若き日のボブ・ディランに影響を与えた“伝説の歌手”を演じるために――エドワード・ノートン&モニカ・バルバロ「名もなき者」秘話を明かす【NY発コラム】
2025年1月16日 10:00

「風に吹かれて」「時代は変わる」「ライク・ア・ローリング・ストーン」「天国への扉」などの名曲を手がけ、デビュー以来半世紀に渡り、多大な影響を及ぼした伝説の歌手ボブ・ディラン。ティモシー・シャラメが彼の若き日を演じた話題作「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」が、2024年12月25日より全米公開されている(日本公開は2月28日)。
サーチライト・ピクチャーズが“オスカー候補”として推している同作には、エドワード・ノートンとモニカ・バルバロが出演している。今回は2人への単独インタビューを通じて、ディランの人物像にも迫っていく。
舞台は、1961年~65年のアメリカ・ニューヨーク。ミネソタ出身の無名ミュージシャンだったディランが、ニューヨークに移り住んだ時期から、ウディ・ガスリー、ピーター・シーガー、ジョーン・バエズらと出会い、スターダムを駆け上り、唯一無二のカリスマになっていく様を描いている。

監督は「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」のジェームズ・マンゴールド。若き日のディランを「君の名前で僕を呼んで」などで知られるシャラメが演じ、ディランに多大な影響を与えたフォークシンガー、ピート・シーガー役をノートン、実生活でディランと交際していたスーズ・ロトロにインスパイアされたシシルヴィ・ルッソ役をエル・ファニング、フォーク歌手ジョーン・バエズ役をバルバロが演じている。
50年以上も音楽活動をし、今でも精力的にコンサートを続ける“偉大なミュージシャン”を映画化する。そのうえでどこに焦点を当てるのか、どの時代を描くのか――今作では、ギター片手にニューヨークに降り立った若き日のディランが偉大な人物と出会い、フォーク界のスターとなり、新たな音楽を模索して旅立つところでエンディングを迎える。

ディランを語るうえで重要なのは、多大な影響を与えた伝説のフォーク歌手ピート・シーガーだろう。シーガーは、20世紀半ばのフォーク・リバイバル運動の中心人物。自身が役員として名を連ねていたニューポート・フォーク・フェステイバルにディランを参加させたことで、彼が広く認知されるきっかけを作った人物なのだ。
今作では、シーガーの初期のキャリア、特にエレノア・ルーズベルトの前で演奏した時(1941年3月に大統領夫人エレノア・ルーズベルト主催でホワイトハウスにおいて行われた「アメリア兵士のための夕べ」の演奏)や最も影響力のある2つのフォーク・グループ「アルマナック・シンガーズ」と「ウィーバーズ」結成時のことは描かれていない。その後のシーガーの半生を演じるために必要なエッセンスとは何だったのか?

フォーク・リバイバル運動の中心人物であったシーガーと、当時、病に伏せていたフォーク歌手のウディ・ガスリーとの出会いから“新たな道”が切り拓かれていく。ガスリーとシーガーは、50年代から60年代にかけてフォーク・ミュージック・リバイバルを起こし、フォーク、つまり“人々の歌”をもう一度自分たちの手に取り戻そうという運動を行った。ブルースやブルーグラスなどのルーツを再発見する運動でもあったように思えるが、その時代から何を学んだのだろう?

シーガーはディランの良き理解者だったのだろうか? シーガーは、ディランにフォーク・ミュージックのバトンを渡した人物であり、ニューポート・フォーク・フェスティバルの「マギー・ファーム」でエレキ・ギターを弾く際のディランの“変化”にも立ち会った人物でもある。

伝説のフォーク歌手でディランと交際していたジョーン・バエズの人生は“記録”として残されている。40枚のスタジオ・アルバムとライブ・アルバム、ロックンロールの殿堂入り――昨年はドキュメンタリーも公開された。バルバロにとってジョーン・バエズを演じるための入り口は何だったのか?本人に会って話をしたのだろうか?

ジョーン・バエズにとって、ディランはある意味、アフリカ系アメリカ人公民権運動の仲間のような存在だ。だが、ディランは“交際と別れ”で彼女の心を傷つけたこともあった。彼らが共に演奏したとき“魔法のような瞬間”を作り上げられたが、彼らの関係をどのようにとらえているのだろう。

「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」は、1960年代ニューヨークの再現、脇を固めるノートンとバルバロの演技も秀逸。さらに「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」でジョニー・キャッシュを描いたことのあるマンゴールド監督の演出は見事で、全ての分野において、高い水準を叩き出した映画に仕上がっている。
執筆者紹介

細木信宏 (ほそき・のぶひろ)
アメリカで映画を学ぶことを決意し渡米。フィルムスクールを卒業した後、テレビ東京ニューヨーク支社の番組「モーニングサテライト」のアシスタントとして働く。だが映画への想いが諦めきれず、アメリカ国内のプレス枠で現地の人々と共に15年間取材をしながら、日本の映画サイトに記事を寄稿している。またアメリカの友人とともに、英語の映画サイト「Cinema Daily US」を立ち上げた。
Website:https://ameblo.jp/nobuhosoki/
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