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劇団四季の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ミュージカル版は期待を裏切らない!! 映画の楽しさを別手法で味わえてアドレナリン爆発!【若林ゆり 舞台.com】

2025年4月12日 12:00

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「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開最終稽古をレポート!
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開最終稽古をレポート!
撮影:荒井健

ブロードウェイもウエストエンドも、いまやミュージカル界は映画原作が花盛り。なのにあの作品はまだなのか、と、待っていた人も多いと思う。もちろん、映画ファンなら繰り返し見ていて当たり前、誰もが愛してやまないSF映画の金字塔「バック・トゥ・ザ・フューチャー」である。その待望のミュージカル版は、ロバート・ゼメキス監督、共同脚本のボブ・ゲイルらオリジナルの映画を手がけたスタッフが再集結して練り上げ、2021年にロンドン・ウエストエンドで開幕。23年からはブロードウェイにも進出し、観客の大喝采を浴びてきた。

そのミュージカルが、ついに日本でも幕を開けた! 日本版を上演するのは、パフォーマー、スタッフともに最高級のクオリティを誇る劇団四季だ。4月6日の初日に先がけて行われた公開最終稽古と、ロバート・ゼメキスボブ・ゲイルら海外スタッフの取材会、そして初日のカーテンコールに参加することができたので、レポートをお届けしたい(これから観る人の楽しみをなるべく奪わないよう配慮するが、ネタバレとなる部分もあるので要注意!)。

画像2撮影:阿部章仁

まず、開幕前に劇場内のスクリーンに「観劇の際の注意事項」が出るのだが、そこからもう「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の世界! フフッと笑ってしまう。まるであの懐かしいUSJのアトラクションに乗り込んだような気分になっていると、聞こえてくるのはお馴染みの、あのナンバーだ! 劇団四季は録音で上演されることも多いが、今回はオーケストラボックスがあって生演奏。

画像3撮影:荒井健

そして劇場は1985年の世界へと観客をタイムスリップさせてみせるのである。登場するマーティ。そこはドクの部屋だが、ドクは不在。映画と同じシチュエーション、でもディテールが違っていて「なるほど!」と思わされる。やはり映画のクリエーターが関わっているというのは、映画ファンにしてみれば歓喜しか呼ばない。ファンも思わず溜飲を下げて楽しめる、舞台ならではの改編やアレンジ表現が満載なのだから。

画像4撮影:荒井健
画像5

舞台がカリフォルニア・ヒルバレーの街中へと移り、マーティの生活が見えてくる。スケボーで大活躍とはいかないが、マーティはものすごくマーティだし、父ジョージは激しくジョージ、ジャイアンみたいなビフも「これこれ!」と膝を叩きたくなる。「いかにも」という感じのミュージカルナンバーが、それぞれのキャラを見事に立たせる。

その表現手法は、100%、ミュージカルだ。映画的な手法が使えない分、ミュージカルの特異な表現を「これでもか」と駆使し、映画の名場面をさらに濃厚な「ザ・名場面」として展開する。アンサンブルのコーラスパフォーマーたちがキャラクターの分身になったり、「え、その分身!?」というモノになりきって、バスビー・バークレー風や50年代風バックで歌い踊ったり。盛り上がるし、かなり笑える。つまり、これはどのミュージカルにも負けないくらい「ザ・ミュージカル」な作品になっているのである。

画像6撮影:荒井健

ミュージカル化でいちばんのハードルは、デロリアンだったのではないか。みんなが期待と不安で胸をいっぱいにしつつ待っていたシーンだろうし、狭い舞台を実際に時速88マイルで疾走するわけにはいかない。だが友よ、この再現度、疾走感はすごいぞ。ここではミュージカル的手法ではなく、マジック的な仕掛けと高度な映像・照明・舞台機構を駆使した演出が衝撃的な特殊効果を生み出し、映画製作陣の面目躍如! さらに俳優の演技が加わって、驚きのタイムスリップを体験させてくれる。あり得ないことを虚構のエフェクトで「現実」として感じられる、この感覚が味わいたかった。

画像7撮影:荒井健
画像8撮影:荒井健

この作品には舞台版「ハリー・ポッターと呪いの子」にも携わったイリュージョニスト、クリス・フィッシャーが力を発揮していると聞けば、合点がいく。展開としてはドクが「危機」に陥る状況に改編が見られるが、それもまた「なるほど!」だ。当然ながら、終盤の時計台のシーンも、期待を裏切らない!

