第97回アカデミー賞受賞スピーチ集　壇上からまさかのおねだりから、力強い家族の歴史まで

2025年3月3日 18:00

オスカーを獲得したエイドリアン・ブロディ、マイキー・マディソン、ゾーイ・サルダナ、キーラン・カルキン Photo by Maya Dehlin Spach/Getty Images

インディペンデント映画「ANORA アノーラ」が作品賞を含む最多5部門を制した第97回アカデミー賞。授賞式では、各部門の受賞者たちが、時にパーソナルな、時に社会問題について、ドラマティックなスピーチを披露した。主要な部門の受賞スピーチを集めた。

▼助演男優賞
キーラン・カルキン「リアル・ペイン　心の旅」
「なんてことだ、すごい。ロバート・ダウニーJr.、まさかあなたにこのトロフィーを渡されるとは。本当に光栄です。ありがとう。

それにしても、彼の言う通りだ。ジェレミー（・ストロング）、君は『アプレンティス　ドナルド・トランプの創り方』で本当に素晴らしかった。でも、特定の人を褒めるのはルール違反らしいから、これ以上は言わないでおくよ。とにかく、君は最高だった。

準備していたスピーチは完全に吹っ飛んだ。どうやってここまで来たのか、自分でも見当がつかない。僕はただ人生を通して演技を続けてきただけ。それがこんな風につながるなんて思ってもみなかった。だけど、ここに来られたのはエミリー・ガーソン＝セインズのおかげだ。30年間も僕のマネージャーでいてくれて、本当にありがとう。君がいないと、僕は完全に迷子になる。だから絶対にどこにも行かないでくれ。

そして、この映画。ジェシー・アイゼンバーグ、ありがとう。君は天才だ。でも、君の目の前では絶対に言わないし、もう二度と言わないから、今のうちに味わっておけよ。

ありがとう、サーチライト、トピック・スタジオ、デイブとアリー。ちょっと早口になるけど、ジョン・リスゴーをがっかりさせたくないからね。大丈夫、今のところ君はカッコよく見えてるよ（笑）。そして、母さんとスティーブにも感謝を。僕をちゃんと育てようとしてくれてありがとう。本当にいい人たちだよ。できる限りのことをしてくれた。愛してるよ、母さん。

それから、ジェス、愛してる。僕の人生において、最も大切な人たちを授けてくれた君に、心から感謝してる。ジェスについて本当に短い話をさせてほしい。1年前、僕はこんな舞台（エミー賞授賞式）でものすごくバカなことを言ったんだ。『3人目の子どもがほしい』って。ジェスが『受賞したら、子どもをもう一人つくるわよ』って言ったからなんだけど、実は彼女、僕が受賞するとは思っていなかったんだ。

授賞式の後、駐車場を歩いている時、彼女は『そういえば言ったわ。じゃあ、3人目をつくらなきゃ』。でも僕は『本当に？　でも僕は4人ほしい』って答えた。すると彼女は、僕を見てこう言ったんだ。『じゃあ4人目を産むわ、あなたがオスカーを獲ったらね』。本当に起こったことなんだ。誓ってもいい。ちょうど1年前の話だよ。だから僕は彼女に手を差し出した。彼女はその手を握った。

そして今までこの話を一度も持ち出さなかった。ねえジェス、覚えてるよね？　じゃあ、これだけ言わせてくれ。プレッシャーはかけないけどさ。でも、愛してる。本当にごめん。またこんなことをやっちゃったよ。さあ、そろそろ子どもをつくらないかい？　どう思う？」

▼助演女優賞
ゾーイ・サルダナ「エミリア・ペレス」
「ママ！　母が来ています。家族全員がここにいます。この名誉に圧倒されています。アカデミーの皆さん、この賞をありがとう。リタのような女性に宿る静かな英雄性とその力を認めてくれて感謝します。

そして、強い女性たちといえば、共にノミネートされた皆さん。あなたたちが私に示してくれた愛とコミュニティは、私にとって本当にかけがえのない贈り物です。この恩を、私は必ず次の世代へとつないでいきます。心からありがとう。

ジャック・オーディアール、あなたは私の人生において永遠に愛される存在です。あなたがこの物語に興味を持ち、これらの女性たちに好奇心を抱いてくれたことに感謝します。

『エミリア・ペレス』のキャストとクルー、私はこの賞を皆さんと分かち合います。Netflix、テッド、リサ、ベラ、皆さんのサポートに感謝します。CAAの素晴らしいチーム、私のマネージャー、弁護士の皆さん、そしてリードカンパニーのパワフルな女性たち、あなたたちの導きに感謝します。いつも深夜のメールにも返信してくれてありがとう。

ママ、パパ、そして姉妹のマリエルとセシリー。私が人生で成し遂げた勇敢で、無謀で、素晴らしいことのすべては、あなたたちのおかげです。本当にありがとう。そして、私の夫。美しい髪を持つあなたへ。あなたのパートナーであることが、私の人生最大の誇りです。私たちの完璧な息子たちは、私たちの空を毎晩輝かせてくれる星です。

私の祖母は、1961年にこの国へやってきました。移民の両親を持つ子どもであることは私の誇りです。夢と尊厳、そして働き者の手を持つ者として、私はドミニカ系アメリカ人として初めてアカデミー賞を受賞しました。でも、私が最後ではないと信じています。スペイン語で歌い、話す役を演じて受賞できたことは、私にとって特別な意味を持ちます。もし祖母がここにいたら、きっととても喜んでくれたでしょう。この賞を、祖母のアルゼンティーナに捧げます。

