池上彰に高校生が直撃! 映画「セプテンバー5」鑑賞後に報道・メディアのあり方について質問殺到
2025年2月6日 20:30
五輪史上最悪の事件として、今もなお語り継がれている歴史的な1日を基に描く映画「セプテンバー5」の特別授業と題したイベントが2月6日、東京都立西高等学校で行われ、講師としてジャーナリストの池上彰が出席。映画を鑑賞した高校生たちに向けて、作品の時代背景や世界情勢を解説した。高校生たちからは、現代の報道やメディアのあり方に対する疑問・質問が殺到し、池上が真摯に答えた。
1972年9月5日、ミュンヘンオリンピック開催中に起きた、パレスチナ武装組織「黒い九月」によるイスラエル選手団の人質事件。本作は、突然世界が注目する事件を中継することになったTVクルーたちの視点で、事件の発生から終結までの1日を90分間で描く。第82回ゴールデングローブ賞作品賞(ドラマ部門)のノミネートに続き、第97回アカデミー賞では脚本賞にノミネートされている。
生徒たちに会えることを、とても楽しみにしていたという池上。イスラエル選手団の人質事件について「オリンピックでこんなことが起きるなんて、当時は考えられていなかった。この事件が起きてから、さまざまなテロリストや過激派が『オリンピックを襲撃すると、これが世界中で報道されて、自分たちの主張が世界に広がる』と気付いた。それ以降、さまざまなオリンピックでテロ対策が行われるようになった」とその後の影響について説明した。
全世界が固唾をのんで見守った歴史的なテレビ中継を担ったのは、ニュース番組とは無縁のスポーツ番組の放送クルーたち。池上は「スポーツの担当者が中継をしていて、目の前でテロ事件が起きた。すると本社は『スポーツ局には任せられない。報道局に担当させろ』と言ってきますね。これは“あるある”。局内のどこがやるのか、という問題が起きることはよくある」と説明。さらに警察が「中継をやめろ」と求めてくる場面に触れながら、「いち早く伝えたいけれど事細かに中継をすると、警察の動きが犯人にわかってしまうという、大きな問題が起きてくる。私も社会部時代に同じ経験をしたことがある」と実感を込めながら、劇中のシーンについて解説した。
SNSの普及で誰もがメディア化した現代社会において、報道の自由と責任のあり方を描いた本作が投げかける問いかけは意義がある。生徒たちからも、池上に対して活発に質問が上がった。
誤情報が世界中に拡散される場面があるが、発信源の責任について質問が出ると「少なくとも2つの情報源から確認しろということが、劇中にも出てくる。私もジャーナリズムの世界に入った時に『必ず2つ以上の情報源から確認をして、初めてそれを報道して記事にしていい』と言われた。すぐに報道することはできない。『SNSだとすぐにアップされるのに、新聞やテレビはなにかを隠しているのではないか。“マスゴミ”じゃないか』と言われるが、ひとつだけの情報源だとその人が勘違いしているということはいくらでもある」と持論を展開。「2つの情報源から確認しろと叩き込まれていても、2つの情報源だと思っていたものが、1つだったりすることもある。事実をきちんと確認して伝えるということが、いかに難しいかということ」と情報源の見極めは難しいものだと話した。
またあらゆる情報が存在する中で、「まともなソースを手に入れるためにはどうしたらいいか」と質問した生徒もいた。池上は「金儲けのため、バズらせるためにさまざまな誤情報も出てきている」と現状について言及し、「まずは誰が発信しているのか、どこが発信しているのかチェックしてほしい。疑ってかかることが必要になるのかなと思います。事実確認をする訓練を受けたプロがやっているならば、比較的正確で、信頼できるだろうと。正体不明の人がやっていたり、びっくりするような見出しになっているものは『ちょっと待てよ』と疑ってかかることが必要」と回答。「これだけSNSに大きな影響力が出てくるというのは、未体験のこと。最終的には一人一人が、自分の頭で判断する能力が求められている。君たちもそうだし、発信する側も悩みながら伝えている」と力を込めていた。
「SNSをやる人たちにも責任を持ってやってほしいけれど、責任がないままでも誰もが発信できる」と、現代の課題について語った池上。「発信を止めることはできない。政府がこれを止めたとしたら、言論の自由、表現の自由を禁止すること。それぞれの倫理観で対応してくださいとしか、言いようがない。これからも深刻な問題は間違いなく起きるだろう」と話し、本作には「さまざまな現代の課題、問題があえてちりばめられている。それを感じさせてくれるのが、この映画の面白さであり、優れているところ」と強調。イベントの予定時間を過ぎても質問の手はあがり続け、池上も「大丈夫です。やりましょう!」と前のめりになって答えるなど、熱い時間となった。
「セプテンバー5」は、2月14日に全国で公開。
フォトギャラリー
関連ニュース
五輪史上最悪の事件を“追体験” 1972年ミュンヘン五輪で起きた人質テロを描く「セプテンバー5」25年2月14日
2024年11月27日 08:00
映画.com注目特集をチェック
ショウタイムセブン
【阿部寛がヤバすぎる】異常な主人公 VS イカれた爆弾テロ犯…衝撃のラスト6分、狂気の向こう側へ
提供:アスミック・エース
芸能生活50年で“初”体験!
【無料】映画の面白さが何倍にもなる特別番組…貴重な瞬間を見逃すな!(提供:BS10 スターチャンネル)
「アベンジャーズ」と関係するかもしれない“大事件”
【物語のカギは“日本”!?】このマーベル最新作は観るべきか、否か――?
提供:ディズニー
セプテンバー5
【“史上最悪”の事件を、全世界に生放送】こんな映像、観ていいのか?ショッキングな実話
提供:東和ピクチャーズ
次に観るべき“珠玉の衝撃作”
【余命わずかの親友から奇妙なお願い】「私が死ぬとき隣の部屋にいて」――魂に効く“最高傑作”更新
提供:ワーナー・ブラザース映画
激しく、心を揺さぶる超良作
【涙腺が危ない】切なすぎる物語…さらに脳がバグる映像美×極限の臨場感にド肝を抜かれる!
提供:ディズニー