マーティがタイムスリップした30年前の世界で若き日のパパ、ママに出会い、ふたりの恋を、そしてドクの危機を救おうと奮闘し、元いた未来へ帰る、というストーリーはもう、そのままだ。もちろんマイケル・J・フォックスがダンスパーティのステージで魅せた「Johnny B Good」も映画のままの音楽を生かし、ミュージカルシーンとして完璧に再現。マーティ役の俳優はエレキギターも猛特訓して自分で弾いている。

画像9撮影:阿部章仁

そして、ドクだ。もしかしたらこのミュージカルで、最も映画と印象が違って見えるのはドクかもしれない。いや、人格はまったく変わっていないのだが、よりお茶目に、パワフルに、エキセントリックに、コミカルに、思慮深く、夢見がちで、やさしく、懐の深い、でもどこか子どもっぽいような面が見えて、より深みが増しているのだ。映画でのクリストファー・ロイドとはちょっと異なるアプローチで、演じる俳優もやっていて楽しいに違いない。とくにそれが顕著なのが、2幕で彼を表現するミュージカルナンバー「21 st Century」や「For The Dreamers」。ドクをより一層好きになること間違いなし。

画像10撮影:荒井健

あとは自分の目で確かめて。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を愛してやまない映画ファンよ、ぜひ劇場で舞台にしか味わわせてもらえない、ワクワクドキドキとときめきと興奮に満ちた「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を体験あれ!

左からグレン・バラード、ボブ・ゲイル、ロバート・ゼメキス、ジョン・ランド、ティム・ハトリー、コリン・イングラム
左からグレン・バラード、ボブ・ゲイル、ロバート・ゼメキス、ジョン・ランド、ティム・ハトリー、コリン・イングラム
撮影:若林ゆり

公開舞台稽古の行われた日、オリジナル映画の脚本・監督を務めたロバート・ゼメキス、共同脚本と製作のボブ・ゲイル、作詞・作曲のグレン・バラード、舞台演出のジョン・ランド、セットデザインのティム・ハトリーを迎えての合同取材会が行われた。そのときの一問一答を抜粋してお届けしよう。

