エミリーはブラウン夫人の特徴を非常によくつかんでいました。温かみ、創造性、優しさがあり、ブラウン一家を動かす心臓のような存在なのです。エミリーはセットに足を踏み入れると、家族や家そのものにすぐになじんでいました。もっと前からそこにいたように思えたほどです。

オリビアは修道服を着るとすぐに院長になりきって、私が役について説明すべきことはほとんどありませんでした。あっという間に理解してくれたのです。頼もしいキャストとして加わり、特にパディントンとの会話のシーンが見事でした。パディントンにとっても、院長は話していて楽しい存在です。イギリス映画やテレビを代表する俳優と、イギリス映画を象徴するキャラクターの交流が実現したのです。

彼女はどのシーンにも意欲的で、崇高なものから滑稽なものまで、そして華やかなアクションシーンにも参加してくれました。その全てが見事でした。一緒に仕事ができて嬉しく思います。彼女は「パディントン」シリーズの世界観やユーモアにぴったりと合っていました。彼女の活気や温もり、機転が利くところは物語と完全にマッチしていましたし、この映画に参加してくれたことは本当に幸運でした。

アントニオが出演してくれて感激しています。彼が演じるハンター・カボットは、アマゾンの熱帯雨林の水路を行き来しながら商売をしている、魅力的で威勢のいいリバーボートの船長です。でも実は複雑なキャラクターなのです。人前に出る場面やブラウン一家に対する普段の態度は、立派にお客をもてなす主人であり美食家で、人を楽しませる存在。しかしお客が帰ってしまうと、彼の孤独な部分が現れます。自分の過去に囚われているのです。

アントニオは現場に楽しみと活力を与えてくれました。彼は一緒にいて楽しい存在で、誰にでも優しく、みんなに話しかけていました。ユーモアと活気があり、アイディアにあふれていて、何にでも意欲的で、パディントンとのやりとりも見事でした。パディントンは温厚なイギリス人で、話し方も穏やかで、名俳優のアントニオは堂々としながらも愉快な人です。彼はパディントンの性格とは実に正反対で、私は彼らが一緒にいるシーンがとても好きなのです。異なる色が合わさって、相互作用が起きているようなシーンになりました。

私たちは南アメリカに行き、そこで2カ月ほど過ごしました。ペルーやコロンビアでは撮影が始まる前の年にロケハンに行き、素晴らしい場所がいくつもあったので、ペルーではかなり多くの撮影をしました。アンデス山脈、ビルカバンバ、マチュピチュの周辺地域などです。本当に美しい場所で、下見をして驚きました。それとアマゾンの熱帯雨林にも行き、タンボパタ国立保護地区で少し過ごして、実際のアマゾンの支流にも行きました。

パディントンがブラウン一家と一緒にペルーに帰省する話と聞けば、全てがスムーズにいくわけがありません。これまでのシリーズのようにアクションシーンもたくさんありますし、ペルーではブラウン一家も騒動に巻き込まれます。移動手段もさまざまですが、ジャングルを歩いて移動するシーンではいろんなことが起こります。川をボートで渡るシーンでは、あまり詳しく言えないのですが、思わぬ方向へと進んでしまいます。空の移動では、さらに縦方向の動きも加わって、立体的な追跡シーンになりました。
アクションシーンに加え、ペルーやインカの建築物や遺跡なども登場して、これ以上なく楽しい内容になっています。アンデス山脈の巨大なそびえ立つ山々も出てくるので、できるだけ風景を入れるようにしました。ペルーの素晴らしい環境を、映画では壮大にまとめようと努力しました。

パディントンが興味深いのは、彼自身は大きくは変わっていないということです。彼はその気立てのよさや独自のやり方で周りの人たちを変えていきます。自分自身を保ちながらも、周囲の人々に良い影響を与えていくのです。それと同時に、パディントンも自分のルーツを少しずつ受け入れていき、心の平穏を得ていくのです。

パディントンは、誰もが称賛し、理想に描くような性格を、まさに体現しています。誠実さ、優しさ、寛大さ、フェアプレーといった具合に。これらはずっと変わらない性質です。イギリス人的な性質だともいわれますが、私はこれらが普遍的なものだと思います。人々はこういった性質を大切に思い、尊重し、パディントンがそれらを体現していると考えるのです。だからこそ彼の人気はいつの時代も変わらず、みんな続編を楽しみにしているのだと思います。

彼がパディントンを通して描きたかったのは、忍耐と需要。そして「私たちが親切で礼儀正しくあれば、世界はきっとうまくいく」ということだと思うんですよね。そのあたりは、特に1作目で強く描かれていたと思います。もちろん、今作でもそのテーマは共通して物語の真髄にありますが、今作で最も強いテーマといえるのは、“家(ホーム)”の在り方です。『ホームというべき場所は、ひとつじゃなくていいんだ。自分が愛や友情を見つけることができた場所を、僕たちはホームと呼んでいい』――この考えは、本作で自分のルーツを知ったパディントンとブラウン一家との絆に、とても感動的な結末を与えます。
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