本作は、2020年に新型コロナウィルスが蔓延したコロナ禍を背景に、登校や部活動が次々と制限され、さらには緊急事態宣言に直面し、大人以上に複雑な思いを抱えていた中高生たちの青春を、東京都渋谷区、茨城県土浦市、長崎県五島市を舞台に描く。昨年9月からそれぞれの町で撮影を行い、その土地に流れる空気や差し込む光、その場所でしかすくい取れなかった瞬間を紡ぎ、そこに息づくキャラクターを、ネクストブレイクが期待されるフレッシュなキャストたちが演じた。
新たに出演が発表されたのは、桜田ひより演じる主人公の溪本亜紗の同級生で、同じ天文部に所属している飯塚凛久をNHK大河ドラマ「べらぼう 蔦重栄華乃夢噺」に出演中の水沢。亜紗と凛久の一学年上の先輩の山崎晴菜を河村(「うちの弟どもがすみません」)。亜紗と凛久の一学年下の後輩の広瀬彩佳と深野木乃美をそれぞれ増井(「Broken Rage」)と安達(「交換ウソ日記」)が演じる。彼らは、辻村氏が原作小説を執筆する際、実際に取材した茨城県立土浦第三高等学校で撮影を行い、リアリティのある場所で芝居に臨んだ。
また、長崎五島の泉水高校吹奏楽部に所属する佐々野円華と福田小春に息吹を吹き込むのは「PERFECT DAYS」の中野、『か「」く「」し「」ご「」と「』の早瀬。同じく泉水高校3年生の武藤柊と小山友悟に和田(「エゴイスト」)と蒼井(「あのコはだぁれ?」)が扮する。都心で暮らす中学生の安藤真宙と中井天音には、「怪物」の黒川と「ゴールド・ボーイ」の星乃。泉水高校の生徒でありながら東京での生活を余儀なくされる輿凌士を萩原(「Cloud クラウド」)。都心部にある御崎台高校で物理部に所属する柳数生を秋谷(「ブルーピリオド」)がそれぞれ演じることが発表された。
本作のメガホンをとった山元環監督は、「コロナに負けない中高生達、ブレイブジェネレーションが主役の物語です。マスクで見えない表情、友人との距離感、先の見えない時間、そんなコロナ禍にあった壁を突破して、時代じゃ止められない青春の躍動を映画の中に詰め込みました」と意気込みを語り、「当時失われた青春と言われていましたが、壁があるからこそ、青く燃える春がある。過ぎていったコロナ禍の時代に、今に繋がる大切な時間がこの映画にはきっとあると思います」と追加キャスト発表に際してコメントを寄せた。
単行本書影(C)2025「この夏の星を見る」製作委員会 同名原作小説(KADOKAWA刊)は、コロナ禍という未曽有の事態のなか、悲しさ、もどかしさ、優しさ、温かさといった人々の思いを描き出し、幅広い世代からの支持を集めた。部活動を制限された中高生たちは、リモート会議を駆使して同時に天体観測をする競技「スターキャッチコンテスト」に挑む。茨城、東京、長崎五島の中高生が始めたこの活動はやがて全国に広がり、ある奇跡をもたらす。北海道新聞、東京新聞、中日新聞、西日本新聞、河北新報、山梨日日新聞の各紙に、21年6月~22年11月に順次掲載され、23年6月に単行本が刊行。6月には角川文庫、角川つばさ文庫で、それぞれ上下巻での文庫化が予定されている。
「この夏の星を見る」は、7月4日に全国公開。キャストがコロナ禍だった2020年の夏を振り返ったコメントは以下のとおり。
文庫本書影(C)2025「この夏の星を見る」製作委員会
はっきりと何かを思い出せはしないですが、世の中が凄いスピードで変わり始めた事は覚えています。当たり前に出来ていた事が出来なくなり、当時は学生だったので、色々な行事が無くなったり、遊びに行くのも出来なくなって何かと不満や不安を抱えていたと思います。
きっと、この時間があったからこそ、良くも悪くも自分自身と向き合う時間が出来たので、感情との付き合い方はほんの少しだけ上手になりました。色々な感情や葛藤を抱えた学生、大人達のひたむきな姿勢を、目で見て、音で感じてこの作品を楽しんでいただけると嬉しいです。
休校していた学校がやっと再開したけど、授業はオンライン授業、給食は黙食、机には飛沫防止の透明な板。いつも僕と世界の間にアクリル板が挟まっているような気分でいました。その年の夏休み、GoToキャンペーンで家族と海水浴旅行に行きました。真夏の暑さでホテルへの入場チェックの体温測定は爆上がり、ビーチでもマスク…今考えると笑っちゃうことばかりですが、海に入った瞬間、僕と世界を隔てていたアクリル板が一瞬だけ消えた感覚を今でもよく覚えています。
みなさんはコロナ禍をどう過ごしていましたか? コロナがあったから出逢えた人、逆にコロナがなかったらきっと出逢えたはずの人もいるだろうけど、この作品の中の彼らは囲まれたアクリル板を超えて繋がることができた。僕はこの作品を通して、どんなときも今を楽しんで生きていくことができるということを確信しました。
あの頃はあまりにも非日常過ぎて遠い過去の記憶のようになってしまったけど、ぜひこの作品を観てあの頃のことを振り返り、そして誰かと共有してくれたらうれしいです。
2020年の夏、学校は休校となり周りとも直接繋がれず、何をしていいのか分からなくなった時、私は映画に出会いました。家族と一緒に、夜が明けるまで古い映画を順に観ていきました。歴史や音楽、美術、演技… 私が知らなかった新しい世界がどんどん広がっていきました。
あの「
