AI時代に淘汰されるエンタメ、価値あるエンタメとは? 西野亮廣がコマ撮りアニメーションに惹かれる理由、ドワーフ松本紀子とトーク
2025年3月19日 10:10

新潟市で開催中の第3回新潟国際アニメーション映画祭で「ドワーフ特集」の上映が3月18日、新潟日報メディアシップ日報ホールであり、スタジオ・ドワーフプロデューサーの松本紀子とゲストの西野亮廣がトークを行った。
第97回アカデミー賞の短編アニメーション部門のショートリスト(15作品)に選出された、コマ撮り短編作品「ボトルジョージ」の製作総指揮を執った西野。お酒の瓶に閉じ込められた毛虫のような生き物ジョージがある日小さな少女と猫に出会う。依存症と家族をテーマにした13分の物語だ。
AIがコマ撮り風のものを作ってくれる時代に、なぜ今コマ撮りでアニメーションを作るのか? という問いを西野に投げかける前に、松本は「私はあまりAIに抵抗感はないのですが、アニメーション業界ではAIが脅威になっていて、割とヘイトが多い」と生成AIに対する業界の温度感を告げる。

西野は「自分はアニメーション以外にもいろんなエンタメに手出してる人間ですが、どのシーンでもこのAIの問題っていうのは出てきています。自分はアンカーと呼んだりするのですが、例えば、土地、時間、思い出、愛着……樹齢1000年の木や、中学生の頃の思い出をAIに作ってくれと言っても生成することは難しい。あとは、『お前のこと気に入った!』みたいな(感情)。そういったものが絡んでないエンタメ全て淘汰されるんです。だからこそコマ撮りはすげえ面白い」と述べる。
そして、現在、LPレコードの売り上げが上がっているが、プレイヤーを所持せずジャケットを目当てに購入する人が多いこと、しかし、中身のレコードがないジャケットだけでは売れないというエピソードを披露する。「あの黒い円盤が入ってようが入ってまいが一緒のはずなのに、入ってないやつは全然売れなくて、入ってるやつが売れてる。しかも入ってる方が高いんです。それをみんな買って、中を抜き取らない。これって人はそこに価値を感じる要素があるんだろうなって。そこで、コマ撮りは、手かかってそうで、実際手がかかってるし、その背後にその職人さんの顔や手が見える。そしてその時間。コマ撮りという時点で、すごく時間がかかってるっていうことを僕たちは認識し、価値を覚える。これまでと違うエンタメの味わい方が始まっている」と語る。

そういった西野の考えから、松本は「ボトルジョージ」クリエイターの制作過程を見学させるツアーを行った。「AIはプロセス、制作過程を作るのが苦手で、いきなり完成品を出してしまう。だからそこをどんどん打ち出していって、お客さんには(作品制作に対する)思い入れみたいなものを作ってもらえることが良かった」と西野。
「プロセスに目を向けたほうがいい。ダイヤモンドが高いのはきれいだからですが、ガラスだってきれい。ダイヤモンドは数が少ないという希少価値が価値そのもの。そう考えたときに、作品は完成してしまったらいつでも見れる。でも制作過程はその瞬間しか見れない。希少価値っていう観点で作見た時に、制作過程の方が絶対に価値高いんです。完成してる東京タワーは明日も明後日も10年後も見れますが、建築途中の東京タワーはもう見れないですから。そう考えると、なぜか僕たちは完成品を売るという、希少価値の低いものでマネタイズしてしまってる。もしかすると、制作過程の方が希少価値が高いから、そっちでマネタイズしてどんどん売っていく。つまり体験や見学会みたいなものを売って、完成品はむしろ0円でいいんじゃないか」という持論を展開した。

松本も「一緒に作っている人がいる、そんな気持ちになるのは間違いない。コマ撮りは細かい作業だから、外の人が見に来るのは(クリエイターが)嫌がるでしょ? なんて言われますが、やっぱなんだかんだ言って、『わーっ!』とか言われるとスタッフの気持ちも上がるんです」「粛々と制作するのが美学でもなくて、やっぱり一緒にみんなで作って、注目されて、プロセスもいいよって言ってもらえるのは、スタッフとしてもうれしい」と観客との制作過程の共有に意欲的だった。
第3回新潟国際アニメーション映画祭は3月20日まで開催、チケットは好評発売中。最新情報は随時公式サイト(https://niaff.net)で告知している。
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