画像12撮影:若林ゆり
――日本版を見ての感想は?
ゼメキス「昨日、幸運にもミュージカルのリハーサルを見ることができました。あらゆる点で素晴らしいものでした。パフォーマンスは非の打ちどころがなかったし、ダンスも音楽もすべてにおいて完璧なできばえで、とても誇らしく思いました。非常に美しかった。日本の観客の皆さんもこの壮大なパフォーマンスを見たら、雷に打たれたような衝撃を受けると思いますし、完全に魅了されると思います」
ゲイル「ボブ(ゼメキス)にすべて同意します。このプロジェクトが始まった当初から、ショーは観る度ごとに、いつも私たちの期待を超えてきました。マンチェスターでスタートしたときも、ロンドンに移ったときも、ニューヨークでも、そしてここ東京でもそうです。日本のプロダクションは技術的な専門知識、才能、コミットメント、仕事に対する姿勢など、私たちが見てきた中で最高のレベルです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、常に日本の人々に高く評価され、受け入れられてきました。英語以外の言語による初の上演が、ここ東京で実現することになって、私たちはこの上なく感激しています」
バラード「僕もすべてが完璧だと思いました。12人のオーケストラも。技術的にさまざまなエフェクトがあって難しいのですが、問題なくいって驚きました。このチームは本当に素晴らしい。ダメ出しをしようと思ったのにできないので、とにかく楽しんでいます(笑)」
ランド「劇団四季は素晴らしいカンパニーだと思います。全員の才能が卓越している上に、向上していこうとする意志が非常に高いんです。俳優たちは誠実で努力家で、毎日ハッピーでいられるだけのチャーミングさと面白さももっている。特別な存在です」
ハトリー「このミュージカルは大道具、セットが複雑なんですが、そこに加えて映像も照明も音響も複雑に絡んでいる。そのすべてを整理して動かすのが大変なのですが、劇団四季は素晴らしい仕事をしてくれました。このミュージカルにとって、この日本公演がフラッグシップ(旗艦店)になると思っています」
画像13撮影:若林ゆり
――初めて舞台の台本を手がけたゲイルさんと共同創作者のゼメキスさんにとって、書く上で最も難しかったことは?
ゲイル「私たちにとって非常に重要だったのは、ミュージカルを映画のコピーにしないこと、隷属的な脚色をしないことでした。私たちはミュージカル演劇の道具を使って、ミュージカル演劇が得意とすることをやりたかった。そこで私たちが最初にしたことは、映画でできたスケートボードのチェイスはできない、リビアのテロリストはできない、犬も赤ん坊もできない、と決めることでした。そこで私たちは、難しいものを取り除いて、代わりに何ができるかを考え始めたんです。無理をして舞台上で同じことをやろうとするのではなく、舞台上でよりうまくいくようなことをね。そして、偉大な才能をもった仲間とのコラボレーションのおかげでそれは成功しました。とてもうれしく思います」
ゼメキス「ボブが全部言ってしまいましたが、そこに付け加えるなら音楽ですね。音楽の力でストーリーを進め、キャラクターをもっと掘り下げることができたのがよかったと思っています」
画像14撮影:若林ゆり
――映画公開から40年経っても、変わらず愛され続ける理由は?
ゼメキス「よく聞かれますが、うまい答えは言えません。ただ、この物語には非常に普遍的なものがある。自分が10代のときに、自分の両親が同じ世代だった頃が見られたら面白いんじゃないかとは誰もが思うし、好奇心が刺激されます。どの世代にもそういう考えがハマるんじゃないかな」
ゲイル「私も子どもの頃は親が神のように思っていたけど、どうやらそうでもないらしいという恐ろしいことに気づくんですよね(笑)。もうひとつは、どんなに小さなことでも自分のやったことはいろいろな影響を与えるんだということ。『あれをやっておけば』なんて後悔は誰もがもっているから、共感しやすいんだと思います」
バラード「どんな媒体でもいちばん大事なのはストーリー。40年前にゼメキスさんとゲイルさんが素晴らしい脚本を書いてくれたから、今回僕らも迷わずに済みました。ミュージカルではクローズアップはできないけど、歌でキャラクターを掘り下げられますから」
ランド「あと、クールな車があったことも加えたいですね(笑)」
ハトリー「さらに加えれば、タイムトラベルという要素も大きいですよね。そこに物語性があるから、すべての世代に受け入れられるのだと思います」
画像15撮影:若林ゆり
――このミュージカルで最も注目してほしいところをひとつ挙げるなら?
ゼメキス「いちばん注目してほしいところは、私の大好きな歌2曲です。それは『21st Century』と『Cake』です(笑)。『21st Century』は、ドクが夢みる豊かな未来が現実ではないというのが本当に皮肉ですよね。でも、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は映画もかなり皮肉めいた部分が多いので、理にかなっていると思います。さらに映画ファンに対しては、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』への目配せを送っているような立ち位置のナンバーでもあるんです」
バラード「これは映画には出てこない部分ですが、自由に音楽を作ることができました。過去においての未来予想図は、だいたい間違っているものです(笑)。現実をわかっているだけに、彼らの未来予想がいかに間違っているかは驚きでもありますしアイロニーでもある。実は『Cake』というナンバーも同様の皮肉が込められています。これはミュージカルのオリジナルシーンではありますが、映画と同じトーンを維持しているのです」
ランド「ミュージカル作劇の観点から語ると、この曲は休憩後の2幕をワイルドでクレイジーなナンバーで開けるという、50年代のミュージカルの構造をとったナンバーになっています。しかも中身は本筋とは無関係で、でもエンタテインメント性が高くてクレイジー。この楽曲中の背景映像には、ホバーボードやUSJのアトラクションに出てきた恐竜、タイムトレインなども出てくるんですよ」
画像16撮影:若林ゆり
――これから見る観客へのメッセージをお願いします。
ランド「この作品ではみなさんがよく知っている物語を、別バージョンで楽しむことができます。期待されるところはすべて盛り込んでありますよ。そして、おなじみなのに新鮮で、斬新な面白さがある。『映画と同じものが受け取れる』と同時に『ミュージカルを堪能できる』という、いいところ取りの作品です」
ゲイル「いままでに数え切れないほど『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part4』は作らないんですか?と聞かれてきました。でも私は、もし1作目と同じくらいの感動とワクワク感が出せるものができるなら作ろうじゃないかと思ってきました。今回のミュージカルは、まさにそれなんです。世界中でこのミュージカルを観た方は、『1作目を見たときのようにハッピー』だとか『ワクワクした』という感想を言ってくださる。初めて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の映画を観たときの感動を覚えているということだと思います」
画像17撮影:若林ゆり