閉ざされた時間」はただの退屈ではなく、自分の未来を考える大事なきっかけとなり、これは自分を「解き放つ瞬間」でもありました。そしてこの経験が、私が演劇の道を目指すキッカケとなり、今の私に繋がる、大切な一歩だったと感じています。
2020年、中学一年生の夏。友達と自由に過ごせなかった日々。家でドラマや映画を見ていた時だけ、寂しさや孤独を忘れる事ができました。観ている人に笑顔や夢中になって貰える作品を届けたいという思いは、あの時助けられた自分がいたからこそ、今に繋がっています。この映画は、困難な状況下でも色々な事を乗り越えながら、目標を見つけて進んでいく物語です。人と人との繋がり、友情も描かれていますので、ぜひ大切な方と観ていただけたら嬉しいです。
2020年の夏、学校行事は中止になり、できない事が増えていきました。「皆さんにお話ししなければならない事があります」先生のこの言葉はいつも中止を告げる時の合図。先生も友達も悲しそうに諦めることしかできませんでした。常にマスクだったこの時期、友達の顔を見ることができなくて寂しかった。そんな中で唯一楽しかった事はマスクを使った表情当てゲーム。できないことが多かった中で楽しめることを考えて、私たちなりの楽しみ方で思い出を作りました。辛い時期だったけど、ゲームの間だけ見れるみんなの笑顔が私にとっては毎日学校に行く意味だったかもしれません。
デジタルカレンダーで遡ってみたら、2020年の7月と8月の欄にはポツンと内見とだけ書いてありました。高校を卒業してすぐに上京する予定が、半年遅れてやっと自分の部屋を探し始めた時です。
周りも自分も全てが止まってしまったかのような日々が続いていたのに、急に物事が進んで行くようで少し怖かった気持ちを思い出しました。それと同時に、やっと自分の夢を追いかけることができる喜びに満ち溢れていた気持ちも思い出しました。2020年の夏に感じたことを忘れないように大切にしようと思います。
2020年はカナダに留学をしていたのですが、コロナが原因で予定より一年早く帰国する事になりました。帰国後は映画の出演が決まり、撮影が始まったのですがコロナ禍の撮影現場はとにかく大変でした。真夏のロケで、スタッフ・キャスト全員が朝から晩までマスクを付けて一生懸命に撮影をしていたので、毎日クタクタだった事を覚えています。また、当時は中学3年生だったのもあり、進路について考えていた時期でもありました。
今作の台本を読んだ時、留学時代に友人とビデオ通話をしながらギターのセッションをしたことを思い出しました。その時の気持ちは今も心に残っています。もし、遠距離を理由に自分がやりたいことを諦めてしまっている人がいたら、是非この映画をご覧ください。きっと何かのきっかけになると思います。
2020年は高校生で、高校に通っていました。遠回りしながら下校するのが好きで、公園とかに行っていました。いや、もちろん他にも趣味や好きなことはありましたが、パンデミックの影響で制限されてしまいました。当時の僕は「好き」を誰かと共有したり、熱中したりをしなかった(諦めてしまった)ので、この映画の登場人物が眩しくて仕方ないです。
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2020年の夏、僕は高校2年生でした。僕が通っていた高校の文化祭は毎年10月に開催していたのですが、何とか開催に向けて文化祭委員会のみんなとオンライン等を活用しながら、奮闘していた記憶があります。諦めるという言葉は生徒、先生共にありませんでした。
この映画に出てくる登場人物たちの“この”星を見るべく様々に奮闘していく姿は、皆さんにも共感してもらえるものになっているのではないかと思います。公開までもうしばらくの間、楽しみにお待ちいただければ幸いです。
2020年、中学2年生だった私は「コロナの夏」を経験しました。友達と会えず、オンライン授業の毎日。マスクをして過ごすのが当たり前になり、テレビでは連日、コロナの感染者数が公表される殺伐とした日々。いつまでこの生活が続くのかという不安と孤独。でも、その中で気付かされたこともありました。当たり前の日常がどれほどありがたいものだったのか、深く考えさせられた特別な夏でした。
■安達木乃
いつまで自粛生活が続くのかと不安が募りつつも何とか夏を楽しみたいと、家で流しそうめんをしたり、ピザやチュロスを作ってベランダでピクニックをしたりしていました。
また、一日中家で配信されている映画やドラマを観たりと、このお仕事を始める前の私にとっては夢の世界に飛び込むための助走期間だったのかもしれません。
日常が日常でなくなってしまったからこそ、普段なら見過ごしてしまうような小さな幸せにも温もりを感じられた夏でした。 今作を観て、あの頃の小さな幸せや温もりを思い出していただけたら嬉しいです。
形だけの小学校の卒業式を終えて、中学に入学してからも終わりは見えず、コロナが全ての物事の前提になってきたのが2020年の夏頃だったと思います。マスクが店頭から消え、給食は前を向いて食べて、友達の素顔を見て話せない。 自分が生きていたあの時代に、俳優としてこの作品を通してリベンジできることは、凄く幸せなことです。映画を観てくださった方のあの夏の思い出に、少し輝きを足せることができたら、凄く嬉しいです。