本当にありがとう。ムーチャス・グラシアス」

▼主演男優賞
エイドリアン・ブロディ「ブルータリスト」

「神様、ありがとうございます。この恵まれた人生に感謝します。まず、私が感じている世界中からの溢れるような愛と、私を敬意と感謝をもって扱ってくれたすべての人々に、謙虚な気持ちで感謝を捧げたいと思います。私は本当に幸運です。

役者という仕事は、とても繊細なものです。見た目は華やかですが、確かにそういう瞬間もありますが、ここに戻ってこられる特権を得て、私はある視点を持つことができました。

どんなキャリアの段階にいようと、どんな業績を成し遂げようと、それらはすべて一瞬で消えてしまう可能性がある。そして、今夜を特別なものにしているのは、その認識と、私が今もなお愛する仕事を続けられていることへの感謝です。

このような賞を受賞することは、一つの到達点を意味します。それは、私が映画の中で演じたキャラクターが語っていたことでもあります。しかし、私にとってこの賞は、単にキャリアの頂点ではなく、新たなスタートのチャンスでもあります。これからの20年間、私はこの栄誉ある賞にふさわしい俳優であり続けることを証明し、意味があり、重要で、今の時代に必要とされる役を演じられるよう、努力していきたいです。

この賞を、私の共演者であり、素晴らしい人間性と優雅さ、そして卓越した才能を持つ他のノミネート者の皆さんと分かち合います。感謝を伝えたい人は本当にたくさんいます。できるだけ手短にします。私のチーム、アンドリュー・ソールズ、CAAの友人たち、リンジー・ギャレン、ヘザー、A24、フォーカスユニバーサル、私たちを信じてくれた皆さん、ありがとうございます。

そして、ブレイディとモナ、インディペンデント映画のために尽くしてくれたこと、美しい精神を持ち、この素晴らしい作品の中で私に存在する場を与えてくれたことに感謝します。共演者のガイ、フェリシティ、君たちは本当に素晴らしく、愛すべき存在です。この賞を君たちと分かち合います。

そして、私の素晴らしいパートナー、ジョージナ。君は私に自分の価値を取り戻させてくれただけでなく、人生の価値観を新たにし、何が本当に大切なのかを教えてくれました。君の美しい子どもたち、ジェットコースターのような日々だったと思うけど、僕を家族の一員として受け入れてくれてありがとう。そして、パパ！　僕は勝者として家に帰るよ！」

▼長編アニメーション賞
「Flow」
ギンツ・ジルバロディス監督「アカデミーの皆さん、ありがとうございます。CharadesとJanus(films)、ありがとうございます。そして、お父さん、お母さんありがとう。私の猫と犬もありがとう。

私たちの映画がこれほど温かく迎えられたことに、本当に感動しています。この受賞が、世界中のインディペンデントアニメーション映画の作り手たちに新たな道を開くことを願っています。

今回、ラトビアの映画が初めてノミネートされたことは、私たちにとって本当に大きな意味を持っています。とても励まされましたし、また戻ってこられることを願っています

私たちは皆、同じ船に乗っています。違いを乗り越え、協力する方法を見つけなければなりません。本当に、ありがとうございました」

▼長編ドキュメンタリー賞
「ノー・アザー・ランド　故郷は他にない」
バーセル・アドラー監督「アカデミーの皆さん、この賞をありがとうございます。このドキュメンタリーを支えてくださった皆さんにとって、そして私たち4人にとって、大きな名誉です。

約2か月前、私は父になりました。私の娘が、私が今生きているような人生を送らなくても済むことを願っています。常に自己監視を感じ、家が破壊され、森に追いやられる――そんな日々を、私のコミュニティであるマサーフェル・ヤッタの人々は、イスラエルの占領下で毎日耐え続けています。

どの土地よりも、この地こそが、私たちが何十年にもわたって経験し、今もなお耐え続けている厳しい現実を映し出しています。私たちは世界に訴えます。この不正義を止めるために、パレスチナ人の民族浄化を止めるために、真剣な行動を取ってください」

ユバル・アブラハーム監督「私たちはこの映画を、パレスチナ人とイスラエル人がともにつくりました。なぜなら、私たちは一緒になることで、より強い声を持つことができるからです。私たちは理解しあっています。ガザの恐ろしい破壊、そしてその人々の苦しみは、終わらなければならない。10月7日の犯罪によって残忍に囚われたイスラエル人の人質たちは、解放されなければならない。

私がバーセルを見るとき、私は兄弟を見る。しかし、私たちは平等ではありません。私は自由で、市民法の下で生きています。しかし、バーセルは軍法のもとで生き、彼の人生を破壊するシステムの中にいて、自分の運命をコントロールすることができません。違う道はあります。民族的優位性のない政治的解決策があり、双方の人々の国家的権利が尊重される道があるのです。

そして、今ここで言わなければなりません。この国の外交政策が、この解決への道を阻んでいます。なぜでしょう？　私たちが深く結びついていることが、なぜ見えないのでしょうか？　私の人々が本当に安全になるのは、バーセルたちが本当に自由で安全になったときだけなのです。別の道があります。人々が生きるために、まだ間に合います。ほかに道はないのです」