売り物にされる“女性・性”――「石門」望まぬ妊娠に直面した主人公の人生が投げかける問題とは?
2025年1月26日 12:00

“中華圏のアカデミー賞”と称される台北金馬獎(第60回)で日本資本の映画として初めて最優秀作品賞を受賞し、最優秀編集賞との2冠に輝いた映画「石門」(読み:せきもん)の新場面写真が、このほど公開された。
米レビューサイト「ロッテントマト」では、批評家が94%、一般観客は驚異の100%の高評価を獲得(12月14日時点)。監督は中国湖南省出身のホアン・ジーと東京出身の大塚竜治。中国と日本を拠点に活動する夫妻は、女性の性に関する問題をテーマに映画を共同製作してきた。新作「石門」は、望まぬ妊娠に直面した20歳のリン(ヤオ・ホングイ)を主人公に、女性の前にある様々な壁を静かに見つめる作品となっている。
場面写真は、主人公のリンが、妊娠の影響による胸の痛みを、郊外で診療所を営む母に診てもらうシーンをとらえたもの。フライトアテンダントを目指すリンは、予期せぬ妊娠と恋人との別れ、そして、死産の責任を追及され賠償金を迫られる母への仕送りに頭を悩ませていた。胸の痛みを訴えるリンを診る母は、進学させたにも関わらず妊娠した娘を叱り堕胎薬を飲むことを進めるが、中絶を望まないリンは、賠償金の代わりに子どもを差し出すことを提案する。

2人が死産となった母親の従兄である男性に取引を持ち掛けると、赤ん坊の父親の身長や学歴をつぶさに確認され、赤ん坊の心身の健康と、知能指数の高さを確かめるためにリンたちが1年面倒を見ることを条件に提示される。しかし、出産後は大学に戻りたいリンと、診療所の仕事がある母は厳しい条件だった――。
妊娠期間と同じ10カ月をかけて撮影された「石門」は、主人公のリンを通して、女性の前に立ちはだかる石のように重い扉を描き出す。望まぬ妊娠と出産によって学校や仕事を中断せざるを得ず、元の進路に戻るため、出産後はすぐに大学に戻ろうと考えるリンの姿がその一例だ。
また、ドレスを着てデパートの前に立つキャンペーンガールや、リンの妊娠発覚のきっかけとなる、優秀な遺伝子を求める富裕層に向けた卵子提供ドナーが割のいい単発の仕事としてカジュアルに紹介され、若く健康な“女性・性”を営利道具とみなし、売り物とすることにためらいのない空気は、世界各地で起きるジェンダー問題と根を同じくしている。

「TAR ター」「バービー」「哀れなるものたち」と続く流れや、英国映画協会(BFI)が10年に一度発表する「史上最高の映画」に「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」が選出されるなど、フェミニズム映画が注目を集め、高い評価を受けている近年。その潮流が高まるよりも早く「卵と石」「フーリッシュ・バード」と、長年にわたって“女性と性”というテーマを描いてきたのがホアン・ジー監督と大塚竜治監督だ。
世界中で高い評価を受ける両監督が、入念なリサーチをもとに、現代の中国を生きる女性の姿を静謐なタッチで描く。痛々しく息苦しいリンの生きざまに、何をみるのか。現代のあらゆる女性が抱える問題に警鐘をならし、重々しい“石”の“門”を開く一条の光を求める「石門」。そのメッセージを、劇場で確認してほしい。
「石門」は、2月28日より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネリーブル池袋ほか全国順次公開。
(C)YGP-FILM
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