デンゼル・ワシントンが11年ぶり来日 リドリー・スコットとの再タッグは「楽だったよ」【第37回東京国際映画祭】
2024年11月4日 20:11
巨匠リドリー・スコットが手掛け、アカデミー賞5部門を受賞した名作の続編「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」が第37回東京国際映画祭の「Centerpiece/センターピース作品」として特別招待され、アジア最速となるプレミア上映が決定。これを記念し11月4日、都内で来日記者会見が行われ、主演のポール・メスカル、共演するデンゼル・ワシントン、フレッド・ヘッキンジャー、コニー・ニールセンが出席した。
「aftersun アフターサン」(2022)の演技が高く評価され、第95回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたメスカルは、主人公であるルシアス役を熱演する。ローマ帝国軍の侵攻によって愛する妻を殺され、奴隷として売られるグラディエーター=剣闘士。前作でラッセル・クロウが演じたマキシマスの息子という役どころだ。「ルシアスはアンチヒーローの要素が強く、復讐を果たす過程でヒロイックな一面を見せていく。その両面を演じられるのは、役者冥利に尽きる」と満足げに語った。
撮影中はアドレナリンが湧きだす瞬間が多くあったと振り返り「進化するアクション、夢のようなセット、何より監督がリドリーだからね。多くの人々に愛される作品の続編に出演していて、興奮しない方がおかしいよ」と確かな達成感を示すと、隣に座るワシントンが「きみは(撮影当時)26歳だったからね!」と、いたずらっぽい笑顔を見せた。
そのワシントンは、約11年ぶりの来日を果たし「僕も日本に戻って来るのを、心待ちにしていたよ」と上機嫌だ。ワシントンが演じるマクリヌスは、皇帝顔負けの貫禄で馬車に鎮座し、ルシアスの心に燃え盛る“怒り”に目をつける謎の男。スコット監督とは、クロウと共演した「アメリカン・ギャングスター」(07)以来の再タッグで、「今回は楽だったよ。観覧席から、ポールの奮闘を見ているだけだからね(笑)」と余裕を見せた。
もちろん、スコット監督への信頼は絶大。「何台ものカメラで同時に撮影するから、どこから撮られて、どう編集されるかもわからないから、その分、巨匠に身を委ねて、自由に演じるんだ」と話していた。
ヘッキンジャーは、飢えるローマ市民など意に介さず、権威を誇示し続ける双子皇帝のひとり、カラカラ帝を怪演。きらびやかな衣装に身を包み、「とてもギラギラしていて、底なしの欲望と腐敗によって、ローマの都市が崩壊しつつあることを表現している。まさにピッタリな衣装だよ」と振り返った。
来日ゲストでは唯一、前作「グラディエーター」にも出演しているニールセン。皇帝コモドゥスの姉にして、マキシマスのかつての恋人、そしてルシアスの母という役どころで、歴史の生き証人として存在感を放っている。「テクノロジーの進化もあって、監督が描きたいローマ帝国の崩壊がありのまま、スクリーンに映し出されている」と語り、ルシアスがマキシマスの息子である設定については「私も想像できなかった」と驚きの表情だった。
記者会見には、第37回東京国際映画祭のコンペティション部門で審査員を務めている俳優の橋本愛が登場し、4人に花束のプレゼント。「心から敬愛する皆様にこうしてお会いできていることが、現実とは思えず、震えています」と緊張した面持ちだった。
第37回東京国際映画祭は、11月6日まで開催。「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」は11月15日から全国公開される。
古代ローマを舞台にした前作「グラディエーター」は、苛烈を極める皇帝の後継者争いの陰謀に巻き込まれ、奴隷の座へと落とされた元大将軍マキシマスが復讐を誓い、剣闘士(グラディエーター)としてコロセウムで極限の闘いに挑む姿を描いた。主演のラッセル・クロウ、暴君を演じたホアキン・フェニックス、リチャード・ハリスら名優たちによる演技合戦、大スケールで描かれる情熱的なバトルシーンなどが話題を呼び、2001年・第73回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞を含む5部門受賞を果たした。
アカデミー賞作品賞受賞作の続編が同じ監督によって作られるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督による「ゴッドファーザー PART II」(1974)以来となり、本作がアカデミー賞作品賞を受賞すれば約50年・半世紀ぶりのシリーズ2作連続受賞となる。
フォトギャラリー
Amazonで関連商品を見る
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。