コニー・ニールセン「ルッシラのような女性は世界中にいる」――演じることで讃える、過酷な運命に抗う女性の姿
2024年11月24日 08:00
古代ローマを舞台に、皇帝への復讐に燃える剣闘士〈グラディエーター〉の闘いを描き、第73回アカデミー賞で作品賞・主演男優賞を含む5部門を受賞した「グラディエーター」(2000年)。巨匠リドリー・スコット監督がつくりあげたこの歴史スペクタクルは、全世界で4億6500万ドル以上も稼ぎ出し、2000年に第2位の興行収入を記録する大ヒットを果たした。それから24年後、「グラディエーター」の生みの親リドリー・スコットが再びメガホンをとり、あの結末の「その後」を描いた続編「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」が11月15日より公開中だ。
主人公のルシアスを演じるのは、「aftersun アフターサン」で一躍脚光を浴びた気鋭の俳優ポール・メスカル。また物語を駆動する謎の奴隷商人マクリヌスを担うのは名優デンゼル・ワシントン。そして前作キャストであるコニー・ニールセンが元皇帝の娘ルッシラ役でふたたび出演。英雄マキシマスとの間に生まれた本作の主人公ルシアスの母親であり、ペドロ・パスカル演じる将軍アカシウスの妻として、過酷な運命に飲み込まれていく人物を熱演する。
数少ない前作のキャストとして、コニー・ニールセンは本作とどのように向き合ったのか。「グラディエーター」キャスティング時の秘話や︎リドリー・スコットの撮影現場における変化、ルッシラという人物が持つ苦悩と強さなどについて語ってもらった(取材・文/ISO、撮影/間庭裕基)。
するとその後、3日間連絡が途絶えたんです。世界最大級の映画に出演が決まったばかりなのに、脚本にダメ出ししたせいでワンシーンも撮らずクビになったのかも…とゾッとしましたね。いても立ってもいられなくなり、シェパートン・スタジオに電話したんです。制作会議中で手が離せないと秘書に言われたんですが「このままだと眠れないし、ご飯も水も喉を通らない!どうかお願い!」と懇願して。するとリドリーから電話がかかってきて「大丈夫だから寝なさい。君が書いてくれたものを脚本に反映しようとしているところだよ。皆が不快に思いかねない部分は取り除いているから、誰も君のことをクビにしないよ」と笑いながら言ってくれました。
今回感じたのは撮影のペースがすさまじく早いということ。一作目のときはセットチェンジやフィルムの交換、ライトやカメラの移動などに何時間もかかったんです。だからラッセルとホアキンと私はその隙間時間に、リドリーに寄ってたかって「こういうのはどう!?」「これは!?」って細部まで相談していました。でも今作ではそれがなかったんです。技術の進歩によりセットチェンジも短時間でできるようになり、少ない隙間時間も私たちは着替えがあるから「とにかく時間がない!」って。
だから私は撮影の日、朝から彼のトレーラーに並ぶんです。他の俳優もそうでしたね。レンガづくりっぽい見た目をしたトレーラーだったので、私たちはそれを「レンガ」と呼んでいました。レンガには常にたくさん人がいるんですが、相談したいと言うと「じゃあ10分だけ」と時間をもらえるんです。それで10分間「私はこう思うけどどう?」「ここで彼女はこう考えてる?」と矢継ぎ早に質問して、リドリーは「イエス、ノー、ノー、ん?わからないから別の良い方で…なるほど、イエスだ」みたいな感じで素早く答えていく。そうやって事前確認で準備を終わらせて、セットに入ればあとはそのまま演じるだけでした。
「ミッション・トゥ・マーズ」(2000年)の撮影で、何もない空間で6mの高さに吊り下げられたことがあります。宇宙空間にいるという設定なので動くことも許されないなか、私は「目の前で夫が死にゆくのを見届ける」という状況を想像だけで演じるという経験をしました。でもリドリー・スコットの映画ではそんなことは決して起こりません。なぜなら彼の撮影現場では実際にそのできごとが起きているから。そういった撮影現場におけるリアリティや、映像面で確実にパワーアップしていると思います。
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