【役作りで18キロ増量】「メイ・ディセンバー」身も心も憑依し難役に挑んだチャールズ・メルトンに注目
2024年5月30日 17:00

「キャロル」のトッド・ヘインズ最新作「メイ・ディセンバー ゆれる真実」から、新たな場面写真が披露された。ナタリー・ポートマン、ジュリアン・ムーアに並び圧倒的存在感を見せつけた実力派俳優チャールズ・メルトンの姿をとらえている。

本作は、全米にかつてない程の衝撃を与えた、90年代に実際に起きた13歳少年と36歳女性のスキャンダル(=メイ・ディセンバー事件)の真相を、さまざまな角度から見つめる心理ドラマ。
センセーショナルな脚本が一躍脚光を浴び、海外の有力媒体で2023年ベスト映画として選出、第34回インディペンデント・スピリット賞ほか多数の賞レースで脚本賞を受賞、さらに本年度アカデミー賞で脚本賞にもノミネートされた。
20年前、当時36歳の女性グレイシー(ジュリアン・ムーア)は、23歳年下の13歳の少年ジョーと運命的な恋に落ちるが、2人の関係は大きなスキャンダルとなり、連日タブロイド紙を賑わせる。グレイシーは未成年と関係をもったことで罪に問われて服役し、獄中でジョーとの間にできた子どもを出産。出所後に晴れて2人は結婚する。
それから20年以上の月日が流れ、いまだ嫌がらせを受けることがあっても、なにごともなかったかのように幸せに過ごすグレイシーとジョー。そんな2人を題材にした映画が製作されることになり、グレイシー役を演じるハリウッド女優のエリザベス(ナタリー・ポートマン)が、役作りのリサーチのために彼らの近くにやってくる。

ジュリアン・ムーア演じるグレイシーの夫・ジョーを演じたメルトンは、本作で全米批評家協会賞やニューヨーク映画批評家協会賞などで最優秀助演男優賞を受賞。ゴールデングローブ賞ではロバート・ダウニー・Jr.、ロバート・デ・ニーロら錚々たる顔ぶれのなか助演男優賞にノミネートされ、ダークホースとして賞レースを賑わせた。
1991年、米・アラスカ州生まれのメルトンは、モデルとしてキャリアをスタートし、2017年、TVシリーズ「リバーデイル」第2シーズンに出演して一躍注目を集め、同作第3シーズンから正式にシリーズレギュラーとなり一気に名を挙げた。
映画「サン・イズ・オールソー・ア・スター 引き寄せられる2人」(19)で初の長編映画に主演し、ハリウッドのティーン向けロマンス映画をリードした初の韓国系及びアジア系アメリカ人俳優となるほか、2024年にはイヴ・サンローラン・ボーテのキャンペーンモデルに抜擢されるなど幅広い活躍をみせている。「リバーデイル」シリーズでは、高校生役を演じているが、「メイ・ディセンバー ゆれる真実」ではわずか13歳で36歳の女性と結ばれ、若くして三児の父となる波乱万丈な人生を送るジョーを繊細な演技で演じきった。
ヘインズ監督と長年にわたってタッグを組むキャスティング・ディレクターのローラ・ローゼンタールは、ポートマンとムーアというふたりのオスカー女優と並ぶことになるジョー役について、「条件は36歳前後の韓国系アメリカ人男性。エリザベス、グレイシー、ジョーの三角関係がうまく機能するには、ジョーを演じる俳優はスクリーン上で圧倒的な存在感があり、自信を持っている必要がありました」と語るように、8週間にわたるオーディションによって、メルトンを見出した。
ヘインズ監督は「彼のジョーについての理解力には驚いたよ。ジョーがどんな人間なのかという彼の洞察は、私の理解を超えていた。最初から彼は鬱積した雰囲気を役の解釈に取り入れて私を驚かせ、この物語を完成させてくれたんだ」と、キャスティングするに至った決め手を語る。

さらに、これまでティーン向けの作品にいわゆる“アイドル俳優”としての出演が続いていたメルトンだったが、本作に出演するにあたりヘインズ監督やセラピストらと話し合いを重ね、体重を約18キロも増量して、ジョー役にアプローチした。
メルトンは、「役者という仕事の醍醐味のひとつに、役を演じるにあたり自身のリアリティを持ち込む、ということがあります。自分自身について、僕はいろいろな感情のルーツを探って学ぶことをしてきたからこそ、ジョーのことも理解するよう努めることができたのです。ときにそれは、本人すらも気付かないようなことでもあります。例えば、ジョーは抑圧を抱えているせいで猫背です。自分でも知らないうちに何かを守ろうとしているから。彼は、自分が若いときに失ったものを知らずに人生を生きています。そうした悲しみをどう見せるのかということに挑むのは、俳優としてとても実のある体験でした」と、孤独にさいなまれるジョー役について語っている。
「メイ・ディセンバー ゆれる真実」は、7月12日からTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。
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