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【「ヴァラエティ」評論】ようこそ、驚きに満ちたアーバン・アドヴェンチャーの世界へ!

2024年11月24日 14:00

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画像1(C)1983 Variety Motion Pictures. All Rights Reseved. ©Kino Lorber,inc. All Rights Reseved.

1970年代末から80年代のニューヨーク、アングラカルチャーの潮流“ノー・ウェイヴ”の渦中にいたベット・ゴードン監督作「ヴァラエティ」が本邦初公開となる。ジョン・カサヴェテス、ジャン=リュック・ゴダール、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーらの影響を受けた彼女は、セクシャリティ、暴力、権力に対する高い意識を持ち、女性の体験を通して世界を見据えようとした。女性への圧力や蔑視、性差別などを日常的な会話から問題提起する。1974年の「ミシガン・アベニュー」(共同監督作/未公開)から「エニバディズ・ウーマン」(1981)まで11本の短編を発表した後、1983年に初長編となる本作を発表した。

誰もいないプールに女性が飛び込む。背泳ぎする彼女の肢体を追っていたキャメラは、更衣室で着替えるふたりの会話へ。夢の街に出てきたものの碌な仕事が見つからない。「面接官からいきなり胸を見せろ」と迫られたとこぼす彼女に、バーで働いて3年になる写真家志望の女が「あなた向けじゃないけど」と応じる。するとチケットブースにいる彼女が映し出され、もぎりの男が映画のチケットは「2ドル」だと教える。その映画館の名は「ヴァラエティ」。

まるで四コマ漫画のような無駄のない簡潔な描写で主人公の今を共有すると、赤いネオンが煌々と灯る秀逸なタイトルクレジットで映画の世界へと誘う。端正な編集と制約に縛られない映像に一気に心を掴まれる。

たばこ一箱と引き換えに休憩をもらったクリスティーンはあえぎ声が漏れる映画館を探検し、安食堂で落ち合った男友達にポルノ館で働き始めたと伝える。バーで交わされる女たちの開けっぴろげな巷談、留守番電話に残された家賃の催促や母の声。日常が綴られた後、劇場には場違いな紳士然とした客が現れる。男の登場で断片的だった点と点とがつながり、大都会の光と陰、謎の男が抱える闇を追う驚きに満ちたアーバン・アドヴェンチャーが始まる。

試作となる短編「エニバディズ・ウーマン」は、断片を集積した荒削りな作品。その経験を踏まえてか、ゴードンはプロの仲間に声をかける。小説家のキャシー・アッカーとジェリー・デラマーと共同で脚本をまとめ、ジム・ジャームッシュ組のジョン・ルーリーに音楽を託す。撮影には「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(1984)のトム・ディチロを迎えた。進化の度合いは歴然で、同時公開される二作を観比べて創作の過程を知る楽しみもある。

主演のサンディ・マクロードは、当時ジョナサン・デミの恋人で、「ストップ・メイキング・センス」(1984)でヴィジュアル・コンサルタントを担当した人物。バーで働くナンには、薬禍をめぐる抗議活動を追った「美と殺戮のすべて」(2022)のナン・ゴールディン。世界に認められる前、彼女はゴーディ作品の常連でスチール写真も担当していた。ボーイフレンドを「ミナリ」(2020)で十字架を背負った名脇役ウィル・パットンが演じている。彼女の唐突な言動に戸惑いを隠さない、青臭さが残る演技が新鮮だ。

何気なく交わされる会話の中に女性が抱える多種多様な“やっかいなこと”が詰め込まれている。言い出したらきりがないが、決して蔑ろにはしたくない。同時代を生きる女性たちの実体験と告白にはベット・ゴードン監督の矜持がにじむ。

(髙橋直樹)

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