【「帰ってきた あぶない刑事」評論】“常識”を打ち破ってきた刑事ドラマのアイコンが放ち続けるあぶない魅力
2024年5月25日 13:00
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オープニングのテーマソング「She's So Good」が流れると胸が高鳴り一気に“あぶ刑事”の世界へ没入させられる。日本の名作刑事ドラマは数多くあるが、こんなにも記憶と聴覚に刷り込まれている作品は他にないのではないか。それもそのはず、1986年にテレビドラマが放映開始されてから38年。連続ドラマ2本がそれぞれ平均視聴率16.7%、20.4%を記録し、1998年の「あぶない刑事フォーエヴァー TVスペシャル‘98」は25.7%をマーク。その人気は社会現象を巻き起こし、映画は第1作(1987年)からこれまでに7本製作され、総観客動員は700万人を突破、興収は98億円に到達した。この数字だけを見ても昭和、平成と時代を超えて幅広い世代を魅了し続けている、他の作品とは一線を画す刑事ドラマと言えるだろう。
横浜を舞台に、舘ひろし演じるダンディな刑事・タカと柴田恭兵演じるセクシーな刑事・ユージがバディを組み、洒落っ気たっぷりに事件を解決していくふたりの軽妙なやりとりと、刑事なのにサングラスにオシャレなスーツなどのファッション、さらにスタントやCGなしの豪快なカーアクションや銃撃戦、格闘シーンの数々がそれまでの刑事ドラマの常識を打ち破り、毎話テレビの前の視聴者をくぎ付けにし、多くのファンが劇場へ詰めかけた。昭和に誕生したタカとユージというキャラクターに上手く歳をとらせながら、日本の刑事ドラマの愛すべきアイコンとなったのである。
第7作「さらば あぶない刑事」(興収16.1億円)から8年ぶりの新作「帰ってきた あぶない刑事」は舘と柴田、共演の浅野温子、仲村トオル、ベンガル、長谷部香苗らシリーズおなじみのメンバーに加え、今回はタカとユージどちらかの娘かもしれないという設定のヒロインとして土屋太鳳が出演。さらに岸谷五朗、吉瀬美智子、西野七瀬、早乙女太一、杉本哲太、深水元基らが参戦し、新しいケミストリーを発揮している。
前作で刑事を定年退職し、ニュージーランドで探偵事務所を開設していたはずが、どうやら現地の警官と問題を起こして探偵の免許をはく奪され“出禁”となり、横浜にふたりが戻ってきたところからはじまる。映画第2作の「またまた」から「もっとも」「リターンズ」「フォーエヴァー」「まだまだ」、そして「さらば」と言っておきながらまた「帰ってきた」のなんて邪推は、タカとユージが横浜の埠頭に立つ姿を見た瞬間に吹き飛ぶ。ともに70代とは思えない舘と柴田のダンディさとセクシーさは円熟味が加わってさらにアップ。ハーレーに跨ってショットガンを放つタカと、全力疾走するユージの雄姿、さらにふたりの愛車だった日産レパードの登場に胸が熱くなるだろう。
しかしだからと言って、往年のファンだけが楽しめる作品にはなっていない。脚本はテレビシリーズから参加してる大川俊道と岡芳郎、プロデューサーは製作会社セントラル・アーツ出身の近藤正岳が務め、“あぶ刑事”の過去のエピソードへのオマージュやお約束を散りばめてファンの心をくすぐりつつ、「朽ちないサクラ」(6月21日公開)も控える注目株の原廣利監督と若いスタッフ、キャストが融合し、令和の新しい感覚の“あぶ刑事”に仕上がった。
それにしてもなぜこんなにも長く愛されるのか。ふたりは美女(ヒロイン)には弱いが人情に厚く、どんな窮地に陥ってもユーモアを忘れない。そして組織にいながら型にはまることを嫌い、自分たちのやり方で事件を解決してきた。自由なようでどこか退廃的、だが悪事は許さないという強固な意志と、“常識”を打ち破るような生き様が痛快であり、生死を共にしてきた同士愛的な関係性も人々を魅了し続けている理由かもしれない。舘と柴田がお互いをリスペクトしながらもっと楽しい作品にしようという思いと、浅野、仲村らとこれまで積み重ねてきたチームワークの良さもスクリーンから伝わってくる。東映の刑事ドラマ、アクション映画の系譜を受け継ぐ最後の貴重なプログラムピクチャー(映画第1作は「七福星」と同時上映)として、見せ場たっぷりのドラマとアクションが今回も展開される。
(C)2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会
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