就活中の妊娠、“他人事”の恋人、親の賠償金、闇ビジネス……「石門」タイトルに込められた“思い”は?
2025年1月30日 12:00
“中華圏のアカデミー賞”と称される台北金馬獎(第60回)で日本資本の映画として初めて最優秀作品賞を受賞し、最優秀編集賞との2冠に輝いた映画「石門」(読み:せきもん)。このほど新場面写真とともに、映画のタイトルの込められた“思い”を明かすエピソードが披露された。
米レビューサイト「ロッテントマト」では、批評家が94%、一般観客は驚異の100%の高評価を獲得(12月14日時点)。監督は中国湖南省出身のホアン・ジーと東京出身の大塚竜治。中国と日本を拠点に活動する夫妻は、女性の性に関する問題をテーマに映画を共同製作してきた。新作「石門」は、望まぬ妊娠に直面した20歳のリン(ヤオ・ホングイ)を主人公に、女性の前にある様々な壁を静かに見つめる作品となっている。
新たに解禁となった場面写真は、主人公のリンが、恋人に妊娠を伝えた直後の様子をとらえたもの。想定外の事実に頭を抱える恋人は、「もうすぐ君は航空会社と面接だ。こんな機会を逃すのはもったいない」と彼女をいたわる言葉をかけながら、「タイミングが悪い」と暗に中絶を促す。妊娠の責任を負うべき立場でありながら、まるでリンひとりの問題にするかのような恋人の態度――沈んだ気持ちが滲むリンの背中が印象的だ。
本作は、ホアン・ジー監督が「どうして私を生んだの?」と当時5歳の娘から尋ねられたことが製作のきっかけになっている。その時、どう答えたら良いかわからなかったホアン・ジー監督は「少女から大人になりかけている女の子が、出産を悩む姿を撮ることで、その答えを導こうと考えた」と撮影に臨んだ。
「石門」というタイトルは、「女性を取り巻く環境に存在する、打ち破りたくてもなかなか突破して先に進めない壁」を指している。望まぬ妊娠が判明したにも関わらず、恋人の協力が得られないリンは、自分ひとりでは乗り越えられない大きな壁に直面する。診療所を営む彼女の母は死産の責任を追及され、高額な賠償金を支払うことに。
母のためにも、働いて助けねばならない――中国では、優秀な遺伝子を望む富裕層などを相手にした代理出産が闇ビジネスとして常態化している。子どもを産むことを決意したリンは、賠償金の代わりにその子を差し出そうと考えるのだ。
「石門」は、2月28日より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネリーブル池袋ほか全国順次公開。
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