洋画鑑賞に欠かせない「字幕」、その歴史と文化をたどる企画展、現在開催中
2025年2月14日 11:00

「映画の字幕は、どうやって作られているのか?」 映画を見ていて、誰でも一度はそう考えたことがあるだろう。そんな洋画ファンは現在、鎌倉市川喜多映画記念館(神奈川県鎌倉市)で開催されている「映画字幕翻訳の仕事 1秒4文字の魔術」という企画展をぜひ訪れてみてほしい。

字幕の歴史は古く、日本で初めて字幕スーパーの入った作品は、1931年(昭和6年)2月に公開されたジョセフ・フォン・スタンバーグ監督、マレーネ・ディートリッヒ、ゲイリー・クーパー共演のトーキー映画「モロッコ」。手がけた田村幸彦(たむらよしひこ)を始め、清水俊二、高瀬鎮夫、秘田余四郎(ひめだよしろう)らによって、 日本における洋画(または洋画鑑賞)の字幕文化は幕を開け、今日まで発展を続けてきた。
今回の企画展では、そんな先人たちから受け継がれた字幕スーパーの変遷やその制作過程、現在も活躍している字幕翻訳者たちによるコメントなどを紹介している。今回は鎌倉市川喜多映画記念館で企画展を担当した馬場祐輔さんにお話を伺った。

「鎌倉市川喜多映画記念館では、“映画+アルファ”をテーマにして、異なる分野に関心のある方にも興味を持ってもらえるように、これまでにもバレエ、ポスターデザイン、衣裳や音楽などを取り上げた展示を行ってきました。それで今回は映画イラストレーターの宮崎祐治さんから以前より相談のあった、字幕翻訳にまつわる企画の開催にチャレンジしました」

「そうですね。今回は資料集めから苦労しました。一覧としてまとまったものがあるわけではなく、過去に同様の展示が行われた実績もほとんど見つけられませんでした。翻訳原稿をはじめ、字幕制作の舞台裏を垣間見ることのできる資料がこうして揃う機会というのは滅多にないと思います。内容は字幕スーパーの歴史的な側面と、『君の瞳に乾杯』『お楽しみはこれからだ』『好いた同志には巴里も狭い』など映画史上に語り継がれる名訳・名セリフを紹介する側面、この二つを見どころとして、楽しんでいただけるようにしています」

「最初期、フィルムに入れる字幕の方法は『焼き込み』と『打ち込み』式がありました。現像所で字幕だけを撮影したネガを作り、画のネガと重ね焼きするやり方と、凸版に起こした字幕を直接フィルムにタイピングする通称“パチ打ち”というやり方です。翻訳された文字をタイトルライターが一文字ずつ手で書き、それを撮影して銅版に起こしてからフィルムに薬剤を塗布し、機械で文字を打つ、職人技です。本展では、テトラ社のタイピングマシーンの実機や字幕カード、実際に使用されたチップ状の銅版原稿などを見ることができます」

「黎明期から字幕文化の道を切り拓いたレジェンドたち、秘田余四郎さんや高瀬鎮夫さん直筆の翻訳原稿を展示しています。また、戸田奈津子さんや松浦美奈さん、アンゼたかしさんなど、現在も第一線で活躍する字幕翻訳者の方々に、今昔の名セリフや字幕翻訳者人生のなかで忘れられないエピソードなどをお寄せいただき、宮崎祐治さんのイラストとともに、紹介しています」

「男女共に年齢は幅広いですね。もともと当館に来て頂いている地元の常連の方はもちろんですが、観光で鎌倉を訪れたご家族やカップルも多く、初日には、市内の画塾生が企画展のポスターをみかけて好きな映画がイラストで載っていたので、と来館してくれました。次は上映とトークイベントのある日に来ますとのこと。今後も色々なイベントを準備しているので、多くの方々に見て頂きたいです」

字幕があることで、私たちはどんな国の映画でも楽しむことができる。ここにはその礎を築いた人たちの創意工夫と、日本における洋画の歩みも知ることが出来る。展示は3月30日まで続き、関連した作品の上映やトークイベントなども開催される。詳細はこちら(https://kamakura-kawakita.org/exhibition/the_art_of_film_subtitle_translation/)まで。

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