「陰陽師0」呪術界のレジェンドたちがイベントに集結 佐藤嗣麻子監督らが裏側を語る
2024年5月13日 14:15
本作は平安時代に実在した“最強の呪術師”安倍晴明の活躍を描いた夢枕獏氏による「陰陽師」シリーズ(文藝春秋)を原作に、晴明が陰陽師になる前の知られざる学生時代を描いた完全オリジナルストーリー。山﨑が若き晴明役で主演を務め、晴明とともに事件の解決に挑む博雅役で染谷将太、物語の発端となる事件に巻き込まれる徽子女王役で奈緒が共演。そのほか安藤政信、村上虹郎、板垣李光人、國村隼、北村一輝、小林薫らが顔を揃えた。
4月19日に封切られ、興行収入10億円に迫る勢いの本作。イベントには2回以上映画を観たというリピーターも多く、会場は熱気に溢れた。佐藤監督は「何度も観ていただいている方もいらっしゃると思いますが、本当にありがとうございます」と笑顔で挨拶。岡野氏は「(佐藤)監督とは漫画の連載の当初に原作の獏さんからご紹介を受け、その時から映画を撮りたいとおっしゃっていました。今回、晴れて映画化されて本当に良かったと思います。おめでとうございます」と改めて公開を祝った。
加門氏は映画の感想について、「何回観ても自分がどこを見るかによって印象が変わる。改めて関わることができてよかったと思います」と語り、感慨深い表情。岡野氏も「欲望が渦巻く陰陽寮と、徽子女王と博雅の純愛の、二つの流れがあって。この二つが対照的な呪であり、まことに陰陽師らしい映画だと思います」と絶賛した。
さらに、岡野氏は入場者特典用に描き下したイラストについて、「監督から依頼があったときに浮かんだのが、晴明が印を結ぶ姿。さらに下書きのときに宇宙卵を持っている姿が浮かんだんです。はがきを持ってくださったみなさんも、宇宙卵と同じで、みなさんが晴明に愛でられていると思ってください」とコメントした。
実在した最強の呪術師・安倍晴明について話が及ぶと、加門氏は「晴明は史実を考えると、政治的な駆け引きの上手い人物だと表現されていますが、彼は陰陽師という立場上、人の欲望を見続けてきた人間です」と分析。佐藤監督も賛同し、「そうですね、唯一神様になった陰陽師であると加門さんがおっしゃっていて。昔の人は祟りを恐れて神様にするという監修がありました。晴明からの祟りを恐れて神様にしたのでは」と語った。一方、岡野氏は「霊剣を修理したということが史実にあって、それを考えると真面目で物知りだけど表に出されずに上の人に名前をとられてしまったのではないか」と話し、それぞれが思い浮かべる“晴明像”について語り合った。
佐藤監督は平安京を再現する苦労について、「平安中期の資料がなかったのでものすごく調べました」と述懐。そして「『日本の服装』という書籍の中で、夏の装束があるのですが、胸がはだけていて、こういう感じにしたいと、実際は袴を上にあげました。それが今回の女性の衣装です。清涼殿以外の建物は、中国を模したという史料に基づいてつくっています」と明かした。さらに呪術監修を務めた加門氏が劇中に登場する呪術の解説を行い、ファンを喜ばせた。
質問コーナーでは、観客からの「平安時代の沓(くつ)で実際にあのように走れたのでしょうか」という問いに、佐藤監督が「走れますが、長距離は難しいかもしれません。アクションの時はアクション用の沓をつくりました」と回答。さらに、「陰陽寮が暗く、孤独が象徴される中で、花が印象的でした。史実に基づくものなのか」という質問には、「今でも、祭りの時に斎王が花を頭につける慣習があります。平安以降、清少納言の時代にはこのような慣習がなくなったとも言われています」と説明した。一方、岡野氏は「安倍晴明が死後1000年経っても人を惹きつけるのはなぜだと思いますか」という質問に、「京都の晴明神社は人々から感謝されつくられた神社だと思いますし、晴明の魂の人柄だと考えています」と語った。
イベントの終わりに、岡野氏は「漫画の陰陽師を知らない人もいらっしゃると思いますが、この機会に是非読んでみてください。漫画が完結した2005年は晴明が亡くなって1000年という年でした。今年はそれから19年ということで、太陽と月の周期が一巡する時なので、そういったタイミングで映画になり、晴明と博雅が活躍するのはとても意味のあることだと思います」とコメント。
加門氏も「今日の話を聞いてもう一度映画を観たいと思っている人もいらっしゃるのでは。何回観ても面白いので、欲望のままに何度でも観てください」と語り、佐藤監督も「呪とは何かとか、どうすれば思い込みにかかるか、解けるかというのを描いた作品です。現代にも使えることなので、なんでも鵜呑みにしないとか、呪を祓ってから観てみてください」とアピールした。
「陰陽師0」は全国公開中。
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