【インタビュー】「イカゲーム」監督、話題沸騰のシーズン2秘話を明かす 重視したのは“弱者側の意志と力”
2025年1月10日 18:00
世界中で社会現象を起こした「イカゲーム」が帰って来た。Netflixではすでに歴代4位の記録を達成、その勢いは衰えを知らない。シーズン2では、前作で生き残ったキャラクター・ギフンが再びゲームの世界に戻り、新たな参加者たちと共に過酷な運命に立ち向かう。注目すべきは、シーズン2とシーズン3が前後半に分かれたひとつの大きな物語として構想されていることだ。本作は単なるサバイバルゲームの続編ではない。現代社会における分断と対立、そして人類の未来への問いを投げかける野心作となっている。
脚本・演出を手がけ、シーズン1では撮影の過酷さで自身の歯が8、9本も抜け落ちたというエピソードを持つファン・ドンヒョク監督に映画.comが直撃。世界の寵児となった韓国発ドラマの真髄に迫った。(取材・文/小西未来)
シーズン1はパンデミック期間中に公開されました。そして、それ以降、世界はより良い方向には向かっていません。実際、さらに悪化の一途を辿っています。私たちが目にしているように、富の格差は拡大し、世界中で難民問題が発生し、気候変動の問題があり、そして悲惨な戦争により、本来なら起きるべきではない多くの死が発生しています。
また、今日の若い世代は、もはや労働を通じて富を築こうとはせず、暗号通貨などに投資することで一攫千金を狙ったり、手っ取り早く金持ちになろうとしています。これは韓国だけでなく、世界中で起きている現象です。このような現実世界の出来事が、確実に私の創造性に影響を与えています。
第一に、規模が大幅に拡大しました。ゲームの規模も、関与するキャラクターの数も増えています。最も大きな変更点はゲームとキャラクターです。ご存知の通り、ギフン以外のゲーム参加者は全員新しいキャラクターです。シーズン1とは異なる、より愛着が湧き、応援したくなるような新しいキャラクターたちが登場します。そして最後に、各ラウンド後に参加者たちが投票を行うという点が最大の違いと言えるでしょう。
シーズン2を制作する際に最も念頭に置いていたのは、現代社会が私たちをいかに分断し、グループを分け、対立する側に敵意を持たせているかということです。今日、私たちを分断するものは数多くあります。人種、宗教、言語、富める者と持たざる者、世代間の対立などです。
最近の重要な選挙を見ても、政治的な分断、左派対右派、保守派対進歩派の対立があります。これらは、まるで超えることのできない一線を引いているかのようです。アメリカとメキシコの間に建設しようとした壁のように、今日では越えられない線や壁が存在しているように見えます。そして世界の指導者たちがこれらの壁や分断を作り出しているように思えます。
現代人は、自分とは異なる考えや選択をする相手側の人々を、決して許すことのできない敵とみなすようになっています。ドラマでは各ラウンド後に○×の投票を行わなければなりませんが、それによってゲーム参加者たちは「自分は正しく、相手は間違っている。自分は天使で、相手は絶対的な悪だ」と考えるようになります。シーズン2を通して、私は本当に私たちに希望はあるのか、お互いを敵対視し合う分断された世界に未来はあるのかという問題に焦点を当てました。
このまま進めば、世界中のあらゆる場所に壁を建てる必要が出てくると本当に信じています。持たざる者が富める者の生活を乱さないように壁を作るという、これまでは創作作品の中でしか見られなかったことが、すぐに現実となるでしょう。私はそのような社会に住みたくないという思いでシーズン2を制作しました。
シーズン2では、ギフンがこの全ての黒幕を突き止めようとしてゲームに戻ります。しかし、シーズン2と3を通じて私が描きたかったのは、彼らが悪者でギフンが彼らを止められるかどうかという話ではありません。むしろ、私たち、つまり弱者側にいる大多数の人々に、世界をより良い場所にしようとする意志と力があるのかという問いを投げかけたかったのです。
最も印象に残っているのは、登場人物たちが死亡する場面です(笑)。
なにしろ、セットで何百人ものエキストラと仕事をするのは大変なんです。ですから、彼らが死亡するたびに、負担が減ったように感じました。それが最も幸せな瞬間でしたね、人を殺すたびに、私はどんどん幸せになっていきました(笑)。
キャストとお別れのときは、表面上は泣いていましたが、内心では笑っていました(笑)。
この作品は、ゲームやストーリーラインが今日の社会で起きていることの寓意であることを理解し解釈できる大人向けに制作されています。以前から申し上げているように、ゲームや脱落者が銃で殺される場面は、今日の社会における際限のない競争と、その競争の敗者たちがどのように扱われているかを映し出す寓意として使用しています。
セーフティネットもなく彼らを底辺まで落とし込んでしまうこと、そしてこの道を進み続けた先に何が起こりうるのか。繰り返しになりますが、この作品は寓意を理解できる大人向けの作品です。今日の子供たちが、YouTubeなどのメディアを通じて刺激的な場面に触れることがあることは承知しており、他の方々同様、深い懸念を感じています。
大人の方々には、お子さんに視聴させないよう適切な指導をしていただけることを心から願っています。もし万が一、そうした場面に触れてしまった場合は、背景にある文脈を説明する機会としていただきたいです。見たものを真似したりしないよう、十分な指導を提供していただければと願っています。
執筆者紹介
小西未来 (こにし・みらい)
1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi
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トニー・レオンとアンディ・ラウが「インファナル・アフェア」シリーズ以来、およそ20年ぶりに共演した作品で、1980年代の香港バブル経済時代を舞台に巨額の金融詐欺事件を描いた。 イギリスによる植民地支配の終焉が近づいた1980年代の香港。海外でビジネスに失敗し、身ひとつで香港にやってきた野心家のチン・ヤッインは、悪質な違法取引を通じて香港に足場を築く。チンは80年代株式市場ブームの波に乗り、無一文から資産100億ドルの嘉文世紀グループを立ち上げ、一躍時代の寵児となる。そんなチンの陰謀に狙いを定めた汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユンは、15年間の時間をかけ、粘り強くチンの捜査を進めていた。 凄腕詐欺師チン・ヤッイン役をトニー・レオンが、執念の捜査官ラウ・カイユン役をアンディ・ラウがそれぞれ演じる。監督、脚本を「インファナル・アフェア」3部作の脚本を手がけたフェリックス・チョンが務めた。香港で興行ランキング5週連続1位となるなど大ヒットを記録し、香港のアカデミー賞と言われる第42回香港電影金像奨で12部門にノミネートされ、トニー・レオンの主演男優賞など6部門を受賞した。
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内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
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