「ミッシング」で大注目の森優作、石原さとみに殴られまくるも“ハグ”懇願 名シーン誕生秘話を明かす
2024年5月24日 15:00
石原さとみが主演を務めた映画「ミッシング」(公開中)のティーチイン付き上映会が5月23日、ユナイテッド・シネマ豊洲で行われ、監督の吉田恵輔(※「吉」は“つちよし”が正式表記)と、キャストの森優作が登壇した。
ある日突然いなくなった幼い娘。その帰りを3カ月間、懸命に待ち望みながら、自分たちの力ではどうにもできない現実との間でもがき苦しみ、事件をめぐるマスコミと世間の声に翻弄される母親・沙織里(石原)とその家族。事件により世間の注目を浴びた事により、謂れのない誹謗中傷や好奇の目に晒されながらも「いつか必ず会える」と信じ続け、出口のない迷路を彷徨い続ける。
森が演じたのは、沙織里の弟・土居圭吾役。SNSでは「弟役の森優作、今回初めて名前を知りました」「動の石原に対して静の中村倫也 、森優作が凄い」「最も最優秀助演男優賞に近い!」と注目度が急上昇中。「役者の友達とかはすごくたくさん連絡をもらいます!」とその反響の大きさを実感したようで、イベント前には連絡を取っていなかった中学の同級生から連絡があったという。
ところが「すごく熱く『ミッシング出てるね!ニュースとか見てるよ!』って超長文のメールが来ました。『頑張ってね!』と書いてあったけど、実はまだ『ミッシング』見てなかった…」とまさかのオチを披露していた。
ここからは観客からの質問コーナーに。まずあがったのは圭吾の姉・沙織里とのクライマックスの車中でのシーンについてだった。このシーンは、沙織里と圭吾が本音を打ち明ける重要な場面。「車中のシーンがとても印象的でした。殴られているのもすごく痛かったのかなと思うんですけれど、どういったところを意識していたのでしょうか?」という問いに対し、森は「めちゃくちゃ痛かったです(笑)」と冗談交じりで答えつつ、「でも、それは本気なので僕も石原さんもお互い本気だったし、台本を読んだ時からすごくエネルギーがいるシーンだなと思っていました。実際は何回もテイクを重ねました」と撮影を振り返る。
吉田監督も「20回くらい撮ったよね」と多くのテイクを要したことを明かす。
やがて森は「そこで監督に『ハグしてください!』とハグしてもらいに行ったんです」と驚きの行動を告白。吉田監督はその時の森の様子を「濡れた犬みたいで抱きしめなくちゃ!と思った」と述懐。車に戻った森は「姉ちゃんだからいいだろうと思って、石原さんにも『ハグしてください』とお願いしてハグしてもらいました。すごくエネルギーもらい、そのまま撮影を乗り切りました」と名シーン誕生の裏側を明かした。
続いて、早くも3回目の鑑賞だったという観客から「姉弟という沙織里と圭吾の関係性が一番容赦なく本音をぶつけ合っている。この作品の中で一番濃いんじゃないかと思いました。森さんはどういった感じで演じられたのでしょうか?」という質問が届いた。
森は、まず圭吾という役柄の印象について「普通の人なんだけれど、人と人との間(ま)であったりタイミングだったり、全部ちょっとずつずれている人だなと思った。そういう“生きづらさ”みたいなのは、自分の小さい時が本当にそうだったんです。全く同じではないですが、そういうのを取っ掛かりにしました」と自身の経験と重ね合わせて演じたと語る。さらに「石原さんのエネルギーに引っ張ってもらった部分すごく大きいです。すっごいピュアなエネルギーを持った方で、役者として絡ませてもらった人たちの中では、今までにないタイプの女優さんだったので、すごく刺激的な撮影だったでした」と振り返った。
吉田監督は、本作の物語は“もともとミキサー車の男の話を書こうと思っていた”と語り「鬱屈としているのは、こいつ(ミキサー車の男)はお姉ちゃんの子供を預かって、目を離したときにいなくなっちゃって…という負い目を感じているんだ、と書いていたけれど、だんだんとお姉ちゃんの方がキツイな、となってきて、主役はお前じゃないな、と」と脚本作りの過程を説明。
さらに、自身も姉がいるという吉田監督は「俺も空気の読めない子だった。で、友達があまりいない、アッパーで、一人で喋って一人で走っているような子だったので。姉ちゃんに睨まれないようにしながら生きてきたので、自分の中の実体験がちょっと入ってたかな、と思う」と前置きしつつ、「家族の再生というか、家族が辛い目に合った時に、どういう風に踏み出していくのか。血が繋がっている姉弟の再生みたいなものを描きたいな、というのが軸になってたましたね」と本作のもうひとつの“軸”についても語った。
次の質問は「沙織里の夫の豊(青木崇高)と圭吾が車の修理工場で沈黙しているシーンで、2人が黙っている“間の長さ”に監督の意地悪さを感じ、印象的でした。あの間の長さはどういう発想から生まれたのでしょうか?そして、森さんは、その気まずいシーンをどういう感情で演じられていらっしゃったのでしょうか?」というもの。
まず”間の長さ”について、吉田監督は「台本には“異常に長い間”と書いたんだけど、僕は、登場人物全員を“良い人”には描かないんです。俺もそういう性格のところがあるんですけど、いい人のフリをして相手へのストレスをぶつける、というか。一番の味方だよ、って言いながらもねちねちと過去のことを言ったりする。ここで『喋らないという選択』が、豊の意地悪さというか。良い人キャラなんだけど、人間誰しも持っているちょっとした悪意というか、彼の“小ささ”みたいなもの、人間のそういう部分があるからこそ優しくもできるということを描きたかった」と説明。
同シーンは、修理工場のスタッフに呼ばれるきっかけで豊が立ち上がる場面。ところが、芳香監督はそのきっかけとなる合図をなかなか出さず、45秒も青木と森の様子を見ていたという。「森君の横顔を見てたら、45秒の間にだんだん涙が溜まっていって。森君、黒目しか見えないのね。その姿が小動物みたいで…」と裏話も飛び出した。
質問者の中には、本作をすでに見て、「この映画を作った人なら何か生きるヒントを与えてくれるのでは」という切実な思いから、自分自身の辛い経験を吐露した質問も飛び出した。劇中さながらの”救い”をもたらすように、吉田監督と森はひとつひとつの質問に真摯に回答。目を潤ませながら深く頷く人や、ノートにメモする熱心な観客の姿も見受けられた。
やがて、森と吉田監督は、最後の挨拶でこのように語った。
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