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アピチャッポン・ウィーラセタクンの音の作り方 「MEMORIA メモリア」をめぐる音をサウンドデザイナー清水宏一と批評家の佐々木敦がトーク

2025年3月10日 18:00

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「MEMORIA メモリア」
「MEMORIA メモリア」
Photo: Sandro Kopp (C) Kick the Machine Films, Burning, Anna Sanders Films, Match Factory Productions, ZDF-Arte and Piano, 2021

東京・東京都現代美術館で開催中の展覧会「坂本龍一|音を視る 時を聴く」開催を記念した、109シネマズプレミアム新宿での坂本龍一関連作品の上映イベント「Ryuichi Sakamoto Premium Collection」で、アピチャッポン・ウィーラセタクンの監督作「MEMORIA メモリア」(22)が3月9日上映され、本作にサウンドデザイナーとして参加した清水宏一氏と批評家の佐々木敦氏がトークを行った。

ティルダ・スウィントンを主演に迎え、2021年・第74回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞したドラマ。舞台は南米コロンビア。とある明け方、ジェシカは大きな爆発音で目を覚ます。それ以来、彼女は自分にしか聞こえない爆発音に悩まされるようになる――という物語。

画像2Photo: Sandro Kopp (C) Kick the Machine Films, Burning, Anna Sanders Films, Match Factory Productions, ZDF-Arte and Piano, 2021

本作鑑賞は公開以来2度目だという佐々木氏は「アピチャッポンの映画っていつも謎ですが、これも本当に謎の映画。この劇場の音が素晴らしいので、初見の時に聞こえてこなかったような音がたくさん聞こえていた」と感想と本劇場での気づきを述べる。本作に参加した清水氏も、「音を作り直してるんじゃないかなっていうくらいびっくりしました」と驚きのコメント。

長年、音楽活動をしている清水氏は2003年にタイに移住し、たまたま現地で見た「ブリスフリー・ユアーズ」(02)、「トロピカル・マラディ」(04)に感銘を受け、清水氏と交友のあった第1作からアピチャッポン作品にかかわるタイのサウンドデザイナーのリット・アクリチャレルム・カラヤナミトル、通称リット氏からの紹介で「世紀の光」(06)から参加し、「MEMORIA メモリア」では主人公のジェシカを演じるティルダ・スウィントンが聞く爆発音をはじめとしたサウンドデザインを担当した。

サウンドデザイナー清水宏一氏(右)と批評家の佐々木敦氏
サウンドデザイナー清水宏一氏(右)と批評家の佐々木敦氏

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督との仕事でのかかわりかたについて「監督自身がインスパイアされる音を常に探してて、どういう音が欲しいとか、どういうシーンに使いたいなど、具体的な説明はされないんです。まさにこの『MEMORIA メモリア』での録音スタジオのシーンでのティルダのような伝え方です。キーワードだったり、ときには詩などを渡されて……」と明かす。

「この映画では監督が自分の音、音楽の作り方を再現しているのかもしれないですね」と佐々木氏。清水氏は「まさにそうです。監督自身がモデルとは言わなくても、やっぱり自分で説明できるものがシナリオになってくと思うので、やはり監督だなっていう感じがしました」と振り返る。

画像4Photo: Sandro Kopp (C) Kick the Machine Films, Burning, Anna Sanders Films, Match Factory Productions, ZDF-Arte and Piano, 2021

そして、「この映画の中の音は監督が日常聞いているもの。監督はふだん音楽は聴かない方なのです。だから、生活に音楽が鳴っていない方だと思うんです。僕のような立場からすると違和感はあるけれど、監督にとってはそれが普通で。だから、音楽の知識がない方なりの伝え方として、画で想像できるような、きれいな詩だったり説明で、しかもそれは映画とは全く関連のないものだったりする」と、独特のリクエストに応じているという清水氏。

MEMORIA メモリア」の物語で重要なキーとなる爆発音は、舞台映像作品「フィーバー・ルーム」で、アピチャッポンの「物音ではなく、実際に鼓膜が揺れる音ではなくて、頭の中で鳴っている生理音、頭の中で響いてる音を作れないかというリクエスト」から始まり、発展していった音だったそうで、「『MEMORIA メモリア』は今までの作品の中で1番音的にハードコア」と断言する。

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佐々木氏は「これまでの映画とは作られ方が全然違って、タイでは撮られておらず、ティルダ・スウィントンジャンヌ・バリバールといった有名人が出演し、ずいぶんと違うフェーズに行った作品であると公開当時から思っていましたが、一方で、遺跡や病室、雨、眠りなど、『ブリスフリー・ユアーズ』の後半に似ているシーンもあり、これまでのアピチャッポン・ウィーラセタクンの映画の重要なモチーフがいろんな形で入っている、一種の集大成」

「この『MEMORIA メモリア』は音の映画。爆発音から始まることはもちろん、それ以外の部分でも音が主役の1人のよう。特に後半の最後の方では雨や水などいろんな音が鳴って、急に無音になる。無音になった時に、驚きがあり、無音という音を聞いているような感じがある。僕は、アピチャッポンのイメージの連鎖や跳躍はすごいなとかねがね思っていましたが、耳もいい方なんだとこの作品で改めて思った」「長回しのシーンでも、音だけはものすごくいろんな音が鳴ってくるので、耳の方がどんどん覚醒していく」と評する。

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そのほか、ふたりは「オリジナリティの塊」というアピチャッポン作品の特徴や、清水氏が現場で感じたアーティストとしてのアピチャッポン・ウィーラセタクンの姿についてなどの話題に花を咲かせる。現在監督は、過去作の4Kリマスター版を作成中とのことで、「ここでやっていただきたい。ここで見てしまうと、もうここでしか見れなくなってしまう……」と清水氏がつぶやくと佐々木氏も強く同意し、抜群の音響環境を備えた109シネマズプレミアム新宿での上映を熱望していた。

MEMORIA メモリア」は3月13日まで、109シネマズプレミアム新宿で上映中。「Ryuichi Sakamoto Premium Collection」は3月27日まで開催。スケジュールは公式HP(https://109cinemas.net/entryform/ryuichi-sakamoto_collection/)で告知している。

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