山中瑶子監督、アルモドバル最新作「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」で描かれる女性2人の距離感に共鳴「『ナミビアの砂漠』でやりたかったこと」
2025年1月18日 15:30

第81回ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した映画「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」のトークイベントが1月17日、都内で行われ、「ナミビアの砂漠」で、第77回カンヌ国際映画祭・国際批評家連盟賞を女性監督として史上最年少で受賞した山中瑶子監督が登壇した。
「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」は、「オール・アバウト・マイ・マザー」など数々の名作を世に送り出してきたペドロ・アルモドバル監督の最新作。病に侵され安楽死を望む女性・マーサ(ティルダ・スウィントン)と、彼女に寄り添う友人・イングリッド(ジュリアン・ムーア)の最期の数日間を描いた物語。

1997年生まれという山中監督。アルモドバル監督が「オール・アバウト・マイ・マザー」を発表したのが98年と世代はまったく違うが、ほとんどの作品を観ているという。「いつも毒気を楽しみにしているんです」と語ると「今回の作品は、かなり毒気はなくまっすぐ作っている印象がありました。安楽死をテーマにした映画もいくつかありますが、そのなかでも、かなり生きることにポジティブなエネルギーが満ちている。楽しく拝見しました」と感想を述べる。
本作はマーサとイングリットという2人の女性が中心の作品。山中監督は「すごくシンプルな作りですね」と特徴を挙げると「この2人の女性の距離感がいい。マーサは看取って欲しいと何人かに頼み、断られたあとイングリットと久々に再会した。親友ではない距離感だからこそ素直に言えることもある。この関係性は、私が『ナミビアの砂漠』でやりたいと思っていたことなんです。だから共鳴しました」と語る。

山中監督は「ナミビアの砂漠」で「近くにいる人ほど大事にできない。隣人とかお医者さんとか精神的に遠い人の方が素直でいられるということを表現したかった。そういう部分が似ていました」と説明する。
またファンタジックに展開していかないストーリーラインもアルモドバルの魅力だという。「難病ものや、余命わずかものによくある、泣いて思いを伝えるみたいな展開がない。容赦ないのですが嘘がない」と語ると「手を握って看取るわけでもない。フィクション的なことをしないのですが、本当に力がもらえるいい映画でした」と評価していた。
アルモドバル映画は「パラレル・マザーズ」が最近のお気に入りだと告白。「人が死ぬし、生まれる忙しい映画ですが良かった。アルモドバル映画からは母親に対する強い思いを感じるのですが、愛情を掛けられなかった母親の話を観たのは初めてかもしれません」と語っていた。さらに「若い世代は、題材的にあまりアルモドバルの映画は自分と関係ないと思うかもしれませんが、どんな人にもパワーと勇気がもらえる映画だと思います」とアピールに努めた。
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