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片渕須直監督「つるばみ色のなぎ子たち」進捗報告 “公務員”清少納言の働き方を解説、最新映像更新で「1000年前の人たちがちゃんと生きているように描きたい」

2025年3月20日 16:15

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新作「つるばみ色のなぎ子たち」の進捗を報告した片渕須直監督
新作「つるばみ色のなぎ子たち」の進捗を報告した片渕須直監督

第3回新潟国際アニメーション映画祭で、片渕須直監督が新作「つるばみ色のなぎ子たち」の進捗を語るトークイベント「『つるばみ色のなぎ子たち』の人物を垣間見る ―平安時代の働く女性たち―」が3月20日に新潟日報メディアシップで開催され、最新のパイロット映像とともに、片渕監督が進行状況などを語った。

片渕監督の本映画祭参加は昨年に続き3度目。新作「つるばみ色のなぎ子たち」の進捗を、パイロット映像と様々な資料画像とともに紹介した。映画は平安時代の京都を舞台にしたオリジナル作品。「枕草子」の清少納言が生きた1000年前、疫病がまん延して数万人の死者が出て、時代が大きく変化していくなかで、日常のなかに希望を見いだしながら生きる少女たちの姿が描かれる予定だ。

パイロット映像は、千住明氏の音楽をバックに、蚊を媒介に疫病が流行していく平安京の様子や、寝床で腹ばいになって無心に何かを書く少女の姿が映し出される。「枕草子」の一節「筆も使ひ果てて、これを書き果てばや この草子は、目に見え心に思ふ事を、人やは見むずると思ひて、書き集めたるを」の文字で締めくくられる。これまでのパイロット版から狼や狐が登場するシーンが追加され、「平安京に狼がおり、内裏の中に入ってきたという記録があった」と片渕監督。

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「『枕草子』を読み込むのに5、6年かかりました。わからないと絵になりませんから」と清少納言が生きた時代を考察する膨大なリサーチを行っており、清少納言や中宮定子以外の人物の詳細や身分、また内裏の各部屋の使い方などを資料とともに説明する。

清少納言は、女房という皇后の身の回りのことや秘書的な役割をする仕事で、女房の中でも上臈(じょうろう)女房、中臈(ちゅうろう)女房とランク分けがあり、清少納言は中臈女房だったということが分かった。「天皇とも頻繁に顔を合わせており、ある程度の身分や役職を持っていた公務員だった。出勤票もつけていたし、五位になると田んぼがもらえた。これは年金がついているということ。そういう身分だった」「しかし、仕事がいやになり途中でドロップアウトしたと、『枕草子』に書かれている」と清少納言の具体的な仕事について報告する。

また、「清少納言は気楽な身分だったので、趣味の寺巡りをしたり、数日寺にこもったりもしていた」という一面も紹介。定子の死去で一度内裏を離れた時期があり、復職するも「中臈女房のトップにはなったが、上臈女房になれなかった。立場が変わって歌で男性の対応をするような仕事も担当した。上の人たちがいなくなって中間管理職のような仕事をせざるを得なかった」と働く女性として職場のポジションや業務の変化についても語り、「枕草子」は仕事の一環ではない、清少納言が個人的な理由で書いたものと紹介した。

清少納言は中宮には女房が20人くらいついていると「枕草子」に書いており、女房の中でも、出勤簿を管理する人、恋人が多かった人、琵琶の名手など様々な女性がいた。「人を描き分けなければいけない根拠が出てきた。20人のパーソナリティがわかって、キャラクター付けができるとわかった。そこから映画ができるな、と企画が始まりました」と振り返る。

季節の衣替えで変わる衣装や素材、デザインなどの苦労は昨年報告されたが、「一番大変なのはキャラクターデザイン」と吐露。「全員の顔を作って、冬服、夏服も作るので死にそうになっています。あとは立った時の身長の比較」と、キャラクターの身長を比較する暫定的なスケッチ画をスクリーンで公開した。

「髪の色も同じ、服装も同じ。今はピンクや緑の髪のキャラクターも作れるけど、当時は茶髪もいない。ですから顔で変化を付けなければいけない。年齢差もあまりない。清少納言は20代後半くらい。一番年長者も40代手前だし、10代も多い。定子も高校生くらいなので、ほぼ全員10代といった感じ。それと同じ世界に犬や狼や狐、疫病に倒れた人たちが同じ世界にいる」と、映画の世界観を解説する。

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歴史的考察と並行し、長期間を要するアニメーション制作作業が待ち受けるが「1000年前の人たちがちゃんと生きているように描きたい」と意気込む片渕監督。本日より、公式YouTubeチャンネルは、この日上映された最新パイロット映像に更新されるという。

「『春はあけぼの』のようなある種のポエジーみたいなものだと思われる方も多いと思います。そこには政治的な思惑、あるいは疫病などが背後にありながら、言葉を選ばずに言うと、清少納言はのんきなものを書いていた。紫式部は『枕草子』がのんきすぎると文句をつけていますが、それくらい同時代の人から見ても、清少納言はいろんなものをあえて書いていない。ですから、その書いていない部分について、パイロットフィルムの中でいくつか触れました。だけど、もっとたくさんのことがあって、清少納言や定子のいた時代、世界が出来上がっているわけです。お正月の百人一首のイメージのようなところから広げて、できるだけその世界を感じていただけるように」とこれから描き出す平安時代へ思いを馳せていた。

第3回新潟国際アニメーション映画祭は3月20日まで開催。最新情報は随時公式サイト(https://niaff.net)で告知している。

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