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【インタビュー】記憶に翻ろうされる男女の“終着点”とは? カンヌ・ベネチア常連のミシェル・フランコ監督が語る

2025年2月19日 14:00

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冒頭から予想外の展開が連続する「あの歌を憶えている」
冒頭から予想外の展開が連続する「あの歌を憶えている」
(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

主人公は、シングルマザーのシルヴィア(ジェシカ・チャステイン)。彼女はある日、高校の同窓会に参加した帰り道、同窓会で話しかけてきた男に、自宅までつけられることに。大雨にも関わらず一晩中、家の前にいたその男・ソール(ピーター・サースガード)はやがて、若年性認知症だということが明らかになる――。

冒頭から予想外の展開が連続する「あの歌を憶えている」が、2月21日に公開される。映画comは、「或る終焉」「ニューオーダー」など、世界の映画祭で受賞を重ね、新作「Dreams(原題)」が第75回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に選出された、メキシコの俊英ミシェル・フランコにインタビューを敢行。脚本づくりで大切にしていること、チャステイン、サースガードの素晴らしかった点、音楽のこだわりなどを、語ってもらった。(取材・文/編集部)

画像2(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023
――本作の着想のきっかけや、「記憶をめぐり葛藤する男女の再生」というテーマに興味をひかれた理由を、教えてください。

テーマを探るという脚本の書き方をしないので、この質問に答えにくいのですが、今回はこういう風にしました。ある男がいて、女の人の後をつけていく、最初は怖い感じにする。そういうシーンが浮かびました。なぜそんなことをするのか、彼は誰なのか、自分なりに理解しようとしました。つまり、自分でも自分を驚かせるようなことです。ストーリーや脚本を書く作業は非常に内省的なもので、自分を深く知るための作業だと思っています。

ミシェル・フランコ監督
ミシェル・フランコ監督
(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023
――フランコ監督は、時に暴力的な描写とともに、人間の本質を見つめる作品を製作されています。そうした過去作を考えると、イメージをがらりと変えられた新境地という印象をもちましたが、新たな挑戦はありましたか。

私にとって、映画製作は全てのことがチャレンジです。なるべくリアルにする、生き生きさせること。そういう意味で、どの映画も作ること自体がチャレンジです。キャラクターやシーンが、観客にとってリアルに見えることはとても難しいのです。人工的に見せないようにすることです。そういう意味では、この映画はほかの映画とは違わないと思っています。

また私の映画全てには親切心や優しさが多く描かれていると思います。ただこの映画はすごく違うと皆さんに言われるのです。すごく嬉しいことです。毎年映画を作っていますが、同じことを繰り返したくないと思っているので、そういう意味では、感謝を伝えたいです。

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――ジェシカ・チャステインさん、ピーター・サースガードさんが出演することになった経緯、ふたりの素晴らしかった点などを教えてください。フランコ監督はインタビューで、「周囲に『オスカーを取ってしまったから、彼女は君の映画からは下りるだろう』と言われました」とおっしゃっていましたが、チャステインさんにとっても、オスカー受賞後の次の作品として本作を選ばれたわけで、強い思い入れを持っていらっしゃると思います。撮影のなかで、そうした思い入れを感じるエピソードはありましたか。

ふたりとも、とても演技に対して情熱があるのです。ふたりとも自分のことをハリウッドスターと思っていませんし、ジェシカについていえば、舞台をやり続けているし、常に新しいものを探していると思います。オスカーを受賞したことは素晴らしいことだと思います。どんな賞でも受賞することは素晴らしいと思います。ピーターは、この作品でベネチア国際映画祭男優賞を受賞しました。

それ自体は素晴らしいことですが、受賞したかどうかによって、映画への彼らの情熱には影響を与えないと思います。彼らは常に情熱を持っています。ただ成功したり受賞したりすることで、人はより優しくなって、一緒に仕事をしやすくなるということはあるかもしれません。

画像6(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023
――劇中では繰り返し、英ロックバンド「プロコル・ハルム」の「青い影」が印象的に使われています。「ソールが唯一覚えている、亡き妻との思い出の曲」として選ばれた理由をお聞かせください。

いくつもの理由があります。私が大好きな曲だというのは非常に大きな理由なのです。そしてこれが1番大きな理由ですが、メロディがとても力強いのです。

あの曲はバッハの「G線上のアリア」が基になっていて、ロックバージョンにアレンジされたものです。ふたりが感じているメランコリックなものを、あの2、3コードで表現しているものがメロディで、すぐに観客に伝わるのだと思います。

歌詞はあの歌が出てきた1960年代から何を言っているのか議論されていて、誰もよく分かっていない歌詞ですが、だから逆に良かったのです。「こういうラブストーリーだよ」と分かりやすく説明しているものだとしたら、安っぽくなってしまうと思いますし、そんなことをしたら観客に失礼だと思いました。歌詞の中身がよく分からないというのも良かったのです。

画像7(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023
――劇中では、シルヴィアが家事をするシーンが多く挿入されていたことが心に残っています。また、ソールとの再会シーンで、掃除機の音で気付かない……という描写も、ほほ笑ましかったです。フランコ監督が、家事のシーンにこめた意図などがあれば、教えてください。

彼女はシングルマザーなので、家事をしますね。娘も手伝っていますが、それが彼女の日常生活です。お料理もしているわけですが、スタッフがオムレツか何かを作って、ほとんど出来上がっているのを見せて、「これをシーンに使ってください」と言いました。私は、「彼女はノーというだろうな」と思ったら、やはりノーとおっしゃって、「ゼロから自分で作る」と。そういう風に、ジェシカさんはとても普通の方です。そしてそうすることが、演技の助けになるとも思います。セットはすごくシンプルだったし、クルーも小さかったので、とても良い雰囲気でした。

画像8(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023
――本作では、シルヴィアとソールを通して、記憶の光と影が描かれています。また同時に、「捨て去りたいと思っても消えない。心に残しておきたいと願っても忘れてしまうこともある」という、記憶の不思議さも感じました。フランコ監督は、「記憶とは、本当にその影から逃れられるかどうかなのです」ともおっしゃっていましたが、本作を通して、記憶というものについて考えられたことがあれば、お聞かせください。

私自身も、自分の脚本を読んで驚きました。別に記憶について書こうとしたわけではないのですが、彼女は過去の記憶から解き放たれようとして、彼は記憶を失っていくことで苦しんでいるとのです。私は意図して書いたわけではないのです。わざわざ映画をデザインするのは大嫌いなのですが、そういうものが出来上がったので、それを受け止めたのです。

画像9(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023
――シルヴィアとソールが迎える結末は、地に足のついたリアルな“再生”だと感じました。過去の影に引きずられても、記憶が失われても、それでも人生は続く……そんな厳しさをもかみしめるかのような結末でした。フランコ監督はどのような思いをもって、本作におけるふたりの終着点を描かれたのでしょうか。

映画にとって非常に自然なエンディングだったと思います。エンディングは、この映画での一番若いキャラクター、あまり世の中に毒されていない人が、非常に成熟した決断をして、ふたりをつなげたのです。希望というのは、若いキャラクターがそうしたことであって、ふたりが再び結びついたことではないと思うのです。いまの若い世代というのは、正しくて、頭も心もしっかりしていると思うので、そういう意味で希望があると考えています。

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