開幕初日には、抽選で選ばれたラッキーな観客が、ときに歓声を上げ、大笑いし、涙を流して楽しみ、カーテンコールでは大喝采を送った。そこへ登場したゲイルらクリエーター陣も大感激。キャストと称え合い、喜びを分かち合った。

画像18撮影:若林ゆり

そのとき、ゲイルが舞台上で語った言葉でコラムを締めたいと思う。

「私とボブ(ゼメキス)が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を作りたいと動き始めた頃のことを思い出します。僕らの企画は、映画の専門家たちの審判を受けることになったんですが、実に42回も拒絶され、書き直しを強いられたのです。繰り返しますが、42回も断られたんですよ! 専門家は『こんなちっぽけなタイムトラベルの物語なんて誰も見たくない』と言った。彼らの意見に耳を貸し、諦めることもできました。とっととやめて、観た後ですぐ忘れられてしまうようなテレビの仕事で稼ぐ方が簡単でした。でも、私たちはそうしなかった。夢があったからです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という映画を作りたい、という夢が」
「それには4年の月日が必要でした。でも、結局は成功することができました。そしてボブと私は06年に、また新しい夢を見ました。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をミュージカルにしたい、という夢です。それも、自分たちのやり方で。私たちは、実に14年の月日をかけました。またもや周囲の拒絶にあいながら、耐えに耐えてきたんです。結局はまた成功することができた」
「この話をするのは、人々が夢を叶えようとするときには苦労がつきものだ、ということを知ってほしいから。道のりは険しく、孤独だし心は折れるし、苦労に満ちた道のりです。内なる力がないと、道は極められないでしょう。ここにいる才能あふれる俳優たちもそうだったはずです。ミュージシャンも、創作チームも、職人たちも。このショーをつくりあげた人々は、みんな同じような苦労を強いられながらがんばった。夢を叶えてくれた人々に、私は心からの感謝と敬意を送りたいと思います。みなさんもぜひ、夢を諦めないでください。お互いに優しく支え合い、応援し合っていきましょう。その夢が叶うまで」

ミュージカル「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は東京・竹芝のJR東日本四季劇場「秋」でロングラン上演中。詳しい情報は公式サイト(https://www.shiki.jp/applause/backtothefuture/)で確認できる。

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