【ネタバレあり】ラストは違っても良かったかも、と盛り上がる「傲慢と善良」二村ヒトシと映画.com編集部がトーク
2024年10月12日 18:00
TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。
今回は直木賞作家・辻村深月が現代に生きる人々のリアルな恋愛観と価値観を描いた同名ベストセラー小説を、藤ヶ谷太輔と奈緒の共演で映画化した恋愛ミステリー「傲慢と善良」を取り上げる。
これまで仕事も恋愛も順調だった西澤架は、長年交際していた恋人にフラれたことをきっかけに、マッチングアプリで婚活を始める。そこで出会った控えめで気の利く坂庭真実と付き合い始めたものの、1年経っても結婚に踏み切れずにいた。ある日、真実がストーカーに狙われていることを知った架は、彼女を守るためようやく婚約を決意するが、真実は突然姿を消してしまう……という物語。
「私が二村さんに観てほしかった。婚活とは? を描いた作品」とエビタニがリクエストした本作。二村は「(地方で若者の結婚をあっせんする)前田美波里さんの役が、現代の結婚に物申す――というのが物語の軸だったのかな? 前後編で語り手が変わる、ミステリーとしてはよくある構成。結果ふたりは結ばれるけど、結ばれてからが大変だと思った。その収まり方が『傲慢と善良』だった」と感想を述べる。
本作ではマッチングアプリを使った婚活が描かれる。「架の長期目標がふわっとしすぎている。でも30代で結婚できてないのが自分のプライドが許さないのかなと思った」と藤ヶ谷が演じる、婚活で交際を始めるも1年も将来を決めない“傲慢”な架について分析するエビタニ。
二村は劇中での「戦略的に選ぶ、ということ自体が傲慢なのでは?」というセリフを挙げ、「アプリのAIより、地域のおばさまの方が(結婚相手を結び付ける能力が)的確なのかもしれない」と持論を語った。
親の敷いたレールの上で“善良”に生きてきた真実に、専業主婦になることを求めた架。真実は驚くべき行動をとってしまうのだが、「奈緒さんが演じた真実さんは、ミステリーになるような行動をとってしまう。でも、ああいう相手の気を引くための嘘をつくのはみんなやるのかな」と二村。「彼女はすべてが崩壊する前に、自分から壊したのかも」「逃げた先が彼女の善良さで、罪悪感もあったのかも」とエビタニ。
このほか、女性の描き方や人間の自意識についてもトークは盛り上がるが、二村は「実は善良なふたりのことがまったく共感できず、わからなかったけど、エビタニさんの解説を聞いたらわかった気がした」と告白。ラストについては「最後は結婚しない方が良かった」とエビタニ、二村も「あのまま結婚しちゃうと、真実からなにか噴出する気がする」と意見は一致し、その後についても様々な展開を想像していた。
トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回はヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンがタッグを組み、愛と支配をめぐる3つの物語で構成したアンソロジー「憐れみの3章」を取り上げる。